2009年8月16日日曜日

米陸軍、世界最大規模の太陽熱発電所を建設開始


Photo:米国空軍

米国陸軍が、カリフォルニア州の砂漠に出力500メガワットの太陽熱発電所の建設をまもなく開始する。完成すると、世界最大規模の再生可能エネルギー発電所の1つとなる。

これはある意味で皮肉でもある。米軍はこれまで環境問題や気候の変化にそれほど注意を払っていなかったからだ。このプロジェクトの計画を指揮するKevin Geiss博士は、結局のところ、再生可能エネルギーの方が「安全」であることがわかったと述べている。

現時点では、同駐屯地のエネルギーのほとんどは、多くの軍事基地と同様にディーゼル発電機から得ているため、長くて無防備な配管が燃料源まで続いているのだ。

米陸軍は7月31日(米国時間)、軍の主要訓練施設の1つであるカリフォルニア州アーウィン駐屯地で、この巨大発電所を建設する民間の開発業者、Clark Enterprises社とスペインのAcciona社を紹介した。

アーウィン駐屯地は場所として申し分ない。基地の面積は1万4000エーカー[約5600万平方メートル]あり、そのほとんどが更地だ。このような 敷地があるということは、米軍が再生可能エネルギーの開発を推進できることを意味する、とGeiss博士は述べる。米軍は米国内の至るところで、一定した エネルギー需要がある基地を持ち、その隣に広大な土地を所有している。

アーウィン駐屯地にはさらに有利な点がある。すぐ隣に大容量の送電線があるため、将来は、余ったエネルギーの大部分を南カリフォルニアに売却できるのだ。アーウィン駐屯地ではピーク時でも35メガワットしか必要としないため、465メガワット近くが余ることになる。

一方で、軍ではアーウィン駐屯地を必要に応じて送電網から隔離することも望んでいるとGeiss博士は述べている。開発業者は、非常事態に備えて基地のエネルギーを完全に独立させる機構を構築する必要がある。

アーウィン駐屯地の太陽熱発電所の建設には少なくとも総額15億ドルが必要で、2022年までには発電準備が整うことになっている。

Geiss博士は今回の計画について、これまでの軍のあり方からの大きな転換になると述べる。「この100年間を見ただけでも、軍の作戦が燃料不足 によって妨げられた明確な例がいくつもある。第二次世界大戦において、米陸軍のパットン将軍によるドイツ軍攻撃が停滞したのは、アイゼンハワー連合軍総司 令官が燃料物資を、モントゴメリー将軍が指揮する第21軍集団に振り向けたからだ」

2009年8月15日土曜日

「世界の石油産出量、2020年にピークに」--IEAチーフ・エコノミストが警鐘

世界の石油生産量が頂点に達し、そして緩やかな、かつ避けられない減少に転じる時点を「ピークオイル」と呼ぶが、これがいつ来るか/来たかについて は専門家の間でも意見が分かれている。「すでに達した可能性がある」とするアナリストもいれば、「何十年も先のこと」という者もおり、世界の主要な国々の エネルギー関連省庁の多くは後者の意見に同調している。

ところが、国際エネルギー機関(International Energy Agency:IEA)のチーフ・エコノミストを務めるフェイス・ビロル(Fatih Birol)氏によると、世界の石油生産量は2020年にピークを迎えるという。これは多くの政府が予想している時期より約10年も早い。

英国のインデペンデント紙(The Independent)は、8月3日(現地時間)に掲載したビロル氏とのインタビュー記事のなかで、この予想を明らかにした。また世界にある800の主 要な油田ではすでに産出量が年間6.7%減少していることを示すデータも示されたが、この減少率は2007年時点でのIEAの推定値3.7%よりも大きな ものとなっている。

ピークオイルが来るとの見通しは、現代の世界経済にとって重大な事柄である。なぜならほとんどすべての交通手段には石油が必要であり、またその他の社会のエネルギー需要の大きな部分も、石油関連製品でまかなわれているからだ。

むろん、石油産出量がピークに達したからといって、その時点で石油が枯渇するわけではない。だが、ピークオイルに達すれば、増大する需要をまかなうために産出量を増やすことができず、結果的に石油価格の劇的な上昇につながる可能性がある。

ビロル氏によると、この石油価格の上昇により世界経済の成長が停滞するか、もしくはマイナス成長に転じる可能性があるという。こうした事態を回避するには「サウジアラビア4つ分」に相当する新たな石油供給源を見つけなくてはならないが、その見込みはほとんどないためだ。

