2009年1月13日火曜日

地球の磁場が気候変動に大きく関与か デンマーク研究

【1月13日 AFP】地球の磁場が気候変動に大きな影響を与えているという説を展開する論文が12日、デンマークの科学専門ポータルサイト「Videnskab.dk」などで発表された。

 地球温暖化の主因は、人間の活動によって排出される二酸化炭素(CO2)だとする一般的な見解を覆すこの説は、論議を呼びそうだ。

 研究を発表したのは、デンマークのオーフス大学(Aarhus University)の地球物理学者、Mads Faurschou Knudsen氏と、デンマーク・グリーンランド地質調査所(Geological Survey of Denmark and GreenlandGEUS)の地球物理学者、Peter Riisager氏で、中国とオマーンで発見された石筍と鍾乳石から得られたデータに基づき、5000年前の先史時代の磁場を再現し、現在の磁場と比較した。

 その結果、磁場の強さと熱帯地方の降水量の間に、強い相関関係があることが明らかになった。

 10年前、デンマークの天体物理学者ヘンリク・スベンスマルク(Henrik Svensmark)氏が、地球の気候は大気を通過して降り注ぐ宇宙線(GCR)の影響を大きく受けているという説を発表し物議を醸したが、今回の発見はこの説を支持する根拠となる。

 スベンスマルク氏は、地表面に到達するGCRの粒子量を、地磁気が調節する役目を果たしていると考え、磁場と気候が相関しているという説を提唱した。

 今回、Knudsen氏は、地球の気候とは無関係に発生している磁場の変化が、降水量の変化と関連していれば、その原因はスベンスマルク氏が説明したメカニズムと同様に「磁場が宇宙線の到達を妨げている」ため以外には考えられないとしている。

 論文を発表したKnudsen氏とRiisager氏は、気候変動にCO2が大きく関与していることは認めている。「しかし、気候は想像を絶するほど複 雑であり、どの要素が関与し、各要素が一定の状況下でどの程度関わっているかについて、概要が完全に理解されているとは考えられない」(Riisager 氏)

2009年1月6日火曜日

太平洋の波が「巨大化」:年に7cmずつ増大、海面上昇より悪影響か

サンフランシスコ発――北米の太平洋岸北西部では、[暴風時に記録される]大波の高さが年間に最大7センチメートルずつ増大しており、沿岸地域への被害が懸念されている。何より奇妙なのは、専門家にも理由がよく分かっていない点だ。

オレゴン州立大学の研究者らによると、波浪の巨大化が同地域に被害をもたらす危険性は、今後数十年の間、地球温暖化による海面上昇の影響を上回るものになるという。

[オレゴン州立大学准教授(地球科学)の]Peter Ruggiero氏は次のように話す。「10年単位でみると、波高の増大は(中略)沿岸の浸食と洪水どちらの被害にも有意に影響し、目下のところ海面上昇の影響を上回っている。何か劇的な変化がない限り、おそらく今後10年、20年の間その状態が続くだろう」

地球の海は深刻な混乱状態にある。世界各地で漁場が崩壊(日本語版記事)しているほか、研究者たちは世界的な――とくに両極付近の――気温上昇が極地の氷冠を溶かし、海面上昇を引き起こすと予測している。しかし、大波の高さが一部地域で増大しているという証拠はこれまであまり注目されてこなかった。

「波高と海面高の比較を目にしたのはこれが初めてだ」と語るのは、ニューヨーク州立大学ストーニーブルック校の大気科学者Sultan Hameed氏。同氏は米国地球物理学連合(AGU)の年次会合で、Ruggiero氏が発表を行なったセッションを企画した。「あれは素晴らしい分析だった」

現在のデータをみる限り、波高は海面高と違い、世界中で一様に増大しているわけではない。しかし多くの地域では、そもそも本格的な分析を行なうための適切なデータが不足している。

オレゴン州沖の波高の増大が最初に検知されたのはわずか数年前のことだ。見つけたのはオレゴン州立大学の別の研究者で、彼らの場合、太平洋沿岸沖に 長期間浮かぶブイから、他にはないデータを得られるという利点があった。このブイは、30年以上にわたって波高のデータを収集している。

「これは質の高いデータだ。この種の分析を行なうのに十分なデータが得られるようになったのは、つい最近のことだ」とRuggiero氏は言う。

データでは明らかに波高が増大しているのだが、Ruggiero氏らはその理由を解明できずにいる。[リリースによると、暴風時に記録される大波の高さが年間に最大7センチメートルずつ増大しているほか、平均的な波の高さも30年間に40センチメートル以上増大しているという]

「なぜ波高が増大しているのか、正確な理由が分かっているとはいえない。地球温暖化や嵐の進路変化に関連付ける人もいれば、中国から運ばれてくる黄砂に関連付ける人もいる。これという解答はまだ見つかっていない」とRuggiero氏は述べる。

地球の気候変動が関連しているとすれば、海面上昇が波の巨大化とあいまって、波高の影響を最も受けると思われる中緯度の沿岸地域に大惨事を引き起こす可能性もある。北米の北西岸地域でこの30年間、波のパターンを変化させている要因の解明が急がれているのはそのためだ。

Hameed氏は、地球温暖化によって風力が強まっていることが波高の変化と関係しているならば、この研究は世界的な影響力を持つだろうと指摘した。特に、詳細な風のデータが入手できていない場所に関してだ。

「風については、より広い範囲で研究されている。風力や風向と波の高さとの間に相関関係が発見できれば、今回の研究を他の地域にも応用できるだろう」

[過去記事「もはや伝説ではない、船舶を襲う30メートルの高波」では、これまでは非常に稀だと考えられていた高波が、実際にはかなり頻繁に発生しており、船の転覆や石油掘削装置の破壊の原因となる可能性があるという調査を紹介している]