2012年7月11日水曜日

賄賂、ポルノ、スパム……アプリ開発者を誘惑する“抜け道”の数々


不正の疑いのある手口には様々なものが存在する。ベテランのアプリ開発者なら、オフレコという条件付きで、トラフィックを急増させる強力な手口を喜んで列挙するだろう。以下に紹介するのは、そうした手口の一部である。

スマートフォン向けなどのアプリ市場に大金が流れこみ、この分野で活動する企業各社の株価も上昇し続けているが、そんななかで、一部のアプリメーカーでは常軌を逸した手段を用いるところも目立ち始めている。たとえば、有利な条件で増資しようとユーザートラフィックをお金で買ったり、ユーザーを引き寄せるためにポルノコンテンツを利用したり、あるいはスパムを送りつけるといった手を使いながら、競合相手を出し抜こうとやっきになっている──とりわけ競合相手が自社より汚い手段を使っているという妄想に取り憑かれた各社が、ユーザーの時間や投資家の資金を浪費させようとしているという。

「彼らは資金調達のためにダウンロード数やアプリのランキングを操作しようとしている」。そう話すのはヴェンチャーキャピタルのクレイナー・パーキンス・コーフィールド&バイヤーズのパートナーを務めるマット・マーフィー。「資金調達に乗り出している各社に共通して見受けられるのは、アプリのダウンロード数などの数字がある時点で突然跳ね上がっていること。つまりこれは、アプリメーカーがそうした爆発的成長が実際に起こるまで資金調達の開始を待ったか、あるいは自らの手でそうした数字をつくり出したかのどちらかだ」(マーフィー氏)

オープンなウェブの勢いが衰え、ブラウザベースのオープンなエコシステムに代わり、隅々までコントロールされたアプリの世界が勢力を拡大しているとすれば、疑問の余地があるアプリメーカーのやり方は、ヴェンチャーキャピタリストやソフトウェア開発者だけの問題では済まされなくなる。アプリが爆発的に増加するなかで、ユーザーのプライバシーを侵害したり、時間を無駄に使わせたり、オンラインの評価を下げたりするような悪意のあるスタートアップが身を潜める隙間も増えつつある。そして、現在みられるお金の流れとユーザー増加の流れが今後も続けば、この状況はさらに悪化していくいっぽうだ。

また、アプリがもつ不透明性によってこうした状況が助長されてきた面もある。オープンなウェブでは、広告や問題のあるコンテンツなどはほとんどの場合、外部から見てわかるものとなっている。それに対しアプリの場合は、ユーザーの行動がソフトウェアの中で完結しており、またアプリの取得も「iTunes」や「Google Play」といった特定のオンラインサーヴィスや「Tapjoy」「Flurry」などのクローズドなアドエクスチェンジで行われている。これが不正アプリやその疑いがあるアプリにとって理想的な環境となっている。

さらに、不正の疑いのある手口には様々なものが存在する。ベテランのアプリ開発者なら、オフレコという条件付きで、トラフィックを急増させる強力な手口を喜んで列挙するだろう(ただしそうした手口を長く使い続けられるかどうかはわからない)。以下に紹介するのは、そうした手口の一部である。

お金でユーザーを買う

あなたがAndroidスマートフォンでゲームをしていて、ゲーム内の何らかの仮想通貨で、新しい武器や農場の設備を買いたいと思ったとしよう。とはいえ、あなたはクレジットカードを使いたくはない。そんなとき、ゲーム内の広告が、あなたのスマートフォンに他のアプリをインストールすると、いくらかのゴールドコインがもらえると知らせてくる……お金でユーザーを買う手口では、こうしたシステムが使われる。

「ペイ・パー・インストール」(pay-per-install、インストールによる支払い)と呼ばれるこのやり方について、あるヴェンチャーキャピタリストは「アプリ開発者にとって麻薬に等しいもの」と述べている。こういった広告を仲介しているTapjoyでは、アップルが昨年ペイ・パー・インストールを禁止するまで、年間1億ドルを稼ぎ出す勢いだった。なお現在では、この手口を使うアプリの大部分がAndroidアプリとなっている。
広告

このなかには、フェイスブックやグーグルの「AdWords」を使って広告を掲載するといったシンプルなものも含まれる。しかし、顧客のターゲッティング技術が高度化していくなかで、複数のアプリメーカー間で広告を出し合うケースもますます増えている。アプリ内広告に使われる広告費は、今年モバイルウェブ広告費を追い越し、30億ドル規模に達するとの予想もある

有料の斡旋

Tapjoyや、Flurryの「AppCircle」などのネットワークでは、アプリの開発元に対し、トラフィックや登録ユーザー数、場合によっては他のアプリ開発元へのインストール数に応じて料金が支払われる。このビジネスがいま繁盛している。Flurryでヴァイスプレジデントを務めるピーター・ファラーゴによると、1年半前にスタートした同社の斡旋ビジネスは、現在では年間数億ドル単位の売上をあげているという。