「今後数年のうちに経済が回復すると考えている人も多いが、この回復はゆっくりとしたしかも脆いものになるだろう。さらに、石油価格の上昇によってこの経済回復が失速するリスクもある」と同氏は述べている。

2020年に石油産出量がピークを迎えるという予想を含めて、ビロル氏がこうした事実を明らかにしてメディアの注目を集めるのは、今回が初めてでは ない。同氏は昨年12月に行った英ガーディアン紙(Guardian)とのインタビューのなかで同様の情報を明らかにしていた。

このガーディアンとのインタビューのなかで、ビロル氏はOPEC(石油輸出国機構)加盟国以外の国々の石油産出量が、今後3〜4年のうちに頭打ちに なり、さらに減少に転じることで、中東各国をはじめとするOPEC加盟国の、世界の石油供給をコントロールする力が増大することになる、との見方を示して いた。

ビロル氏のほかにも、将来における世界の石油産出量減少を懸念する声はある。ザ・ネーション(The Nation)誌6月号に掲載された記事によると、米エネルギー省のエネルギー情報監督局(Energy Information Administration)では、最新の報告のなかでこの問題に触れ、2030年時点の世界の石油産出量の予想値を引き下げたという。

同局の最新のレポート("EIA - 2009 International Energy Outlook")では、2030年の全世界の石油産出量(予想値)は9310万バレル/日とされているが、これは2007年版で出された予想値1億 720万バレル/日よりも少ない。なお、2006年における世界の石油産出量は8150万バレル/日だった。

石油産出量の減少を埋め合わせるには、従来は採掘があまり行われていなかったエリア--カナダやベネズエラにあるオイルサンド(油砂)層や、米国西 部にある石油を含んだ頁岩(けつがん)層、さらにはブラジル沿岸で開発が始まろうとしている「超深海」("ultra-deep")油田などから原油を堀 り出さなければならない。

バイオ燃料も石油の不足緩和に役立ちはするだろうが、しかしいまのところ世界の燃料供給量のなかでバイオ燃料が占める割合はほんの少しに過ぎない。 「次世代のバイオ燃料」(草や、農産物や木材から出る廃棄物、ゴミなど、食料以外から取れるもの)は、米国ではいまのところ期待されたほど増加してはいな い。

ピークオイルの予測に対して批判的な人々もおり、地球上にはもっと多くの石油が残っているというより楽観的な見方や、技術の改善によって既存の油田からより多くの石油を採れるようになったり新しい油田を発見できる余地があるなどの見方をしている。

中国、2050年から温室ガス排出削減へ 英紙FT

【8月15日 AFP】英紙フィナンシャル・タイムズ(Financial Times)は15日、中国政府高官が、同国が2050年までに温室効果ガスの排出量削減を始める方針を示したと伝えた。温室効果ガスの削減で、中国が具体的な日程を出したのは初めて。

 フィナンシャル・タイムズによると、中国国家発展改革委員会(National Development and Reform Commission)、気候変動担当局のSu Wei局長が「中国の排出量は2050年以降、増加することはない」と語った。

 1人あたりの排出量は少ない発展途上国の中国は、国連気候変動枠組み条約(UN Framework Convention on Climate ChangeUNFCCC)のもとで温室効果ガス排出量の削減を義務づけられていない。また、中国政府も、将来の排出量削減を約束することに対してはこれまで消極的だった。(c)AFP

ベトナム、高速鉄道網に日本の新幹線方式を採用へ 報道

【8月13日 AFP】ベトナムの国境横断鉄道路線の建設に日本の新幹線技術が採用される見通しであることを、国営ベトナム鉄道(Vietnam Railways)のグエン・フー・バン(Nguyen Huu Bang)会長兼最高経営責任者(CEO)が13日、日本経済新聞(Nikkei)に語った。

 バン社長は日経新聞に対し、ベトナム政府がすでに新幹線方式の採用について基本部分で承認しており、財政面の解決と首相の正式承認を待っている段階だと述べた。

 日経新聞によると、この鉄道計画の総工費は560億ドル(約5兆4000億円)規模。資金調達面では依然として不確実な部分が多く、ベトナム政府は、日本政府からの援助や、世界銀行(World Bank)やアジア開発銀行(Asian Development BankADB)からの資金調達を目指している。

 高速鉄道路線は全長1560キロメートルを計画している。植民地時代につくられた既存の鉄道路線に代え、首都ハノイ(Hanoi)と南部の主要商業都市ホーチミン(Ho Chi Minh)を結ぶものになる。現在は、ハノイ・ホーチミン間は3日間もかかるという。

