2008年10月20日月曜日

「環境破壊による損失は年間500兆円」:研究報告

7000億ドル? それも、この金額に比べれば何でもない。[7000億ドルは、米下院が先ごろ可決した金融安定化法案で投入される予定の公的資金の額]

欧州連合(EU)のために経済学者のチームがまとめた中間報告によると、環境破壊が世界に与える損失は年間2兆〜5兆ドルにも上るという。

この試算は、森林などの自然のシステムが人間に提供する各種の「サービス」を評価する目的で行なわれたものだ。サービスとは、二酸化炭素の吸収や窒素の固定化などを指す。

「さまざまな試算によると、ウォール街は金融市場でこれまでに1兆〜1兆5000万ドルの損失を出している。一方、われわれは自然の資本を毎年2兆〜5兆ドル分も失っている。それが現実だ」。今回の研究を指揮するドイツ銀行の経済学者、Pavan Sukhdev氏は10日(現地時間)、BBCに対して語った。

『生態系と生物多様性の経済学』と題された今回の報告は、『スターン報告』(スターン・レビュー)と同様の手法をとっている。

[2006年にイギリス政府の依頼にこたえて発表された]スターン報告は、英国の経済学者Nicholas Stern氏が発表した影響力のある報告書。気候変動に何の対策も講じなかった場合の損失額は、二酸化炭素の排出削減を厳格に推進した場合の費用を上回ると主張している。

1997年に『Nature』誌で発表された、同じく影響力のある別の論文も、世界の生態系サービスの価値を[1年あたり]16兆〜54兆ドルと見積もっている[生態系サービスとは、生態系に由来し、人類の利益になる機能(サービス)のこと。なお、この論文では、人為的な経済活動による世界総生産は年間約18兆ドルと見積っている]。

ただしこの種の計算は、概念と詳細の両面から一部の経済学者の批判を浴びている。

きれいな空気の価値を数字にするのは容易ではない。普通の商品と異なり、空気は売買できないため、「適正な市場価格」を定めることができないのだ。

「これらは主に、市場も価格もない公共財だ」と、Sukhdev氏らの報告を紹介する[欧州委員会(EC)の]ウェブサイトにも書かれている。

それでも、自然の価値は数値化できるという発想は、科学界で支持を増やしているようだ。『米国科学アカデミー紀要』(PNAS)は今年に入り、生態系のサービスを評価するというコンセプトに基づいた開発戦略の実行をテーマに、9本の論文からなる特集を組んでいる。

「40年で天然海産物が無くなる」:深刻な魚の激減

世界銀行と国連食糧農業機関の共同報告書によると、持続不可能な漁法が原因で、世界の漁業における経済損失は年間500億ドルにのぼり、この30年間で約2兆ドルが失われたという。

現在進行中の経済危機や森林破壊による損失と比べると、これは大した数字とは思えないかもしれない。なにしろ、ウォール街は数週間で1兆5000億ドルを失い、森林伐採による損失は毎年2〜5兆ドル(日本語版記事)にのぼるのだ。

だが、生産性の低下という点で検討すると、こうした漁業の損失は、将来の問題を警告する予兆となる。漁船の数は増え、設備も改良されているにもかかわらず、漁獲高は30年前と変わらない。

理由は、海魚の個体数が激減しているからだ。40年以内に天然の海産食物は世界からなくなると予測する研究者もいる。

現在、魚肉生産の50%を占めている養殖物の魚は今後も存続するだろうが、世界で約2億人が従事し、800億ドル規模である漁業は、北大西洋産のタラが激減(日本語版記事)しているのと同様に、斜陽化していくと見られる。

ブリティッシュ・コロンビア大学水産学部の学部長であるDaniel Pauly氏は9月、『Victoria Times Colonist』による取材に答えて、[魚の不足によって、]かつて不要物と考えられていたような魚が消費されている現状についてに語った際、こう問いかけた。「代用品を使い果たして別の代用品に頼り、さらに別の代用品を使うしかなくなる。この繰り返しはいつ終わるのだろう?」

Pauly氏は、自らこの質問に答えている。「それが終わるのは、資源がすべてなくなったときだ」

[過去記事「「深海トロール漁業は生態系への脅威」保護団体が運動開始」では、近海魚の減少にともない、規制のない公海に出て操業するトロール船が増加し、生態系破壊が進んでいる現状を紹介している。

過去記事「世界的に始まった食糧争奪戦」では、世界の農業が、持続不可能で政治的に危険な時代に突入したという見方を紹介している]

2008年10月12日日曜日

ロシア、北極圏から赤道付近へ弾道ミサイル発射実験

 [ムルマンスク(ロシア) 11日 ロイター] ロシアが11日、太平洋の赤道付近の海域に向けて、初めて戦略ミサイルの発射実験を行った。

 空母アドミラル・クズネツォフから同実験を視察したメドベージェフ大統領は、世界的な金融不安によって生じた問題がロシア軍の再生計画に影響を与えることはないとコメント。