スパム/アグレッシヴ・シェアリング

ソーシャルネットワークとタイアップしているアプリメーカー各社は、ユーザーの共有設定を変更させることで、通常より少ないユーザー認証プロセスで、一時的にアプリの通知頻度を増やし、通知範囲を広げて拡散していくことができる。この戦略には無料ならではのメリットがある。

不適切なコンテンツ

ユーザーがアップロード・共有するヴィデオなどのコンテンツを取り扱うアプリメーカーには、著作権のあるものやポルノコンテンツにどう対応するかという点について、ある程度の裁量が認められている。通常は、こうしたコンテンツはできるだけ早く消すことが理にかなっている(海賊版やポルノコンテンツを扱って、自社の評判を落としてもいいというアプリメーカーはほとんどない)。しかし、どうしてもトラフィックを稼ぎたいなら、こうしたコンテンツの消去を先延ばしにするだけでいい。通常は数時間しかサーヴァー上に保存されないようなコンテンツの消去を1、2週間引き伸ばすだけで、大量のトラフィックを稼ぐことも不可能ではない。

こうした様々な選択肢が存在しているため、アプリメーカーにとっては不正な手口でトラフィックを稼ぐことへの誘惑もそれだけ強い、ということになる。

ハンガリー 金融取引税導入へ


ハンガリー 金融取引税導入へ
財政再建を進めるハンガリーの議会で、振り込みなど銀行での取り引きに課税する「金融取引税」の法案が可決され、来年からの導入が決まりましたが、相次ぐ税負担に国民の反発はさらに強まりそうです。
ハンガリーは、ヨーロッパの信用不安の影響で財政が悪化し、支援を要請したEU=ヨーロッパ連合などから、財政赤字の削減を求められていることから、歳入を増やそうと塩分や糖分の高い食品に課税する「ポテチ税」や、電話の通話などに課税する「電話税」を相次いで導入しています。
ハンガリー議会は9日、新たに銀行での取り引きに対し課税する「金融取引税」の法案を賛成多数で可決し、来年からの導入が決まりました。
個人や企業が行う振り込みや引き出しなどの取り引きに対し、取引額の0.1パーセント、1回当たり最大6000フォリント(日本円で2000円余り)を課税します。
また、中央銀行と民間銀行の間の取り引きも課税対象になるということです。
「金融取引税」は、将来の経済危機に備える財源としてEUで議論されているほか、フランスでは来月から投機的な取り引きを抑制するために導入されます。
ハンガリー政府は、この税の導入で来年は1280億円余りの税収を見込んでいますが、景気の低迷が続いているなかでの相次ぐ税負担に、国民の反発はさらに強まりそうです。

