2008年9月24日水曜日

イラン大統領、国連総会で核開発計画の推進を明言

【9月24日 AFP】イランのマフムード・アフマディネジャド(Mahmoud Ahmadinejad)大統領は23日、国連総会(UN General Assembly)での演説の中で、欧米諸国による「迫害」にもかかわらず、核開発計画を推進していくと明言した。

 アフマディネジャド大統領は、「(イランは)迫害には抵抗していくつもりであり、これまで自らの権利を守ってきた。そして、これからも守り続けていく」と述べ、挑戦的な姿勢を示した。

 また、米国とその同盟国を指して、「彼らは他国の発展を阻害しており、技術を独占する傾向をもっている。そして、その独占状態を利用して他国に自らの意思を押しつけている」と強調した。

 イランの核開発については、米・英・仏・独・中・露の6か国が追加制裁について検討しているが、そのうちロシアと中国が消極的な姿勢を見せているという。イランは核開発について、平和的な民生用だと主張している。(c)AFP/Sebastian Smith

2008年9月22日月曜日

エタノール普及は「水」にも影響:米国穀倉地帯で深刻な水不足

農地を、食糧を作る場から燃料を作る場へ変えることの影響について議論が続くなか、新たに水資源の確保という問題が浮上している。

それが特に顕著なのは、カンザス州やネブラスカ州などの穀倉地帯だ。どちらの州も昨今のエタノール燃料ブームの恩恵を受けているが、もともと干ばつの多い地域でもある。

エタノールの原料になるトウモロコシの栽培にはたくさんの水が必要だ。さらに、エタノール製造工場も水を大量に使用する。

約19万キロリットルのエタノールを製造するのには、約57万キロリットルの水を使う。これは小さな町の水の消費量より多い。

カンザス州とネブラスカ州の農地の多くは、水に関しては、リパブリカン川と、両州が共有する地下水層に頼っている。どちらの水資源も急速に枯渇しつつあることが判明しており、すでに利用制限がかけられている。

新たな井戸の掘削は中止され、それに伴い灌漑農地の新規造成もストップしている。

農業従事者の間には不安が広がっている。水の割当量(現在は約7.5水柱インチ[水柱インチは圧力の単位。約1870パスカル])をこれ以上減らされると、灌漑がコストに見合わなくなるだろう。土地価格も下落するかもしれない――そうなれば税収も減ることになる。

ユカタン半島のジャングルは「古代マヤ人に高度に管理されていた」

様々な木々がうっそうと生い茂るユカタン半島のジャングルは、どう見ても未開の森だ。アイオワ州などとは違い、人の手が入った様子はどこにもない。

ところが、1000年余り前にマヤ文明が崩壊する以前、このジャングルは高度に管理されていた可能性があることが研究によって判明した。われわれの目には「未開」と映る森に、人間が数千年にわたって手を加えてきた痕跡が見られるというのだ。

「ユカタン半島のジャングルに見られる植物は、マヤの村落共同体において、庭で育てられていた種が野生化したものだ。この森は、人類がアメリカ大陸に上陸する以前から存在したものではない」と語るのは、カリフォルニア大学バークレー校のChristine Hastorf教授(考古学)だ。同教授は人間と植物の長期的な関係を研究している。

カリフォルニア大学サンタバーバラ校の人類学者で、ユカタン半島のベリーズとグアテマラの国境にあるエル・ピラール遺跡を調査しているAnabel Ford氏は、2004年の報告書の中で、マヤ文明が繁栄した地域の森林について、当時の人々が大きく手を加えたことを示す証拠をまとめている。

報告書によると、ユカタン半島の植生は、自然のままの森に比べると、少ない植物種が均等に分布しており、しかも経済的に重要な植物が数多く見られるという。

「人間が好んだ種がいくつか存在する。人間がそれらを森で栽培し、世話や管理をすべて行なっていた」とHastorf教授は説明する。約1100年前にマヤ文明が崩壊した後は、「それらの木々が森を乗っ取る形になった」という。

現在のジャングルは自然の力によって作り出されたように見えるが、ユカタン半島の生態系には「今なお人が手を加えた証拠が残っている」とFord氏は書いている。

この研究は、歴史生態学という新しい学術分野に属している。人間とその生活環境の相互関係を研究する分野だ。

「宇宙で太陽発電、衛星からビームで送る」実験、パラオが関心

西太平洋の小さな島国パラオが、インドネシアのバリ州で開催された『気候変動枠組条約第13回締約国会議(COP13)』(2007年12月)において、宇宙太陽発電の実験台になることを申し出た。

宇宙太陽発電にかかる費用はまだ非常に高く、一般への応用は不可能だ。しかし、二酸化炭素を一切排出することなく、必要な場所に直接エネルギーを送れるというユニークな特性は、用途によっては非常に魅力的かもしれない。そうしたニッチ市場の1つが、おそらくこの島国なのだ。AP通信の記事によると、パラオのTommy Remengesau Jr.大統領が関心を示しているとう。

起業家のKevin Reed氏は、超小型の実証実験用衛星を低周回軌道に打ち上げることを提案している。それによって、1000世帯の家庭の電力をまかなうのに十分な量のエネルギーを、毎日地球に放射することが可能になるという。

エネルギーは、まずパラオの無人島の1つに置かれた発電所に送られ、バッテリーの充電に使用できる直流電流に変換される。Reed氏は現在、プロジェクトの遂行に必要な8億ドルの資金調達先を探しているところだ。

宇宙太陽発電には、米航空宇宙局(NASA)をはじめ宇宙開発の関係者たちが以前から関心を抱いてきた。宇宙の太陽エネルギーは、大気を通過した後の太陽エネルギーの8倍にもなるからだ。

気候変動への特効薬にはならないとはいえ、宇宙太陽発電を利用する未来はもはや空想ではない。衛星の打ち上げ費用が安くなりつつある現状を考えれば、なおさらだ。

静止軌道には大型のシステムを打ち上げることができるため、地球上から見て常に同じ位置から、5ギガワット(AP通信の記事によれば「フーバー・ダムの2倍」)の電力を放射することが可能だ。

電力はマイクロ波に変換されて地球に放射されるが、このマイクロ波自体は「電子レンジの扉から放射されるエネルギーと同程度の強さにすぎない」という。

宇宙太陽発電は、米国防総省の国家安全宇宙事務局(NSSO)が2007年秋に75ページにわたる報告書をまとめたことで、さらに追い風を受けている。同報告書は、米軍の国際活動向けの電力供給源として宇宙太陽発電を利用する可能性を検討したものだ。

国防総省にその有用性を納得させることができれば、宇宙太陽発電はさらに大規模な「実証プロジェクト」となるかもしれない。

140倍の水素生成が可能な「遺伝子組み換え大腸菌」

大腸菌は、恐ろしい食中毒を引き起こす菌だ。しかし、テキサスA&M大学で化学工学を専門とするThomas Wood教授は、これに遺伝子工学的な操作を加えることによって、自然に発生する場合の140倍にのぼる量の水素を生成する大腸菌を作り出した。

この大腸菌のいちばんの利点は、生成された水素の分離が非常に簡単だということだ。「気体であり、泡になって出てくる」とWood教授は言う。

6つの遺伝子を選択的に取り除くことによって、大腸菌は、糖が動力源の水素工場とも言えるものになる。

商用化されるまでにはまだ長い道のりがある。だが、Wood教授の技法の最大のメリットは、水素を必要とする現場ですぐ水素を生成できることだ。水素輸送のインフラストラクチャーを構築する必要がなくなり、経済的にも有利だし危険性もなくなる。

『TreeHugger』の「大腸菌が次世代の有望な水素燃料になる?」と『Science Daily』の「大腸菌は未来の燃料源?」を参照した。

最新シミュレーションモデルで「限定核戦争による影響」を予測

地球の裏側で起こった限定核戦争の余波によって、避難するはめになるかもしれないとしたらどうだろう。自分のこととしてよく考えてほしい。

インドとパキスタンとの間の長年にわたる紛争が嵩じて戦争が勃発し、双方の国が相手の国の大都市に対してそれぞれ50の核兵器を使ったと想像してみよう。カラチやボンベイなど南アジアの多くの都市が、第二次世界大戦の最後に広島や長崎が体験したような戦火にさらされることになる、と。

このような状況になると、戦場となった地域の人々を襲う悲劇だけに留まらず、燃え上がる都市からの熱煙流が、地球を覆っているオゾン層に穴を開ける可能性がある。

こういった予測が、局地的な核戦争における大気化学を探る新しい研究から明らかになった。オゾン層の破壊から生じる紫外線放射量の増加により、DNA損傷が2倍以上に上昇するほか、北米と欧州全域でがんの発生率が高まる可能性があるというのだ。

4月7日(米国時間)にオンライン版『Proceedings of the National Academies of Science』(PNAS)で発表された研究報告の共同執筆者で、コロラド大学ボールダー校の大気宇宙物理研究所(LASP)に所属する科学者Michael Mills博士は、次のように述べる。

「われわれの研究は、世界規模の破壊現象があることを裏付けている。これまで予測されていた全面的な核戦争に起因するオゾン層の破壊よりも、さらに大規模なオゾン層の破壊が、限定的な地域紛争によって地球全体で引き起こされる可能性があることをこの研究では示している」

Mills博士の示したモデルは、100の核爆発で、その影響が地球全体に及ぶということを示している。米国が保有している核爆弾の量に比べれば、ほんのひとかけらに過ぎないのにだ。