 ベトナム政府は2020年までに高速鉄道を開業することを目指しており、最も収益が高いとみられる沿岸都市のダナン(Danang)とフエ(Hue)を結ぶ約90キロメートルの路線を含む3区間の建設から着手する計画だという。

 日経新聞によると、日本政府と日本の鉄道会社は、国内市場が飽和状態であるため新幹線技術を海外へ輸出したい考えで、ベトナムの潜在力に対して強い期待 を抱いているという。しかしながら、コスト見積もりは依然として不十分だとみられており、日本側はベトナムに対して高速鉄道の運行開始を2036年以降に 延期するよう提案したとみられている。(c)AFP

IMF、加盟国に27兆円分の外貨準備支援を決定

【8月14日 AFP】国際通貨基金(International Monetary FundIMF)は13日、世界金融危機により経済的打撃を受けた加盟国の外貨準備を支援するため、2500億ドル(約24兆円)相当の特別引き出し権(SDR)の配分を決定したと発表した。

 世界の金融システムに流動性を与えるため、加盟186か国にSDRを分配することを、IMFの理事会が承認したという。

 4月に開催された主要20か国・地域(G20)首脳会合(金融サミット)では、1兆1000億ドル(約104兆円)相当の金融支援策で合意していたが、今回の2500億ドルの配分はその一部。(c)AFP/Veronica Smith

ロシア、アブハジアに全面的支援を約束

ロシアのドミトリー・メドベージェフ(Dmitry Medvedev)大統領とウラジーミル・プーチン(Vladimir Putin)首相は12日、同国が独立を承認したグルジアのアブハジア自治共和国を訪問し、グルジアと紛争が発生した場合には、ロシア軍が全面的に支援す ることを約束した。両氏が同共和国を訪問するのは、独立承認後初めて。

2009年8月5日水曜日

ロシアの退役空母、譲渡予定のインドでとんでもない厄介者に

【8月3日 AFP】5年前、ロシアがインドに退役した空母を譲渡した際、インド政府は大喜びだった。後にこれが金食い虫の厄介者になるとも知らずに――。

 長年インドへの兵器供給国であるロシアは、インド政府に対し2004年、改装費をもってロシアの造船所に9億7400万ドル(約920億円)を支払えば、退役空母「アドミラル・ゴルシコフ(Admiral Gorshkov、4万4570トン)」を譲渡すると伝えていた。同空母は27年前に就航し、旧ソ連崩壊後に退役した。

 その後、アドミラル・ゴルシコフの改修費は大幅にかさみ、2007年、ロシアはコストの増大を理由に、8億5000万ドル(約805億円)を追加請求した。さらに6か月前にもロシアは再度、追加費用を要求した。その額はなんと29億ドル(約2750億円)にも上った。

 またロシア政府は、同空母の引き渡しを当初計画から4年遅れの2012年まで延期した。しかし、2011年にはインド海軍唯一の空母「ビラート(Viraat)」は退役してしまう。

 インドの会計検査当局はこの問題について、もっと少ない費用で新たな空母が購入できたはずだと批判している。ロシアによる追加要求はインド国内で大きな反発を生み、インドのA・K・アントニー(A.K. Antony)国防相は今週、ロシアと再交渉中であることを議会で保証させられた。

■前にも後にも動けないインド

 インド政府はすでに、ロシアの国営造船所セブマッシュ(Sevmash)に数百万ドルを前払いしている。インド軍の退役司令官は「インド政府にとっては非常に頭が痛い問題だが、ここで手を引いてしまうと、1銭も戻ってこない」と語る。

 一方、今回の契約を担当するロシア国営の武器輸出会社Rosoboronexportは、インドをだましているという意見を否定している。同社の広報担当者はインドPTI通信に対し、「空母改装のひとつひとつのプロセスは、インド海軍の技術者チームが監視しているが、彼らは何の異議も申し立てなかった」と反論した。

 さらに、改装費が上がってる要因は、インド側が当初の契約になかった装備を要求しているからだと、造船所は指摘している。

 アントニー国防相は、インド政府は自前の空母建造を目指しているものの、現在のところはアドミラル・ゴルシコフと同規模の空母を提供してくれる国がない ため、ロシアに頼るしかないとしている。ロシアはインドの軍用ハードウエアの70%を担っており、現在も総額9億ドルの軍事物資に関わる商談を進めてい る。