 海軍のスポークスマンは、同国の最新ミサイル「シネワ」は北極圏のバレンツ海の原子力潜水艦から発射され、太平洋の赤道付近の海域に着弾したと発表した。

 ロシアのテレビ局は、同ミサイルがバレンツ海の海中から発射され、太平洋まで1万1547キロの距離を移動する様子を伝えた。

アイスランド、最大手銀行も国有化

【10月10日 AFP】アイスランド政府は9日、国内銀行最大手のカウプシング(Kaupthing)銀行を国有化したと発表した。

 レイキャビク(Reykjavik)に本社のあるカウプシング銀行の親会社は8日に、業務支援のため、アイスランド中央銀行から5億ユーロ(約700億円)の融資を受けたと発表したばかりだった。

 アイスランドでは8日にも国内銀行3位のグリトニル(Glitnir)が国有化され、同2位のランズバンキ(Landsbanki)も政府の管理下に置かれている。(c)AFP

米国、北朝鮮のテロ支援国家指定を解除

【10月12日 AFP】(一部更新)米国は11日、北朝鮮と核放棄の検証計画について合意したことを受け、北朝鮮のテロ支援国家指定を解除した。国務省のショーン・マコーミック(Sean McCormack)報道官が発表した。

 マコーミック報道官は「合意内容には米国が検証について求めていた全ての要素が入っている」と述べた。

 この発表に先立ち、米国の6か国協議主席代表を務めるクリストファー・ヒル(Christopher Hill)国務次官補はAFPに対し、同氏が今月1-3日に平壌(Pyongyang)を訪問した際に検証計画について基本的な合意に達したことを明らかにしていた。10日にはコンドリーザ・ライス(Condoleezza Rice)米国務長官が6か国協議に参加する各国と電話で最終的な調整を行った。

 ヒル国務次官補が率いる交渉チームは、検証計画は「プルトニウムを利用した計画およびウラン濃縮と拡散活動の全ての活動」に適用することで北朝鮮側と合意したという。また、非核国を含む6か国協議参加国の専門家が検証活動に参加することを認め、国際原子力機関((International Atomic Energy Agency、IAEA)が検証活動に関与することでも合意した。ある米政府高官によれば、正式な検証手順は「近い将来に」発表されるという。

 この合意では「全ての申告された施設に専門家が立ち入ることができる」とされている。未申告施設については「双方の合意があれば」立ち入りを認めるとしている。

 北朝鮮のテロ支援国家指定解除の発表後、米政府のゴードン・ジョンドロー(Gordon Johndroe)報道官は「北朝鮮は日本との合意事項を速やかに実行すべきだ」と述べ、ジョージ・W・ブッシュ(George W. Bush)米大統領が拉致問題での日本の立場を引き続き強く支持していることを明らかにした。

■大韓航空機爆破事件で指定

 1987年11月29日に北朝鮮の工作員2人がバグダッド(Baghdad)発ソウル(Seoul)行きの大韓航空(Korean Air)機に仕掛けた爆発物がアンダマン海(Andaman Sea)上空で爆発し、乗客乗員115人全員が死亡したことを受け、米国は1988年1月20日に北朝鮮をテロ支援国家に指定した。

 米国務省はこの事件の後、北朝鮮が関与したテロ事件は知られていないとしている。(c)AFP

2008年10月9日木曜日

抗欝剤を飲みながら闘う米軍兵士たち:身体強化薬も普及

「セルフメディケーション[自分で健康を管理し、軽い身体の不調を治そうとすること]は米国文化に浸透している」と指摘するのは、米国防総省国防研究技術本部(DDR&E)の委託による「Human Performance」(人間のパフォーマンス)という研究報告書だ。

とりわけ、その傾向が強いのは軍隊だ。「特殊部隊の兵士の90%、および支援部隊兵士の76%」が、活力増強剤、プロテインパウダー、クレアチン[アミノ酸の一種]、その他の栄養補助剤を使用しているという。

だが軍隊は、化学薬品で身体を強化する以上のことを行なっている。『Time』誌の特集記事「America's Medicated Army」(薬剤を服用する米陸軍の兵士たち)は、数年に及ぶ海外での警備活動を経て、「イラクに派遣されている戦闘部隊兵士の12%と、アフガニスタンにおける同様の兵士の17%が、抗欝剤あるいは睡眠薬を服用して体調を維持している」と報じている。

見方によっては、薬物の処方は取り立てて問題になるようなものではなさそうだ。歴史が示しているとおり、少なくともジョージ・ワシントンがバレーフォージ[ペンシルベニア州東部。米独立戦争中の冬に、大陸軍が野営した場所]でラム酒の配給を命じて以来、軍司令官たちは自分の部隊に、苦痛を和らげる薬物を与えてきた。