冷戦時代のソビエト連邦と米国との間で全面核戦争が起きた場合に、どれほどの衝撃が地球にもたらされるかを探った数十年におよぶ研究を経て、最近の研究は、局地的な核戦争に焦点を当てている。局地戦のほうが、全面核兵器最終戦争よりも起こりうる現実性は高いと見られているからだ。

地域的な核戦争が気候に影響し、農作物の収穫量を減少させ、何百万もの人々を餓死させるという研究もある。[『Science』2007年3月号に掲載された論文によると、全面核戦争によって「核の冬」が起こるという予測は、1万発の核爆発に関する予測だったが、100以下の爆発によっても、10年にわたる気温低下が生じるという。]

最新の大気化学モデルを組み込むことで、科学者らは、たとえ小規模な核戦争でも、地球環境と大気の構造そのものに大打撃を与え、20世紀の間に上昇した気温の2倍分程度、逆に気温が下がるケースも考えられるということを明らかにしている(PDFファイル)。[ラトガーズ大学研究者チームによる研究で、論文は『Journal Of Geophysical Research』2007年7月号に掲載された。NASAゴダード宇宙飛行センターによる上空80キロメートルまでをカバーする気候モデルを利用し、さまざまな規模の核戦争による長期的影響をシミュレーションしている。]

今回のMills博士の研究報告では、米国大気研究センターによるモデルを使用し、500万トンの黒色炭素(煤)が大気中に放出された場合の影響について調査している。

一群の都市が一斉に炎上すれば、それによって各都市の気候がそれぞれに変化し、煤は約6000メートル上空にまで吹き上げられることが明らかとなった。煤煙はいったんこれほどの高度に吹き上げられると、太陽光によって温められ、さらに地表から約8万メートルの高さにまで上昇するという。

この間、暖められた煤がさまざまな大気の変化を引き起こし、最終的に、成層圏で地球を保護する日よけとして機能しているオゾンが大きく減少する。

研究では、中間緯度地域で25%から45%、極地域上空では50%から70%、オゾン層が減少すると示された。オゾン層の「穴」として知られるこのオゾンの減少は、南極上空の有名なオゾンホールの何倍もの大きさになるという。

この報告書で挙げられている研究では、北緯45度線上(オレゴン州ポートランドの少し南あたりを通過)で、地球に達する紫外線が増加すれば、DNAの損傷は213%上昇する危険性があるという。

「これは、皮膚がんや白内障に多大な影響があるとともに、農作物や生態系に対して非常に有害となる」とMills博士は語った。

減少したオゾンレベルは5年間持続し、さらにその後5年間、かなりの減少状態が続くと思われる。たとえ戦争の原因が局地的なものだとしても、その影響は地球全体にまで及ぶのだ。

「ほとんどすべての地域に影響が出るだろう」と、Mills博士は結論づけている。

次の環境脅威は窒素汚染:「窒素酸化物が1860年の30倍に」

作物の肥料となる窒素がなければ、世界の食糧は不足する。しかし、人類が窒素の排出量を削減しなければ、海も人類も死滅する。

このように警告する論文が2つ、『Science』誌の5月16日号に掲載された。いずれも『国際窒素イニシアティブ』(INI)の研究者らが執筆したものだ。

1つ目の論文は、これまで行なわれた窒素汚染に関する研究をレビューし、環境中の窒素量の驚くべき増加ぶりを図表で示している。2つ目の論文は、人間の活動によって海に排出される窒素量を数値で表わしている。

「人間の活動はこの100年間、自然界の窒素の循環サイクルに非常に大きな影響を与えてきた。おそらく、炭素の循環サイクルに与えてきた影響さえも上回るだろう」と、2つ目の論文執筆者の1人で、イースト・アングリア大学の生物地球化学者であるPeter Liss氏は話す。

厳密に言えば、問題なのはいわゆる普通の窒素——人間が吸う空気の4分の3以上を占める気体——ではなく、「窒素酸化物」と呼ばれるものだ。

一酸化窒素や二酸化窒素は、広義の活性酸素の一部だ。活性酸素は、通常の酸素分子とは電子の配置が異なるため極めて不安定で、より環境に悪影響を及ぼす可能性が高い。

人類が生成する窒素酸化物の量は、1860年には15メートルトンだった。それが1995年には156トン、2005年には185トンに達した。

年間270億トンという世界の二酸化炭素排出量と比較すると小さな数字に見えるが、今回の論文執筆に参加したバージニア大学の生物地球化学者、James Galloway氏が「窒素の滝(nitrogen cascade)」と呼ぶ現象[窒素が環境中を移動することで及ぼす連鎖的な作用]によって、その影響は増幅されるという。[なお、大気中の二酸化炭素濃度は、産業革命以前に比べて約33%上昇したとされている]

「私の車は今朝、一酸化窒素を大気中に排出した。それは時間の経過とともに大気中を移動し、土壌、水中、沿岸系を経由して再び大気中に戻ってくる。[窒素の排出は]これらすべての過程で影響を及ぼしうる」とGalloway氏。

窒素は産業活動によって排出されるものもあるが、大半は作物の肥料から排出される。窒素と水素、硫酸鉄を組み合わせて化学肥料を作る「ハーバー・ボッシュ法」が、現代農業の主流になっているのだ。

「窒素酸化物の第一の、そしておそらく最も大きな影響は、世界の食糧供給への影響だ。人類が食べるのに十分な量の食物を生産するには、窒素に頼らざるを得ない」とGalloway氏は言う。

しかし、窒素のマイナス面は増える一方だ。窒素酸化物は空気中のオゾン濃度を上昇させ、呼吸器系疾患を引き起こし、作物の収穫量を減らす。また、酸性雨をもたらし、酸素を大量消費する海藻の異常繁殖を促して漁業に被害をもたらす恐れもある。

窒素汚染はいずれ全世界の海を、メキシコ湾のように生物が棲めない場所に変えてしまうかもしれない。現在メキシコ湾には、肥料の流出により、酸素が乏しいために海洋生物が生息できない「デッドゾーン(日本語版記事)」が約1万5000平方キロメートルにわたって広がっている。さらに、海洋窒素は温室効果ガスである一酸化二窒素に変化する[地球温暖化係数は、二酸化炭素を1とすると一酸化二窒素は310とされる]。

Galloway氏によると、燃費や、発展途上国の下水処理能力、作物や家畜に窒素を吸収させる能力を向上させれば、窒素酸化物の排出量を年間53トン(現在の総排出量の約28%)削減できるという。

それで本当に前進と言えるのかと、私はGalloway氏に問いかけた。窒素酸化物の排出量を4分の1削減したとしても、世界の窒素汚染レベルはなお100年前のほぼ10倍だ。

しかし、Galloway氏は楽観的だった。科学者たちは窒素酸化物が問題になりうると何十年も前から警告してきたが、政策立案者や業界関係者が注意を払うようになったのはつい最近のことだ。窒素酸化物対策として現在提言されているいくつかの段階的措置は、ほんの手始めにすぎない、と。

プラスチックを短期間で分解するバクテリア、高校生が特定

プラスチックが分解されるまでには何千年という時間がかかる。だが、科学博覧会に参加した16歳のDaniel Burd君は、たった3ヵ月でプラスチックを分解することに成功した。

カナダのオンタリオ州ウォータールー市に住む高校2年生のBurd君は、かりに1000年かかるとしても、何かがプラスチックを分解しているに違いない、その「何か」はたぶん、バクテリアだろうと考えた。

(地球のバイオマスの半分から90%までの範囲において、バクテリアは、生物学的神秘の謎を解く鍵として、かなり有力な候補になる)

『The Record』紙の記事によると、Burd君は、土にイースト菌を混ぜ水を加えたものの中に、粉状にしたプラスチックを入れて、30度にした。すると、自然界に放置した場合より早く、プラスチックが分解された。

温度や条件を変えながら何度も実験した末、Burd君は、プラスチックをムシャムシャ食べる微生物の正体を突き止めた。1つは緑膿菌(Pseudomonas)属で、もう1つはスフィンゴモナス(Sphingomonas)属だった。[上の記事によると、緑膿菌属がポリスチレンを分解するという既存の研究はあるが、ポリエチレンを分解するという研究は初めてとされる。]

Burd君は、この発見を産業レベルに採り入れるのは簡単なはずだと言う。醗酵槽と培地、それにプラスチックがあれば、バクテリアは、プラスチックを食べて熱を発し、必要なエネルギーのほとんどを自らに供給する。副産物も、水と少量の二酸化炭素が出るだけだ。

驚くべき話だ。私は、この時代においてもっとも手に負えない環境問題の1つを解決してしまったかもしれないこの若者に、近いうちに取材を申し込もうと思っている。それと同時に、Burd君が通う高校ではもう学年末のパーティーが終わってしまったのかどうかが気になって仕方ない。Burd君がキングに選ばれないなら、この世はどこか間違っている。

「太陽熱発電の人工島」、5億円のプロトタイプを中東で建設

安価でクリーンなエネルギーを生産することは実に大きな難問だ。

ならば、大きな解決策としてこんなのはどうだろう。スイスの研究者、Thomas Hinderling氏は、直径数キロメートルに及び、全体がソーラー発電システムとして機能する人工島を建設したいと考えている。Hinderling氏によれば、こうした人工島では何百メガワットもの電力を比較的安価に発電できるという。