 この契約にも関わっているインド海軍のラジャ・メノン(Raja Menon) 退役元帥は、ロシアはインドから最大限の支払いを引き出そうとしていると指摘する。メノン氏は、ロシア政府は伝統的に強引な武器取引を行ってきたと述べ、 「ほかの契約でも費用をつり上げてきた。いつも、またうまくいくと思っている」と強調した。(c)AFP/Pratap Chakravarty

2009年8月1日土曜日

男性は遠くを見るのが得意、狩猟時代の名残か

【8月1日 AFP】男性の目は、大昔に動物を追って狩りをしていた名残で遠くのものを見るのが得意で、女性の目は近くのものを見るのが得意――。英国の臨床心理学専門誌「ブリティッシュ・ジャーナル・オブ・サイコロジー(British Journal of Psychology)」オンライン版に30日、このような研究結果が発表された。

 男女の脳は数千年の間に別々に進化し、近いものと遠いものに関する視覚情報の脳内プロセスが男女で異なるというのが通説だが、英イーリング・ハマースミス・アンド・ウェストロンドンカレッジ(Ealing, Hammersmith and West London College)の心理学者、ヘレン・スタンシー(Helen Stancey)氏は、これを実験で確認することにした。

 男女48人に対し、紙面に引かれた線をさまざまな距離から見せ、レーザー・ポインターでそれぞれの線の中間点を指し示してもらったところ、1メートル離 した場合の判断は男性の方が正確であり、逆に50センチという腕を延ばして届く近さでは女性の方が正確であることがわかった。

 スタンシー氏は、結果について、「狩猟採集時代においては、女性は身近な場所での仕事が求められ、一方で(大多数が男性の)ハンターたちにとっては、獲 物は遠くの場所にあった。視覚処理におけるこうした性差は、進化の過程における名残だろう」と分析している。(c)AFP

海洋生物も海水の動きに影響を与える、米大研究

【8月1日 AFP】海洋の水の混合において大小の海洋生物が密かに重要な役割を果たしているかもしれない――。このような研究結果が29日発行の英科学誌「ネイチャー(Nature)」に発表された。

 いわゆる「海洋混合」は、赤道と南北両極間で暖流、寒流を作り出すとともに、深層部の冷たく栄養豊富な海水と表層部の太陽で温められた海水をかき混ぜている。

 海洋混合は海洋生物多様性にとって非常に重要な役割を果たしている。さらに、地球の気候を維持する上でも欠かせないとの見方が出てきている。

 魚類などの海洋生物の移動が海水の移動に大きく寄与しているとの概念は1950年代半ば、進化論などで知られるチャールズ・ダーウィン(Charles Darwin)の孫で同名の科学者チャールズ・ダーウィン氏によって提唱された。

 しかしこの概念は、60年代に行われた、海洋生物が作り出す海流と海全体の海流を比較する実験を元に、「疑わしい」としてはねつけられてしまう。実験では、微少なプランクトンや魚類が移動することで作り出す渦がすぐに消えてしまうことが示されたのだ。

 これを根拠に、海洋混合において生物は重要でなく、注目すべき要因は風と潮の満ち引きだけだとされた。

■クラゲとともに深層の海水が上昇

 しかし、カリフォルニア工科大学(California Institute of Technology)のカカニ・カティヤ(Kakani Katija)氏らの研究チームの研究により、「20世紀のダーウィン」の仮説は再度日の目を見ることになるかもしれない。

 チームは、太平洋に浮かぶ島国パラオの塩湖で実験を行った。クラゲの群れの周辺に染料をまき、クラゲと周辺の海水の動きを撮影すると、上昇するクラゲとともに大量の冷たい海水が表層に移動することが示された。

 かき混ぜられる海水量は、海洋生物の大きさや形のほか、群れの大きさ、移動パターンなどによって決まるという。

 チームは60年代の実験について、垂直方向の海水の入れ替えよりむしろ、海洋生物が作り出す波や渦に着目していたとし、着眼点が間違っていたと指摘している。

 海洋混合は炭素循環の1つの要素だ。

 プランクトンは海洋表層部で、光合成により二酸化炭素(CO2)を大量に消費する。プランクトンが死ぬと、CO2を大量に含んだ死がいがゆっくりと海底に沈み、数千年にわたりCO2を効果的に貯蔵する。海流によって表層部に運び上げられることもある。

 一方、フロリダ州立大学(Florida State University)のウィリアム・デュアー(William Dewar)氏は「ネイチャー」に寄せた解説で、「細部にわたる検討に耐えて、生物による海洋混合という考え方が確立すれば、気象科学のパラダイムシフトが起きるだろう」とし、今回の研究を「通説に挑戦した」と評価している。(c)AFP