2012年7月10日火曜日

日本、南シナ海の領有権問題に積極介入


 日本政府は今、海上貿易を守るために東南アジア諸国連合(ASEAN)加盟国との軍事的連携を深め、中国政府に立ち向かおうとしている。
 フィリピンとベトナムは南シナ海での中国の強硬姿勢に対し嵐のような抗議をしてきたが、懸念を表明しているのは両国だけではない。あまり目立たないが、日本も重要な役割を果たしてきた。パラセル諸島やスプラトリー諸島に直接的な領有権はないものの、世界第3位の経済大国である日本は緊張の拡大を防ぐことを非常に重視しており、そのために積極的に動き始めている。
Associated Press
フィリピンを訪問した海上自衛隊の艦船
 カンボジアの首都プノンペンで今週開かれれるASEAN地域フォーラムで、玄葉光一郎外相は最近の情勢に関して強い懸念を示し、領海権の主張を明確にして外交的解決を急ぐことを関係各国に要請する意向である。こうした介入はベトナムのような東南アジアの国々には歓迎されるだろうが、日中間の摩擦をほぼ間違いなく激化させるだろう。
 日本は中国との間に領土問題を抱えているが、それとは別の、直接的な領有権がない領土問題で日本政府が中国を敵に回すことには大きな意味がある。以前から南シナ海の情勢を注視してきた日本政府が、より積極的なアプローチの必要性を感じるようになったのは2008年に緊張が高まり始めてからのことだった。
 日本はそこに2つの大きな懸念を抱えている。1つ目は時間の経過とともに低レベルの緊張がより大規模な紛争へと発展し、海上輸送を妨げるのではないかというもの。南シナ海のシーレーン(海上輸送路)は日本製品を重要な市場である東南アジアや欧州へ輸出するのに使われるほか、輸入原油の90%が通過するため、経済安全保障上の問題となる。
 2つ目の懸念は、中国が恫喝によって南シナ海の支配権を確立すると、日本との領土問題がある東シナ海でも同じ戦術を使ってくる可能性があるというものだ。領有権とその領海における「歴史的権利」を主張するための疑わしい理由を、中国に丸めこまれたり強要されたりした結果、東南アジア諸国が受け入れるようなことになると、1982年に採択された国連海洋法条約のような既存の法的規範の実効性が損なわれてしまうだろう。中国が同じ理由を主張してきた場合、東シナ海の尖閣諸島(中国名・釣魚島)の領有権をめぐる日本側の主張の説得力にも悪影響を及ぼしかねない。
 そればかりか中国は、軍事的圧力に関して、1つの地域で成果を上げたのだから、他の地域でも効果があるはずという計算をするかもしれない。こうした中国の瀬戸際政策により、日中関係が軍事的、外交的な危機に瀕することもあり得るのだ。
 こうした事情もあって、日本は南シナ海危機への対応で主導的役割を果たすことを決意し、その一手段として多国間のフォーラムを利用している。日本政府はASEANのサミットで近海の「平和と安定」を呼びかけてきた。さらに重要なことに、日本はその海上保安庁と東南アジアのそれに類する組織との協力関係を強化することを約束した。南シナ海で領土問題を抱える国々は一般的に、その領有権を誇示するのに海軍の艦艇ではなく、沿岸警備隊を使ってきたので、この協力には重要な意味がある。
 日本は最近、年次ASEAN海洋フォーラムに関して、オーストラリア、インド、米国といった対話国を含む拡大会合も提案した。日本は、既存の国際法の枠組みを強化し、南シナ海の領有権問題を解決するメカニズムを構築する上でこのフォーラムを有効な場と捉えている。拡大会合が実現すれば、会議場における自由民主主義の存在感も高まることになる。ASEANでは、中国を敵に回すことを恐れて慎重な態度を取る加盟国があるという問題点も指摘されている。
 日本はASEANのみの議論や交渉に完全に満足しているわけではない。ASEANの努力に対しては強い支持を表明し続けている日本だが、その危機対応能力のなさに苛立ちも募らせている。日本としてはASEANが一致団結することを望み、加盟国が圧倒的に優位な立場にある中国と個別に取引することに反対している。
 そこで日本政府は、この地域のいくつかの国々との2国間協力を模索していくことになる。日本が1番積極的に支援してきたのが、軍事力に乏しいことでASEANという環で最弱部分と不安視されているフィリピンだ。日本は現在、フィリピンの沿岸警備隊の防衛能力の向上に力を入れ、その海上監視能力を強化するために巡視船10隻の供与にも基本合意している。
 両国は軍事的な連携も強化し始めている。定期的な対話はすでに始まっており、今年、海上自衛隊の艦船はフィリピンを訪問し、合同演習に参加したほか人道支援も行った。日本はフィリピンの他にも、ベトナムと防衛協力関係を深めることに合意しており、シンガポール、マレーシア、インドネシアとの交渉にも参加している。
 日本以外の大国が南シナ海の領土問題に干渉してくることに中国が反対するのは自由だが、日本による干渉は中国自身の瀬戸際政策が招いたものである。今週、プノンペンで開催されるASEAN地域フォーラムの結果、対立の火花が散るようなことになったとしても、東南アジア諸国にとって有利な結論が出るように働きかけるという日本政府の決意は固いようだ。

インド「ジェネリック医薬品を無料提供」の波紋

ジェネリック医薬品を無料提供するというインド政府の新計画は、製薬会社に打撃を与えるか


タダで提供 インドの病院で患者に無料で薬を提供する薬剤師(7月3日、コルカタ) Rupak De Chowdhuri-Reuters
必要な薬を買えない貧しいインド国民に、嬉しいニュースが舞い込んできた。インド政府はこのほど、全国民に無料でジェネリック医薬品(後発医薬品)を提供する計画を明らかにした。ロイター通信によれば、この計画の予算は54億ドルに上り、その配分先は数週間以内に発表される見通しだ。同計画は昨年承認されていたが、これまで公表されていなかったという。
これによって、公的医療機関で働く医師はすべての患者に無料でジェネリック医薬品を処方できるようになる。インド国民が、薬を今より手に入れやすくなることは明らかだ。ただし医師が処方できる薬は一部のジェネリック薬品に限定されていて、商標登録された薬を処方した医師は処罰される。
インドの医薬品業界は世界有数の成長市場であるため、この計画が大手製薬会社にとって痛手になる可能性があると、ロイター通信は伝えた。
インドの英字日刊紙タイムズ・オブ・インディアによれば、インドの製薬業界はこの動きを歓迎している。インド製薬連盟のディリップ・G・シャー事務局長は、「政府が社会の弱者に薬を無料で提供するという試みなら、いつでも大歓迎だ。われわれはこの動きを支持する」と述べた。

急成長するジェネリック医薬品市場

英フィナンシャル・タイムズ紙は、8億人が1日2ドル以下の生活を送るインドで、薬の無料提供の恩恵を受ける国民は2017年までに52%に達すると指摘する。アナリストたちは、この計画によって外資系の製薬企業が及び腰になることはないとみている。計画が対象としているのは貧困層や地方の住民なのに対し、外資系の製薬企業が狙うのは富裕層と都市部の市民だからだ。
インド政府は今年3月、ドイツの製薬会社バイエルが生産している抗がん剤のジェネリック版をインドの製薬会社ナトコ・ファーマが生産することを許可。市場に出回っている薬は高過ぎて買えないというのがその理由だ。
インドのジェネリック医薬品市場は急成長中で、その輸出規模は110億ドルに上る。インド特許法は95年以前に開発された医薬品について何の保護条項も設けておらず、今年は特許が切れる医薬品が多いという。ジェネリック医薬品メーカーが、このチャンスに食いつくのは間違いない。