Hinderling氏は、研究開発を手がけるスイスの株式非公開企業、Centre Suisse d'Electronique et de Microtechnique社(CSEM)の最高経営責任者(CEO)だ。Hinderling氏はすでに、アラブ首長国連邦のラスルハイマ首長国から、同国でのプロトタイプ施設の建設を500万ドルで受注している。

島型ソーラー発電施設に関するウェブサイトには限られた情報しか公開されていないが、Hinderling氏はエネルギー関連の有名ブログ『The Oil Drum』で、自身の計画を説明している。

Hinderling氏の見積もりでは、直径わずか1.6キロほどの島型ソーラー発電システムでも、190メガワットの電力を、1キロワット時当たり15セント――米国の現在の電気料金の約2倍――という、収支が釣り合う価格で生産できるはずだという。


人工島は、プラスチック膜に集光ミラーを敷き詰めたものを水上に浮かべた構造となる。ミラーを利用して液体を温めて蒸気に変え、蒸気の力でタービンを動かして発電する仕組みだ。

陸上では、この種の発電方法はかなりよく知られている。いわゆる太陽熱発電所は、化石燃料発電所に代わる未来の主要なエネルギー生成技術として注目を集めている(日本語版記事)。米Google社は3つの代替エネルギー事業への投資を発表(日本語版記事)したが、3つのうち2つまでが太陽熱発電の企業に対するものだ。

だが、なぜ海上で太陽熱発電を行なうのか? Hinderling氏によると、複雑な追跡システムを使わなくても、太陽の動きに合わせてプラットフォーム全体を動かし、発電効率を最大化できるからだという。

CSEM社の計画では、2010年末に直径約500メートルのプラットフォームを海に浮かべる予定だ。

ローレンス・バークレー国立研究所でリニューアブル・エネルギー(持続的利用可能エネルギー)を研究しているMark Bollinger氏は、こうした島型施設の建設は可能だとは思うが、CSEM社が企業として生き残れるかは疑問だと述べている。

「建設は十分可能だと思うが、技術の発達度や陸上にも同様の施設がまだ少ないことを考えると、海上用の施設はいささか先走りすぎのように思える」とBollinger氏は言う。

また、技術そのものの実行可能性という観点から、Bollinger氏は、太陽熱発電を海上で行なうことの必要性に疑問を呈した。海上では、波などの陸上にはない可変要素によって、太陽光を正確に追跡できなくなる恐れがあるというのだ。

「使える陸地が非常に少ないというのなら海へ向かう理由もわかるが、少なくとも太陽熱発電に関しては、場所がないなどということはないと思う。太陽熱発電に最も向いているのは米国南西部の砂漠地帯で、そこになら使える土地がいくらでもある」とBollinger氏。

もう1つ、Hinderling氏が触れていない大きな疑問点がある。それは、島型施設で発電した電力を、いかにして陸地の人間のもとへ送るかという問題だ。幸い、海上の風力発電施設向けに、沖合からの送電方法(PDFファイル)の研究がすでに進められている。

そのほか、送電網に「大きな負荷をかけられない」米国北東部の諸地域に向けて、すでに発電船が電力を生産している、とBollinger氏は指摘した。

これらのことをすべて考慮すると、島型施設は、『海上住宅研究所』が建設を目指す海上都市国家(日本語版記事)にぴったりの電力供給方法だと思わずにはいられない。

メタンハイドレートの二面性:「新エネルギー」+「温暖化を激化させる脅威」

深海底や北極圏の永久凍土に埋蔵されているメタンは、地球温暖化の暴走を招く危険がある。しかし同時に、大量のエネルギー供給源となる可能性を秘めてもいることから、エネルギー企業の関心を集めている。

米国、日本、インドといったエネルギーを求める国々は最近、不思議な形の天然ガスであるメタンハイドレートに大きく注目している。メタンハイドレートは世界中の海で発見されており、海底の地下で、氷のような構造にガスが閉じ込められている。北極圏の永久凍土の下でも見つかっている。

『Nature』誌の5月29日号に掲載された論文[Nature Vol 453,29 May 2008,doi:10.1038/nature06961]によると、6億3500年前にクラスレート[結晶格子によって作られた空間のなかに分子が取り込まれた化合物]の一種であるメタンハイドレートが融解し、急激な地球温暖化を引き起こした可能性があるという。今後同じことが繰り返されるかもしれないと論文は示唆しているが、そのメタンハイドレートは魅惑的なエネルギー源でもあるのだ。

米エネルギー省メタンハイドレート研究開発プログラムの中心になっている研究者のRay Boswell氏は、「われわれが求められているのは、将来、これを政策立案者の現実的な選択肢にすることと、何が利用できるかを明らかにすることだ。いざ必要となったとき、科学技術の面であと30年かかるという状況は避けたい」と言う。

米内務省鉱物管理局によると、メキシコ湾の砂岩貯留層には、185兆立方メートルを超えるメタンハイドレートが埋蔵されているとみられ、現時点で商業利用の最有力候補だという。もし5%でも開発できれば、8兆5000億立方メートル以上のガスがもたらされる。米国には現在、在来型の天然ガスが推定で約6兆立方メートル埋蔵されている。[別の英文記事によると、世界全体のメタンハイドレード埋蔵量は原油埋蔵量の2倍とも推定されている。]


メタンハイドレートは研究者の間で、「燃える氷」というロマンチックな名前で呼ばれている。凍った塊なのに火をつけると炎を上げるからだ。[メタンハイドレートでは、低温かつ高圧の条件下で、水分子が立体の網状構造を作り、内部の隙間にメタン分子が入り込んで氷状の結晶になっている。]

しかし、エネルギー企業がこの燃料に引き寄せられるのは、ロマンチックな気分からではない。メタンハイドレートはこれまで、商業用に採取するにはコストがかかりすぎていた。しかし、原油価格が1バレル[約160リットル]130ドルを超えるまでに上昇している現在、メタンハイドレートが利益を生むエネルギー源として急浮上する可能性も出てきた。

米Chevron社はメキシコ湾での研究に参加しており、英BP社はアラスカでメタンハイドレートを調査している。日本の技術者チームは2007〜2008年の冬、カナダのノースウェスト準州の試掘井からメタンハイドレートを取り出すことに成功したと伝えられている。

「大量に存在することは誰もが知っている」とBoswell氏は言う。「われわれの目標は影響を理解することだ。エネルギー源として可能性はあるか。もしあるなら、どうやって手に入れるか。気候の問題との折り合いはどうつけるか、といったことだ」

厄介なのは、最後に挙げた問題だ。メタンハイドレートが21世紀のエネルギー源として重要な役割を果たせるかどうかについて検討する研究者もいる一方で、メタンハイドレートは過去に起きた壊滅的な気候大変動の元凶だったのかもしれず、もしかしたら同じことが繰り返されるのではないかと問いかける研究者もいる。

こうした厄介な問題を浮かび上がらせたのは、研究者たちもいまだに解明できずにいる先史時代の気候の大変動だ。

最後に起きた急激な気候変動は、約5500万年前、始新世の温暖化だ。極地から氷が消え、南極大陸に木が生えた。研究者たちは化石の分析から、当時の大気に多量のメタンが含まれていたと断定している。

古気候研究者の中には、次のような仮説を立てる人もいる。徐々に進行していた温暖化の影響で、約5500万年前に海水温が転換点に達し、凍結していたメタンハイドレートが融解した。閉じ込められていたガスは、長くとてつもなく大きなげっぷのように、海面にぶくぶくわき上がった。メタンの温室効果は二酸化炭素よりはるかに強力[二酸化炭素に比べて20〜25倍とされる]なため、大気中に大量に放出されたとしたら、気温の急上昇を引き起こした可能性がある。[今回のNature論文は6億3500年前の気象変動を扱っている。また、約2億5000万年前の大量絶滅であるP-T境界に関しても、非常に大規模な火山活動→海底のメタンハイドレードの大量放出が原因という説がある。]

科学読み物の本などには、こういった仮説を基に、人間がもたらした現在の地球温暖化も、壊滅的なメタンの放出を引き起こすかもしれないという推測が書かれている。ただし、科学者の間では、メタンはもっと長期的な問題になる可能性が高いという考え方が主流だ。

シカゴ大学地球科学部のDavid Archer教授は、高い評価を受けている気候に関するブログで、メタンは「炭素循環の伏したトラ」と表現している。

「予測では、(二酸化炭素の)濃度が倍になると、いずれ深海の温度が3度ばかり変化する可能性がある」と、Archer教授は『Wired.com』に語った。「3度上がると、海にあるメタンはやがて、すべて放出されるだろう。問題はその速度だ」

Archer教授が最近行なった、モデリングによる一連の実験の結果からすると、海から放たれたメタンは数千年かけて地球温暖化を加速させる恐れがあるという。ただし、われわれが生きている間はそれほど心配する必要はない、とArcher教授は言う。今世紀中に関しては、北極圏の永久凍土が融け、比較的小規模なメタンハイドレートの放出が起きる可能性は高い。「それでも、火山が噴火する程度の問題だ。この世の終わりが来るわけではない」

しかし、Nature誌に今回掲載された論文の主執筆者である、カリフォルニア大学リバーサイド校地球科学部のMartin Kennedy准教授は、メタンハイドレートの放出を「破滅に向かう気候のシナリオ」であると明確に述べ、世界の気候にメタンが及ぼす影響をさらに研究する必要性を訴えている。[同氏は、これまでの説と比べて、はるかに急激な変動が起こり、今世紀内に気候大変動が生じる可能性があると結論づけている(英文記事)。]