第二次世界大戦中にはナチスが、フランスとポーランド侵攻の際に、『Pervitin』として知られるアンフェタミン[覚醒剤の一種]の助けを借りて電撃戦をしかけた。米軍も、ベトナム戦争中にアンフェタミンを使用している。[2003年の過去記事「覚醒剤の助けで戦闘に臨む米軍兵士たち」では、現在の米軍でもアンフェタミンの服用が行なわれていることを紹介している]

だが、抗欝剤の使用はまだ新しい。

(ワイオミング州陸軍に属する医師Joseph Horam大佐によると、)「湾岸戦争のときにはこうした抗欝剤はなかったので、『3度の温かい食事と寝床』という基本的な考え方のもと」、ストレス状態にある部隊には若干の睡眠と休息を与えて、体調が回復するかどうかを確認していた。

「すぐに症状が改善しない兵士は後方に送り、戦域から離す必要があった」という。

だが、2006年のバグダッドにおける最近の任務においてHoram大佐は、イラク人捕虜の見張りにあたっている兵士を治療した。「その兵士はかなり多くの捕虜と接する環境において錯乱状態にあった。捕虜との間に感情的対立を経験していたし、武器を所持する状態だった」と、Horam大佐は述べている。

「だが、その兵士は高度な訓練を受けたチームに属していたので、われわれは彼を失いたくなかった。そこでわれわれは、この兵士にSSRI(『Prozac』や『Zoloft』などの選択的セロトニン再取り込み阻害薬[抗鬱薬])を投与した。1週間で彼は生まれ変わったので、任務に完全復帰させた」

Horam大佐の表現はおそらく、誇張か、偽薬効果のひとつの例だろう。この種の薬品は本当に効き始めるのに通常もっと時間がかかるものだ。

また戦場では、昇進が妨げられることを恐れて、精神的な問題を医師に相談すること自体が少ない、と同記事は報告している。

2008年10月6日月曜日

海賊事件で浮かび上がる武器輸出大国、ウクライナ

【10月3日 AFP】ソマリア沖で戦車などロシア製兵器を積載したウクライナの貨物船が海賊に乗っ取られた事件は、ウクライナが世界で10位以内に入る武器輸出大国である事実を浮き彫りにした。

 専門家の間では、数々の不正武器輸出疑惑を経て、ウクライナの武器輸出管理は大幅に改善されたとの見方が高い。しかし、ウクライナが依然として世界の最貧国家や武装勢力に武器を供給する可能性は変わらず、親欧米的な現政権の汚点となっている。

 ストックホルム国際平和研究所(Stockholm International Peace Research Institute、SIPRI)のPaul Holtom研究員は、ウクライナの武器輸出管理は近年、目覚ましい向上を遂げたとしながらも、武器が反政府武装勢力の手に渡らないとの確信を世界に与える必要があると説く。

 海賊に乗っ取られたウクライナの貨物船「MV Faina」号について、米海軍は29日、ケニアではなく実際はスーダンに向かっていたと主張。ウクライナとケニアの両政府はこれを否定したが、貨物船を乗っ取った海賊はスーダンに向かっていると語ったことから、ウクライナの武器輸出疑惑が浮上した。

 SIPRIによると、ウクライナは2003年から2007年の5年間、武器輸出で常に世界のトップ10に入っていた。

 ウクライナ・キエフ(Kiev)にあるシンクタンク「Centre for Army Conversion and Disarmament Studies」の軍事アナリストMykhailo Samus氏によると、武器の輸出先は約50%が旧ソ連を構成していた独立国家共同体(Commonwealth of Independent States、CIS)向けで、30%が東南アジア・アフリカ、6%が中東向けだ。ウクライナは2007年、20か国に12億ドル(約1260億円)の武器を輸出したが、これは前年の輸出高10億ドル(約1050億円)よりも増加している。輸出の内訳は、戦車、軍用機、迫撃砲、ミサイルなどで、武器関連サービスも含まれているという。

 一方で、ウクライナは1990年代、ブルキナファソ経由でリベリアへの武器輸出など、問題のある国家や政権に武器を輸出していた疑惑が持たれている。2002年には米国も、当時のサダム・フセイン(Saddam Hussein)政権下のイラクに対する経済制裁に違反し、ウクライナがイラクに軍事レーダーシステムを輸出していると非難している。

 しかし、これを機に欧米が積極的に関与し、その結果、現在のウクライナの武器輸出管理は、世界で最も優れたもののひとつになったとSamus氏は言う。

 また、アナリストのOlexi Melnik氏は、今回の疑惑は、ライバル国が武器輸出市場でのウクライナの「風評被害」を狙って、積荷の武器の行き先について偽の情報を流した可能性もあると指摘する。

 それでも、依然としてウクライナに疑惑を抱く人も多い。SIPRIはウクライナに対し、冷戦後の世界で築かれた無責任な武器輸出国という負のイメージを払拭するため、更なる努力を求めている。(c)AFP/Anya Tsukanova