米国では、メタンハイドレートの危険性についても利点についても、あまり研究が進んでいない。一方、素早い動きを見せている国もある。

日本、韓国、中国、インドはいずれも、メタンハイドレートを採算の合うエネルギー源にするという決意を示している。インドは2006年に3500万ドルを投じ、自国沿岸にメタンハイドレートが埋蔵されていないかについて調査した。韓国は現在、ほとんどの発電所を輸入した天然ガスで稼働させているが、2015年までにメタンハイドレートの商業利用を開始すると宣言した。

世界はゴールドラッシュ、石油ブームに続くものを見つけたのかもしれない。今度はメタン・バブルだ。

「米国車ローンの債務不履行率は日本車の倍以上」調査結果

世界の株式市場が金融引き締めを懸念し、低迷する中、米国車の購入者は、それとは別の方面で打撃を受けるかもしれない。

イギリスの学術系出版社、Palgrave MacMillan社から近日出版される『家計におけるクレジット利用調査』(Household Credit Usage)というさえないタイトルの書籍が、購入する自動車の種類に応じて自動車ローンの金利を変えるべきだとの主張を展開している。

この書籍によると、ある銀行が1998〜2003年に契約した自動車ローン約7000件を調査。その結果、米ゼネラルモーターズ(GM)社系列の乗用車『Saturn』の購入者は、トヨタ自動車の車の購入者と比べてローンの支払いを怠る確率が22倍高いことが明らかになったという。

実際、米国車向けローンと比較して、日本車向けの自動車ローンは、債務不履行に陥る確率が56%低いという。また、ヨーロッパ車向けローンが債務不履行に陥る確率は、米国車向けローンよりも50%低いとの結果が出た。

ペンシルバニア州立大学スミール・カレッジ・オブ・ビジネスの教授でこの書籍の主執筆者であるBrent Ambrose氏は、債務不履行に陥る可能性が高いのだから、米国車向けローンは金利を大幅に上げるべきだと主張している。

さらに、独自のローンを提供している米国の自動車メーカーは、こうしたリスクを考慮して、自動車そのものの価格も値上げすべきだと述べている。

もちろんそうなると、現金払いでSaturnを購入する客は、債務不履行者たちが踏み倒した借金のとばっちりを受けることになるのだが。

「欧米の罪悪感の代償をパレスチナ人が払っている」、ガザの現状に国連調査団長

【9月19日 AFP】ホロコーストに対する罪悪感から欧米はイスラエルに圧力をかけられず、パレスチナ人がその代償を払っている――南アフリカのノーベル平和賞受賞者デズモンド・ツツ(Desmond Tutu)元大主教は18日、パレスチナ自治区ガザ(Gaza)で住民19人がイスラエル軍の砲撃で死亡した事件を調べていた国連調査団の報告書提出に際し、このように述べた。

 ツツ元大主教はアパルトヘイト(人種隔離)政策への抵抗活動で知られ、2006年11月にイスラエル軍がガザ地区のベイトハヌン(Beit Hanoun)を砲撃し、住民19人が死亡した事件に関する国連調査団の団長をつとめている。

 元大主教は記者団に、「欧米は、もっともなことだが、ホロコースト(ナチス・ドイツのユダヤ人虐殺)を見て見ぬふりをしたことを、深く後悔している」と指摘。

「深く後悔しているときこそ、償う準備ができているときだ。それをわれわれは悔悛(かいしゅん)と呼ぶ。欧米は深く後悔しているが、悔悛はパレスチナ人の犠牲によって行われている」「欧米の一般市民が目覚めて、『わたしはこれに加担することを拒否する』と言うことを願うばかりだ」などと語った。

 ツツ元大主教率いる調査団が同日、国連(UN)人権理事会(Human Rights Council)に提出した報告書は、ベイトハヌンの事件について「イスラエル軍からは事実に基づいた説明がなかった。ベイトハヌンの砲撃は戦争犯罪に当たる可能性があると結論せざるを得ない」と結論付けている。

 ツツ元大主教は人権理事会への説明でも、「国際社会はガザの人々の苦難に対して十分な役割を果たしていない」と述べている。(c)AFP

ナイジェリア武装勢力、石油産業との「戦争」で戦闘停止を発表

【9月22日 AFP】「石油戦争」を宣言しナイジェリア南部でパイプラインなど石油関連施設への攻撃を強めていた、同地域の主要武装勢力「ニジェール・デルタ解放運動(Movement for the Emancipation of the Niger Delta、MEND)」は21日、戦闘停止を発表した。

 MENDは「われわれが報復を開始してちょうど1週間となる2008年9月21日午前1時、MENDは、追って通知するまで一方的停戦を宣言する」との声明を発表した。MENDは、ナイジェリア軍によるMEND拠点への攻撃に対する報復として、石油産業への「戦争」を宣言していた。

 MENDは、自らに対する攻撃が再び行われた場合は、戦闘を再開すると警告している。

 MENDは19日、英蘭石油大手ロイヤル・ダッチ・シェル(Royal Dutch Shell)の石油パイプラインを破壊したと発表した。シェルは、MENDが犯行を主張している6件の襲撃のうち2件しか認めていないが、19日には一連の襲撃を背景に、ボニー(Bonny)島にある施設から輸出される石油について不可抗力を宣言し、契約上の出荷義務から除外している。(c)AFP/Sophie Mongalvy

ロシア、次世代戦略ミサイルの発射実験を実施

【9月19日 AFP】ロシア海軍の潜水艦が18日、米ミサイル防衛(MD)計画に対抗して開発された、多弾頭の大陸間弾道ミサイル(ICBM)「ブラバ(Bulava)」の発射実験を行った。ロシアの通信各社が同日、国防省関係者の話としてと報じた。

 国営ロシア通信(RIA)が国防省関係者の話として伝えたところによると、同日午後7時5分、弾頭はロシア極東地域のカムチャツカ(Kamchatka)半島にあるKura演習場の標的に命中した。

 ブラバは、射程8000キロメートルで最大10個の核弾頭を搭載可能とされ、いかなるミサイル防衛網でも突破できる能力をもつとされている。ロシア軍の装備するICBM「トーポリM(Topol-M)」を海上発射用にしたもので、ロシア軍の新型ボレイ(Borei)級潜水艦に装備されるという。

 ロシアは、米国が世界の安全保障への脅威に備えるためだとして、チェコにレーダー施設を、ポーランドに迎撃ミサイルをそれぞれ配備するとしたミサイル防衛計画に対し、強く反発している。(c)AFP

カナダ、北部の警備強化 ロシアの北極進出をけん制

【9月20日 AFP】北極圏での権利を主張するため北極点海底に旗を立てたり、カナダ領空近くへの飛行をくり返したりしているロシアをけん制するため、カナダ政府が北部国境で軍事的警戒態勢を強めている。

 スティーブン・ハーパー(Stephen Harper)首相は19日、「国際的な手続きの中でだけでなく、カナダ領空に接近するなど国際的な枠組み外で北極圏の権利を主張していることに憂慮する」との考えを明らかにした。

 ハーパー首相は北部の主権強化のために、新型監視網の構築、海軍の警備増強、北極圏の訓練基地設置など軍事措置を含む対抗手段を講じていると述べた。

 北極圏に接するカナダ、デンマーク、ノルウェー、ロシア、および米国は、それぞれ権利を主張しているが、それらの領域は重複している。北極圏の海底には900億バレルの原油が手つかずで眠っているとされる。(c)AFP/Michel Comte

米政府、公的資金75兆円投入へ 不良資産買い取りのため

【9月21日 AFP】米政府は20日、大恐慌以来最悪となる金融危機に対処するため、不良資産の買取に過去最大規模となる7000億ドル(約75兆円)の公的資金を投じる方針を固め、一両日中の合意を目指して議会との調整を開始した。

 19日深夜に議会に提出された原案によると、ヘンリー・ポールソン(Henry Paulson)米財務長官の職務権限を大幅に拡大し、財務省は今後2年間にわたり最大75兆円の不良資産を金融機関から買い取る。

 ニューヨーク・タイムズ(New York Times)紙はウェブサイト上で、財政資金を手当てするため政府の債務上限を11兆3000億ドル(約1210兆円)に引き上げるとの政府案を報じた。(c)AFP/Veronica Smith

イランで訓練受けた「暗殺部隊」帰国、イラクのシーア派戦闘員

バグダッド(CNN) イラク駐留米軍は21日、イランで「暗殺部隊」としての訓練を受けていたイラクのイスラム教シーア派武装勢力の戦闘員が帰国を開始したと明らかにした。イラク政府高官、治安当局幹部や米軍、多国籍部隊を標的に定めているとみられる。 


米軍はこれを受け、首都バグダッドなどで「暗殺部隊要員」の顔写真のビラなどを配布、住民に対し拘束につながる情報提供で報奨金を約束している。米政府は、標的の予想リストをイラク政府に提供もした。 


イラク駐留米軍当局者は先月、イランでの暗殺部隊訓練の事実を初めて明らかにし、イランの革命防衛隊の精鋭「アルクッズ旅団」や、イランやシリアが支援するレバノンのイスラム強硬派組織ヒズボラが当たっているとしていた。訓練を受けている人数は不明。 


暗殺部隊の訓練の情報は捕獲した武装勢力戦闘員の供述などから得られたという。イランはシーア派が主流で、同派が主導するイラク政府の誕生を受け、シーア派勢力の支援を加速しているとの見方もある。 


イランでの訓練は、コム、テヘラン、アフワズやマシャドで実施し、武器操作、テロ細胞分子の作戦などが対象となっている。 


イラクの治安軍、米軍は今年、国内のシーア派武装勢力の一掃作戦を展開し、多数の戦闘員がイランへ逃れたとされる。暗殺部隊の訓練にはこれら戦闘員が加わっている可能性がある。 


米国政府は、アルクッズ旅団がイラク武装勢力のテロ攻撃を煽っているとも疑い、同旅団幹部に対する金融制裁も発動している。

2008年9月19日金曜日

米軍の心理学主任「メディアは米兵の精神に悪影響」

米兵は今すぐこの記事を読むのをやめた方がいい。戦う気力が損なわれるかもしれないから。

米空軍特殊作戦司令部の作戦心理学主任を務めるCarol Green大佐によると、メディアが容赦なく流し続ける悪いニュースが、米兵の「立ち直る力を弱めている」という。

歴史や政治などをテーマとする優れたブログ『Entropic Memes』もとりあげているが、Green大佐は2006年のプレゼンテーション(PDF)において、「大手メディアが一貫して、人間の行為と世界の出来事についての否定的な面を提示している」と述べた。

その結果、「多くの人々がもはや、苦しい状況を『人生の現実』と許容できなくなっている」という。


Green大佐はさらに次の点を挙げている。

立ち直りを妨げる否定的な影響がこれほど広範に行き渡っていることで、新兵――および経験を積んだ兵――の体力や忍耐力、回復力が損なわれる可能性がある。

このような状況下で――不安、恐怖、利己主義、短気、怒り、およびその結果として――愚かな判断――が、気付かぬうちに広がっているのだ!

一見して明らかなダッシュ(―)の使いすぎについては、ここでは追及しないでおこう。

Green大佐の言葉は、メディアに対する激しい非難と取られるかもしれないが、同様の主張をする他の軍関係者と比べれば、実はかなり穏やかだ。

たとえば、陸軍が最近行なったプレゼンでは、メディアを他の「脅威」――アルカイダ、ハッカー、外国の情報局など――と一緒くたにしていた[脅威を「従来からあるもの」「新しいもの」「外部」「内部」の4つの軸で分類。メディアは麻薬カルテルとともに「内部にある、新しい脅威」と分類された]。

また、新たに承認された陸軍の規定では、実質的に記者と外国スパイを同等に扱っている。つまり、兵士たちの精神をむしばみ衰えさせる、悪魔のような記者たちは、その行為だけでテロリストや犯罪者と同レベルに「昇格」させるにふさわしい、というわけだ。

ありがたいことに、Green大佐は軍関係者に向けて、こうした不快なブログ、新聞、テレビ番組、雑誌などすべてに対抗する手段があると保証している。

「陰険なほど否定的なメディアの雰囲気の中で回復力を養うために、兵士たちに必要なこと」として、同大佐は5ヵ条の行動を挙げている。例えば、「つらい問題について率直に話す」、「自分たちの肯定的な傾向や行動を自ら認識する」「リーダーからの明確で肯定的な期待」などだ。

おっと! これは、今どきの若者を「自己中心的な褒められ中毒(日本語版記事)」にしたと米軍が批判したところの、「甘やかし」と似たようなものではないか?

[ワイアード・ブログ『Danger Room』の別記事(英文記事)は、1週間に120人の退役軍人(20歳から24歳)が自殺しており、これは一般の自殺率の2倍にあたる、というCBSの報道について、(この分析は不正確であるという意見も含めて)取り上げている。]

「仏教やヒンズー教諸国はバイテクに好意的」

「神の役割を果たそうとしている」という批判にうんざりしている科学者は、アジアに移住するのも1つの手だ。

アジアでは、比較的厳格なキリスト教のタブーに縛られることなく、神や来世についてさまざまな見解が存在するからだ。

11月20日(米国時間)に『New York Times』紙に掲載された記事、「科学者は神の役割を果たしているのか? 信じる宗教によってその答えは変わる」で、John Tierney氏は次のように書いている。

ES細胞の研究者たちが繰り広げる世界的な研究競争をテーマにした本『Cell of Cells』を書いたCynthia Fox氏は、「西洋の宗教と比べて、アジアの宗教はバイオテクノロジーが『神の役割を果たす』ことについて強い不安を抱いていない。特に、治療を目的としたクローン技術は、仏教やヒンズー教にある輪廻転生の概念にも合致している」と話す。


Tierney氏は記事の中で、プリンストン大学教授で分子生物学者のLee Silver氏が作成した、国別のバイオテクノロジー導入方針を図示する分布マップを引用して解説している[Silver氏には、生命科学における宗教と科学の関係を論じた著書『Challenging Nature: The clash of science and spirituality at the new frontiers of life』がある。]。

Silver氏によると、中国やインド、および一部の南アジア諸国などが、国の方針としてバイオテクノロジーに特に理解を示しているという。

そしてこれに関しては、宗教的伝統として「唯一の創造神が存在せず、代わりに、神がまったく存在しない、あるいは多くの神が存在し、宇宙の成り立ちについての大掛かりな神の計画といったものがない」国との相関関係が成立するという[ES細胞クローニングと遺伝子組み換え食品について調査した。アジア諸国ではこの両者について許容的。一方、キリスト教では「人間」の位置づけが高いことから、キリスト教圏では動物や植物の遺伝子工学は盛んだが、ヒトES細胞技術への抵抗は強いという]。

この記事を読んで、「マッド・サイエンティスト」予備軍が大挙してアジアに移り住み、クローン人間の軍隊を作ったらどうしようと心配になった人もいるかもしれないが、それは安心していい。

Tierney氏によると、世論調査の結果では、世界中どこであろうと、生殖目的のクローニングは受け入れられていない。宗教の別を問わず、世界に共通する規範意識というものもあるのだ。

対衛星兵器:ミサイルより効果的な方法は「ジャミングやハッキング」

今年1月、中国がミサイルを使って自国の人工衛星を破壊する実験に成功して以来、米軍関係者の間では、空の上にある自国の衛星をどうやって守るかという論議がヒートアップしている――さらには、敵国の衛星を破壊することについても、以前より公然と語られるようになった。

『Washington Post』の記事によると、新しい防衛予算では、「米国の衛星に差し迫る脅威について警告し、攻撃に対する破壊や防御を実行し、敵国の衛星を妨害する『対宇宙システム』」に対して、6300万ドルという金額が充てられている[同記事によると、「米国衛星を防御し敵国の衛星を攻撃する」ことを可能にする計画に、総額で約3億ドルが充てられている]。

また、『Discover』誌の12月号は「衛星を破壊する8つの方法」――宇宙空間での核爆発からハッキング攻撃まで――を考察し、「それぞれの脅威レベル」をランク付けしている。

同誌は、「最も深刻な脅威」を、「地球から発射され、地上レーザーあるいはレーダーシステムによって攻撃目標まで誘導される迎撃ミサイル」だとしている。

しかし、本当にそうだろうか。

私がこの件について話した事情通の人たちのほとんどは、『MSNBC』が報じているように、軌道を回る衛星の持つ最大の弱点は「常に地球からの管理を必要とする」ところだと考えている。このような地球からの指令を偽ることで、衛星をだますことは簡単だ。

「最も効果的なASAT(対衛星兵器)は、敵国の衛星のすぐそばで爆発する兵器ではない。衛星に対してこれから午後いっぱい休むように指令する信号だ」と、William E. Burrows氏は述べている。同氏は、ニューヨーク大学でジャーナリズムを教える教授で、偵察衛星にかんする著作『Deep Black』がある人物だ。

米空軍は2004年以降、敵国衛星の活動を妨害するための、一連の無線妨害装置を導入している。

また、ニューメキシコ州にある空軍研究所では、少人数の下級士官からなるグループが年に3、4回集まって、米国の衛星の活動に支障をきたす弱点を探っている。

具体的には、市販の装置を使ったり、あるいはインターネットや空軍基地を探って情報を仕入れたり、学生を装って軍関係者や契約業者から情報を引き出すといった単純な方法を使って、衛星の活動を妨害することの可能性を探っている。

「人類の急速な進化で民族間の差が拡大」研究報道が抱える問題

米国の人類学者チームが、今週『米国科学アカデミー紀要』(PNAS)に発表した論文の中で、以下のような研究成果を発表している。

現代の医療や社会保障制度の発達によって、[以前であれば死んでいた人の命が助かっているという理由で人類の進化の速度が遅くなっているという仮説もあるが、]進化のペースが落ちたという事実はない。それどころか、食生活や気候、ライフスタイルの変化の影響で、進化のペースがますます速くなっている[自然淘汰はこれまでとは別の形で行なわれ、自然淘汰の速度は増している。過去5000年間の遺伝的変異は、それ以前の人類と比べて100倍という急増を見せている。]。しかも、さまざまな特徴を持つ集団ごとに、異なるかたちで進化が進んでいるようだ。

同チームの研究結果についてはさまざまなメディアが報じているが、なかにはいささか無責任な報道もある。

研究チームは、4つの異なる民族(漢民族、日本人、西アフリカのヨルバ族、ユタ州のモルモン教徒)から採取した270のゲノムを分析し、結論を導き出した。

標本に選ばれた各民族は、幅広い人類の傾向を比較的まんべんなく示しているように見える。それぞれにかけ離れた民族において同じように進化のペースが速まっていれば、全人類において進化のペースが速まっているという結論にも、説得力が感じられる。この結論だけでも大ニュースのはずだった。

だが、この研究の中において、民族ごとの進化の枝分かれに関する部分はかなり不明瞭だ。今回選ばれた4つの民族が示すパターンは、他の民族にも見られる可能性が高いのだろうか? 4つの民族がそれぞれの大陸を代表する存在だと考えていいのだろうか?

たしかに、今回の研究結果は、民族間で遺伝学的な相違点が存在しうることを示している――だが、これは別に目新しい発見ではない。

民族間の遺伝学的違いが表面的なものではなく、実質的な差になっていることが判明していれば、新しい発見になっていただろう。だが、今回の研究は、そうした点を評価するのが目的ではない。乳糖(ラクトース)耐性や肌の色といった2、3の特徴[欧州やアジア大陸への移動で、色素沈着が弱まりビタミンDの産出量が増大。また、乳糖分解酵素(ラクターゼ)を作る遺伝子は通常10代になると活動を停止するが、欧州では成人になっても乳を分解できるよう変異している]を除いて、遺伝的に異なる特徴は考慮されていないのだ。

現代の社会的風潮や歴史的傾向(この数百年に発生した大規模な人口移動、異民族間の結婚および出産、農村から都市生活への移行)も考慮していない。

それでもBBCはこの研究について、進化のペースが速まることで人類すべての「違いがますます大きくなってきている」という論調で報じ、さらには大陸による遺伝子の違いについて、論文執筆者の1人であるユタ大学のHenry Harpending氏の言葉を引用した。

カナダの『Globe and Mail』紙も、「人種は互いに異なる方向へと進化している」というHarpending氏の言葉を引用している。[フランスAFPの記事(日本語版)の引用では、「人類は多様な進化を遂げつつある。遺伝子進化の速さは特にヨーロッパ、アジア、アフリカで顕著だが、そうした進化のほぼすべては、その大陸に固有なものだ。つまり人類はますます多様化しつつあり、さまざまな特性が混ざり合った1つの民族へと統合される方向へは向かっていないということだ」]。

英国『Times』紙の記事は、さらに事態を進めて、民族という概念を、恣意的なことで悪名高い「人種」(race)という概念と混同してしまっている。米国ユタ州の『Salt Lake Tribune』紙も同様で、今回の研究結果は「人種の平等に関する仮説に疑問を投げかける可能性がある。なぜなら、欧州、アジア、アフリカに住む人たちには、時が経つにつれて肌の色以上の違いが生じてきていることを、この研究成果は示唆しているからだ」と書いている。

[生物学的には、どの「人種」も、すべて同一のヒトという種に含まれる。人種という言葉は問題が大きいため、現在は、環境要因の影響を受けて形態の相違が地域的に移行していく傾向を示す「クライン」(cline、勾配)といった概念が用いられるようになってきている。]

ジャーナリストが人種問題を前面に出すことは理解できる。科学に関して書くのは難しい。科学ジャーナリストは、非常に複雑な研究結果に着目し、理解に努め、その要点とデータの裏付けの確かさを判断し、人々の関心を引くように説明する――これらの課程をすべて2、3時間以内にこなすうえ、取り上げた話題そのものが議論になっていたり、矛盾をはらんでいたりすることも多い。

だが、James Watson氏が大失言をした(日本語版記事)直後だというのに、人種に関する問題をことさらにクローズアップするような報道をしたメディアは、無責任と言うしかない。

アフリカ人の知性が劣っているというWatson氏の発言は、人種に基づく遺伝上の違いをめぐる激しい議論を招いた。これまでの経緯を考えれば、進化に関する今回の研究結果が、Watson氏の見解を裏づけるものだと解釈されるのも明白だ。だが、今回の研究はそうした目的のために行なわれたわけではない。実際、Watson氏の見解の裏づけにはなりえないのだ。

それに、人類学者のHarpending氏は、人種と知性に関して意見を言う資格が大半の人々よりもあるだろうが、同氏の発言は今回の研究の本質にはほとんど関係がなく、おそらくは後づけの考えだったはずだ――いっそのこと、完全に無視されたほうがよかっただろう。

『Los Angeles Times』紙はHarpending氏の発言を完全に無視しているようだ。それに、自画自賛すると、私も無視した。

[Timesの前述記事によると、Harpending氏は以前の研究(PDF)において、アシュケナージ系ユダヤ人のIQが平均より高いのは、貿易や金融に従事していたことから来ると述べて、科学者たちの批判を受けたことがあるという。]

参考までに書いておくと、ほかならぬJames Watson氏の身体にも、「黒人の」DNAがかなり多く含まれている! [Watson氏の全遺伝情報(ゲノム)は公開されているが、その分析によると、16%が黒人の遺伝子であり、祖先の一人が黒人だったと分析されている。一般の欧州人においてはその割合は1%未満とされる。]

実に見事な皮肉と言えるだろう。

謎の米軍施設『HAARP』、公文書が認めるその能力は

ここ数年、陰謀説派が最も激しく憶測を展開した対象といえば、米軍がアラスカで展開している軍事プログラム『高周波活性オーロラ調査プログラム』(HAARP)をおいてほかにない。

アラスカにある莫大な数の送信機、電波探知機、磁気探知機は、何らかの超強力兵器だ――ここ数年飛び交ったそんな憶測を、米国防総省は鼻先であしらってきた。

だが、最近明らかになりつつある情報から判断すると、陰謀説派がまったく的外れというわけではなかったようだ。

HAARPに対しては当初から、具体的に何をしているのかについて数多くの意見が出ていた。マインド・コントロールのための巨大施設、高高度核爆発への対抗手段、天候を制御する装置、電離層を沸騰させるマッドサイエンティストの実験、究極の無駄な公共事業など、さまざまな噂が飛び交っていた。だが、HAARPが実際に稼動を始めた現在、軍の上層部は、アンテナが林立するこの施設の用途は、人々の憶測よりも穏当なものだ、と述べている。米空軍研究所のある関係者は10月、「HAARPの主な役目は電波を作り出し、電離層を調査することだ」と述べた(日本語版記事)。

それは事実だろう――ある程度までは。

情報自由法(FOIA)を利用してUFO関連文書の発見を目指す、『X-ファイル』を地で行くような陰謀説サイト『Above Top Secret』で、Clifford Stone氏の尽力により、『HAARP: Research and Applications(PDFファイル)』という詳細なレポートの開示へとつながった。

この文書は、表紙に「空軍研究所と米海軍研究局(ONR)の共同プログラム」と書かれており、軍がHAARPで意図している用途について説明している。明らかなのは、国防総省はこの施設から、軍事利用できる成果を得たいと考えているということだ。

HAARPは実際、上層大気や磁気圏、電離層に電波の干渉を引き起こすなど、軍事的に重要な能力を数多く持っている。


文書には、「高周波帯(VHF/UHF)での電離層横断伝播は、多数の民生・軍用の通信システム、監視システム、遠隔探査システムすべてにかかわる事象だ」と書かれている。つまり、電離層に混乱を与えることで、超短波ラジオ、テレビ、レーダー信号を意のままに無効化できるわけだ。アマチュア無線をやっている人なら知っているように、電離層の反射・屈折作用は、長距離無線の受信に大きな影響を与える。HAARPは、それを人工的に起こす唯一の手段を提供するのだ。

文書で興味深い第2の点は、HAARPが「オーロラの電気力学的回路」に対し影響を及ぼすことができる、という部分だ。オーロラ中には、10万〜100万メガワットの電気の自然流があり、10〜100ヵ所の大規模発電所で発電する電気に相当するという。電離層の電気特性に手を加えるということは、つまり、スイッチ1つで電気の巨大な流れをある程度変えられるということだ。有効に機能するなら、電気の自然流を変調させて、巨大な低周波無線送信機を作ることもできるだろう。

これは、軍部にとって極めて興味深い点だろう。極低周波(ELF)は、海中での通信や惑星の探査に利用できる。こうしたELFの伝播特性により、HAARPは「地球のかなりの部分」をカバーできる。文書によると、ELFは「地下の標的を検出すること」は言うまでもなく、「海底探査」に使用して海底鉱山を発見することさえ可能だという。

HAARPはまた、電離層で「エネルギー粒子の降下を誘発」し、「衛星の活動と寿命に影響を及ぼす」こともできる。この分野の研究は、太陽フレアや核爆発による粒子から衛星を保護することを目的としているとされるものだが、この説明からは、衛星にささやかな悪影響を与えることも可能だ、ということがうかがえる。

HAARPはまた、高周波帯でいくつかの有用な裏技も持ち合わせている。たとえば、「現状では微弱か皆無であるような地対地の通信リンクや衛星対地の通信リンクを強化する」ことも可能だ。電波反射層を作り出せるということは、つまり、無線やレーダーで非常に長距離をカバーするシステムが可能になるということだ。さらにHAARPは、自ら高周波レーダー送出装置として機能することさえ可能だ。

第3の注目点は、光学および擬似光学に関するものだ。HAARPは空を明るくすることができる。高高度のプラズマ生成の応用については以前にも検討したが(対ミサイル防衛の可能性など)、HAARPの場合、人工プラズマにより「赤外線の波長領域でメガワットの電力の大気光」を作り出せると文書に書かれている。

これは、「赤外線探査とその対抗手段に関して、軍事的に重要な意味」を持つ。これを説明する図は、衛星の下に赤外線の光を示しており、このシステムで赤外線衛星の視界を選択的に遮断できることを示唆している。赤外線衛星は、大陸間弾道ミサイル(ICBM)の発射を発見する最善の手段となっているため、これは重要な能力になり得る。

総じて、HAARPは基本的な研究にとどまらない、実に多くのことが行なえる施設だということが分かった。天候の操作に比べたら大したことではないような気がするかもしれないが、忘れないでほしいことがある。文書に記載され、ここで紹介したHAARPの能力は、軍部が公開することをいとわない一部でしかないのだ。

米軍施設『HAARP』は「敵国全体を機能不全にする」兵器?

米軍がアラスカで展開している軍事プログラム『高周波活性オーロラ調査プログラム』(HAARP)について、現実離れした憶測はひと通り聞いた、もう十分だとお思いだろうか。いや、ロシア人ならもっとスケールの大きなことを考えてくれるはずだ。

マインド・コントロールなんて目じゃない。ロシア人が考えるHAARPの正体は、地球を転覆させる「地球物理学兵器」だ。

これまでのHAARP関連記事を熱心に追っていない読者のために復習しておくと、HAARPとは電離層の研究を目的とする軍事プロジェクト(日本語版記事)で、「民生および軍用の通信システムと監視システムを強化するために使用する」とされている。

近年では米国防総省が、高高度核爆発の影響を緩和する(PDF)目的で、HAARPを利用することに関心を示しているという話もある。しかし、HAARPが使用するアンテナ列は高周波帯に対応しているため、天候を制御する装置から、マインド・コントロールのための巨大施設に至るまで、この施設の目的に関する多数の憶測を促してきた。

ロシアの軍事専門誌に掲載された以下の記事(ありがたいことに、CIA出資の『Open Source Center』によって翻訳されている)によると、HAARPは究極の超強力兵器だという。


複数のロシア人および外国人のアナリストの主張によると、この米軍によるプログラムは実のところ、超強力なビームを生成する地球物理学兵器であり、表面上はそれを隠しているのだという。

HAARPを稼働させる真の動機は、軍事目的のために、地球の固体、液体、気体の各層で発生する作用に影響を及ぼす手段として使用することだ。

電離層において人工的に生成された、プラズモイド(高電離ガスが塊になった状態)や「球電」(球状の雷)は、その気体の中心点をレーザーで移動させることによりコントロール可能だ。つまり米国は、巨大な装置を使って、エネルギー・ビームを空に向けて発射することを計画しているのだ。このエネルギー・ビームは電離層で反射され、低周波の電磁波として地球に戻ってくる。

米国は、各種の憶測を沈静化するための声明を発表しているが、このプログラムに反対する人たちは、十分な根拠があってこれを疑っている。

「HAARPによって刺激を受けた電離層は、軍の各種ハードウェア――火器管制・誘導システム、攻撃目標修正修正装置、ナビゲーション・システムなど――に組み込まれた無線・電子装置に影響を与える。その結果、航空機やミサイルが故障することになる」と述べるのは、軍事・地球物理学専門家のAleksandr Plaksin氏だ。

HAARPプログラムの実施が招く結果は決してこれだけではない。たとえば核兵器と比較しても、地球物理学兵器の方がはるかに強力だ。ビームを発射する標的が英国ぐらいの国土であれば、瞬時に国全体を機能不全に陥らせることができる。

複数の科学者は、地球物理学兵器を使用すれは、単独の部隊が一国全体の経済活動をマヒさせ、数年は復旧できない状態にできる可能性がある、と指摘している。攻撃された国民は、通信手段もすべて使えなくなり、何が起きたのかも分からないだろう。

最も危険なのは、もしHAARPシステムが最大出力に切り替えられたときに地球がどうなってしまうのか、こうしたビームによる攻撃を受けて電離層がどのように反応するのか、同システムの開発者でさえも確実なことは分からないという部分だ。

すでに知られているように、電離層とオゾン層は、極めて有害な宇宙線から地球を保護している。HAARPシステムの電磁気砲が電離層に傷をつけると、宇宙線が地表にまで到達することになる。

さらに、HAARPの(公表されたような)能力を実際に使った場合、その影響は制御不可能だと指摘する研究者たちもいる。この兵器をたった1回使用しただけで、地震や、地球規模での急激な寒冷化など、誰も止めることのできない「引き金効果」をもたらす可能性もある。

戦争が地球に及ぼす影響について調査しているカナダ人の科学者、Rosalie Bertel氏の意見によると、電離層に極めて強い混乱を与えると、大量の自由電子の放出――いわゆる「電子シャワー」――が発生する可能性があるという。

その場合には、南極と北極の電位が変化し、結果として地球の磁極が移動するかもしれない。分かりやすく言うと、地球が「ひっくり返る」ということだ。こうなると、方位磁石は北を指さなくなり、方角が分からなくなってしまう。

米国で活動するスパイの実態調査:無給、逮捕率も上昇

[全米科学者連盟(FAS)の]『Secrecy News』が掲載した新しい調査結果によると、現代のスパイは、(逮捕された人たちを見た限りでは)それほど大金を稼いでいないようだ。

この調査(PDFファイル)は、[米国防総省人材本部(DHRA)の一部門である]Defense Personnel Security Research Center(PERSEREC)が所有する、スパイ活動データベースに基づくものだ。[米国人が、米国に不利になるようなスパイ活動をした件についての調査で、1947年から2007年について分析している。]

調査は、次のように結論付けている。

「1990年以降の米国のスパイのうち、3分の2は自ら志願した。1990年以降、スパイ活動の報酬はあまりよいものではなく、スパイの80%は活動に対する報酬を受け取っていない。2000年以降に報酬を受け取った者はいない」

報酬をまったく受け取っていない人々の割合は、1980年までは34%だったが、1980年代には59%、1990年以降は81%と増加している。[1947年から1979年までと、1980年から1989年、1990年から2007年と、3つの期間を分け、173人のスパイについて分析している。]

このような顕著な傾向が示される原因として、2つの要因が考えられる。1980年代については、報酬を受け取る前に捕まったスパイの数が多かったこと、1990年以降は、「分断された忠誠心」から活動に従事したスパイが多く、報酬の受け取りを拒否したことだ。[「分断された忠誠心」からの活動とは、米国籍を得たが、元の国にも結びつきがあるスパイの活動のこと。ただし、スパイの65%は米国生まれという。]

米国人がスパイ活動で得る報酬は時とともに減少している一方で、刑務所に入る可能性は増加している。1980年までの期間で、刑務所に入ったことのないスパイは22%だったが、後の2つの期間に服役を免れたのは、1980年代が7%、1990年以降が6%だった。これら期間別の3集団において、平均刑期が短くなる傾向が見られた。

それなのに、なぜスパイになるのだろうか?

金銭的報酬が唯一の動機だというケースは、第一の期間では47%、第二の期間では74%だったが、1990年以降には7%だけになった(略)。

1990年以降、すべて動機の中で最も大きな変化を示したのは分断された忠誠心であり、分断された忠誠心が唯一の理由であるとするスパイ活動は57%だ。

米国人がスパイ活動にかかわる動機として、金銭や分断された忠誠心の次に多いのは不満だ。不満からスパイ活動を行なったとする米国人の割合は、1980年以前は16%だったが、1980年代には6%に下落し、最近では再び22%まで上昇している。

割合は少なくなるが、米国のスパイが活動に及ぶ動機として挙げる上記以外の4つの一般的な動機として、人に取り入るため、強要されたため、スリルを味わうため、そして人に認めてもらう、つまり自尊心のためが挙げられる。

[1990年代以降のスパイはテロ活動と関係している。]

「地球の裏側から無人航空機でミサイルを発射する」兵士たちのストレス

地球の真裏から無人航空機を操作するのは、それがあまり重要性のない軍務であれば、楽な仕事と考えられていた。しかし、イラクやアフガニスタンでの戦争が長期化し、衛星通信で操作する航空機への依存度が高まったため、米空軍の司令官は、「遠隔操作を担当する兵士の精神的な緊張を和らげる手助け」を、牧師や心理学者、精神科医に求めざるを得なくなった、とAP通信が報じている。

ほんの数年前、無人航空機(UAV)の操縦士は「戦闘に参加しても、夜は家に帰り、妻や子供の顔を見ることができる」と得意げに話していた[UAV『MQ-1 Predator』は、レーザーガイドのミサイル『ヘルファイア』を搭載しており、米国にある空軍基地から、衛星経由でイラクへの攻撃が可能]。

しかしそれ以後、遠隔操作の偵察機の需要が急激に増加し、操縦士の労働時間もどんどん伸びていった[2005年のワイアード記事によると、2002年には利用UAVは100機以下だったが、2005年には約1200機利用されていたという]。そして、操縦士たちは自らを「終身刑の囚人」にたとえるようになった。

これは、いささか大げさな泣き言といえる。操縦士は、椅子に縛られているにしても、米陸軍や米海兵隊に比べると恵まれている。15ヵ月にわたって戦場に派遣されることもなければ、まずい食事を強いられることもない。自分や友人が爆弾で吹っ飛ばされる心配もない。

それでも、戦争と平和を絶え間なく行き来すれば、ほかとは異なる精神的な負担がのしかかる。「いつミサイルを発射してもおかしくない状況から、次には子どものサッカーの試合に行く。まったく懸け離れている」と、Michael Lenahan中佐はため息をつく。

戦闘機に乗っている場合には、「時速約800〜1000キロで近づき、重さ220キロ余りの爆弾を落として飛び去る。何が起こっているかは見えない」とAlbert K. Aimar大佐は説明する(同大佐は米国に拠点を置く第163偵察航空隊の司令官で、心理学の学士を持つ)。一方、UAVの『Predator』がミサイルを発射するときは、「着弾までの一部始終が見える。それは非常に鮮明で、臨場感があり、自分の身に直接響く。だからこそ、ながく頭から離れない」

「エンダーのゲーム」の当事者に、誰がなりたいだろうか?[オースン・スコット・カードのSF『エンダーのゲーム』(邦訳早川書房刊)では、6歳で異星人との戦いの司令官になるべく運命づけられたエンダーが、ゲームのつもりで現実の戦争を指揮する]

[AP記事によれば、『Predator』操縦士が見ることのできる画像は高解像度で、地上の人物の性別や、武器の種類なども判別できるという。また、攻撃の成果を観察することも求められる。

イスラエルや米国が、UAVで個人をターゲット攻撃していることについての日本語版記事はこちら。ガザ地区の武装勢力へのインタビューによると、UAVは高い上空を旋回飛行しており、ミサイルが発射されるときには音もしないという]

体内にチップをインプラントする人々:誘拐対策や医療目的/発ガンの危険も?

誘拐事件が増加しているメキシコで、皮膚にチップをインプラントし、誘拐された場合に追跡しやすくするというシステムが販売されている。

メキシコのセキュリティー会社Xega社が設計したシステムで、同社によると売上げは増加しているという。

Xega社によると、チップの大きさは米粒程度で、通常は腕にインプラントされる。チップは、ユーザーが持ち運ぶGPS対応ボックスと交信して、パニックボタンが押されたときにはGPSデータを会社に送信する。ペット向けに販売されているシステムと似ている。

明らかでない部分は、誘拐犯によってGPS装置が捨てられてしまったときにどうなるかだ。

けれども、Reutersの記事によれば、Xega社の売上げは今年13%増加している。統計によれば、メキシコの誘拐は2004年から2007年の間に40%も増加したというから、この数字も驚きではない。

Xega社はもともと盗難車を追跡するGPSシステムを開発していたが、2001年に社主が誘拐されたことをきっかけに、人間を追跡する技術の開発を始めたという。

[同記事によれば、顧客数は現在2000名以上。価格は4000ドルで、付け加えて年間2200ドルの費用がかかる。来年はブラジル、コロンビア、ベネズエラにも進出する計画という。

米国では、2002年から『ベリチップ』(VeriChip)が販売(日本語版記事)されている。2007年段階で、約2000人が自身の医療記録を記録したチップを埋め込んでいるとされる。また、米国防総省は、チップを兵士の体に埋め込む研究計画を推進している(日本語版記事)。ただし、チップインプラントについては発ガンの可能性も指摘されている(日本語版記事)]

米大統領選はすでに決着?:「意識下でのバイアス」が持つ多大な影響

動画は、民主党のMichael Dukakis大統領候補へのネガティブ・キャンペーン

大統領候補たちは、今後数ヵ月にわたって遊説し、論争し、何百万ドルもの資金を費やすだろうが、それはまったく無駄なのかもしれない。

11月の大統領選挙で誰に投票するか、有権者の集合的精神はすでに固まっている。大統領候補はきわめて重要な浮動票の獲得を目指しているが、こうした有権者の多くは、実際のところ、誰に投票するかすでに決めているのだ。

有権者は慎重に吟味しているつもりかもしれないが、潜在意識下では誰に投票するかがすでに決められており、本人がそのことに気づいていないだけだ、と心理学者らは指摘する。

民主主義にとっての意味を考えると不安に駆られる状況だが、それでも、参加型民主主義という理想を救うことは可能かもしれない。

「操り人形のように踊らされないためには、戦略を立てる必要がある。とはいえ、こうした影響力に打ち勝つことはおそらく可能だ」と西オンタリオ大学の心理学者、Bertram Gawronski准教授は言う。

Gawronski准教授とパドバ大学の心理学者たちは、イタリアの都市ビチェンツァの住民129人を対象に、地元にある米軍基地の拡張問題について意見を聞く調査を行なった。

調査の1回目は、基地拡張を支持するかどうか質問したほか、基地拡張計画に関して「自動的に行なわれる連想」、言い換えるなら「無意識の認識」を明らかにするように設計された、ワードマッチング方式の一連のテストを行なった。

その1週間後に再び調査を行なったところ、1週間前には意志を決定していなかった調査対象者のなかに、こんどは決めていた人々がいた。意識的に行なったその決断は、前回の調査時に、その人々が無意識のうちに示していた偏りを反映したものだった。

基地拡張に対して賛成か反対かを決めるための論議よりも、直感的な傾向のほうが強力だったのだ。この直感的な傾向が、回答者がその論議をどのように認識するかをかたちづくっていた。

「無意識になされる連想は、現実の認識をゆがめる可能性がある。情報を偏った形で認識することは、将来の決定において特定の方向へと導く基盤を提供する」とGawronski准教授は説明する。

二大政党制をとる米国のほとんどの選挙では、少数の浮動票によって結果が左右される。今回の調査結果から、政治家たちは、熟考して理性的に計画を立てるよりもむしろ、誰に投票するかまだ決めていない有権者の潜在意識に訴えることに専念すべきだということがわかる。しかも、いちばん手っ取り早い手段は中傷広告を流すことだ。

有権者とは、候補者の考えや資質について慎重に検討した上で思慮深く政治的決断を下すもの、という考え方からみれば、これは気のめいるようなニュースだ。


「現実に関する認識を歪めるような影響は、とくに情報があいまいな場合に強く響く。そして政治の分野では、われわれはあいまいな情報に対処しなければならないことが多い」とGawronski准教授は語る。

無意識下にある偏りと実際の選択の間に関連性があることは、これまでの研究でもわかっている。「この研究の特にすばらしい点は、そのプロセスを追跡したことだ。この結論の基本理論は、政治的決断や社会的決断の理解に適用できるだろう」と、ニューヨーク大学の心理学者、Elizabeth Phelps博士は指摘する。Phelps博士は、『Science』誌(8月22付け)に発表された今回の研究には関与していない。

無意識になされる連想はどこから生まれるのだろうか? 条件付けからだと、Gawronski准教授は言う。1つのことを十分な回数繰り返すと、関連付けが生まれる。

[『New Yorker』誌の表紙を飾った]イスラム教徒の衣装に身を包んだバラク・オバマ候補の風刺画(日本語版記事)とか、オバマ候補の映像とともにパリス・ヒルトンの映像を並べて[オバマ候補を中身の無いセレブと批判するジョン・、マケイン共和党候補の]キャンペーン(以下の動画)を流したりすると、同候補に対するマイナスイメージが人々の頭にこびりつくようになる。

最悪なことに、「批判的な連想を刷りこむほうがはるかに簡単だ。好ましい連想を刷りこむことは理論的には可能だが、批判の場合よりはずっと大変だ」とGawronski准教授は指摘する[「否定的な印象」のほうが人の心への影響力が強い、という研究報告についての日本語版記事はこちら]。

このことは、ネガティブ・キャンペーンをベースにする戦略にとって有利に働く。ネガティブ・キャンペーン戦略では、意識ではなく潜在意識をターゲットにしている。

ただし、何もかもがすんなり行くわけではない。人々は抵抗できるのだ。

「無意識のうちに行なわれる連想に縛られたくない有権者の立場から言うと、われわれの研究は、精神がどのように働くかに関する情報を提供し、無意識を意識化できていない点について解明することができる」とGawronski准教授は語る。

Phelps博士によると、意識だけでは十分ではないという。

「自分の認識を変えて、物事に自分がどう対応するかについてもう少し思慮深くなるように実践することは可能だ。現在、どういう戦略をとればこの変化を起こせるかについて、研究が進められている」とPhelps博士。

『Science』誌の「無意識に行なわれる連想から、まだ決断していない意思決定者の将来の選択を予測」を参照した。

3次元の仮想環境を使う総合監視システム

バージニア州アーリントン発――サングラスをかけた中年女性が空港の混雑した通路を歩いている。特に不審なところはない。少なくとも、周りの旅行者たちに危害はなさそうだ。しかしこの女は少し前、非常口から忍び込み、セキュリティー・チェックを回避している。そして今、人込みの中にまぎれ込もうとしている。

女は結局、何もしなかった。数秒後に警察に拘束されたためだ。ただし、これは世界中の米国大使館に配備が進められているセキュリティー・プラットフォームのデモでの話だ。空港警備員の持つ携帯情報端末(PDA)には、早々にこの女の写真が表示されていた。非常口の上に設置された「追跡」カメラがとらえた女の画像が、制御盤を経由して送られたからだ。ほかのセンサーが作動すれば、制御盤の3次元地図にリアルタイムで表示される。制御盤の係員はただちに女の顔写真を米国土安全保障省に送信して、身元の確認を求めることもできる。

これこそ、米Boeing社が設計した監視システム、『Visual Security Operations Console (VSOC) Sentinel』が担うとされる役割だ。米国務省はこうしたデモを見て、この技術に強い期待を寄せている。国務省は2年間で350万ドルを投じ、米国大使館にVSOCを導入する計画を進めている。場所こそ明かされていないものの、すでに10を超える大使館でシステムが運用されているという。2年以内にあと60の大使館に配備される予定だ。

「世界は危険に満ちている」と、国務省の上級顧問を務めるDennis Williams氏は言う。「この新システムを導入すれば、情報の把握と伝達がスムーズになる」

VSOCは既存のセキュリティー・システムを1つの効率的なインターフェースに統合することから始まる。このインターフェースは、監視下にある建物や区域を3次元の仮想環境として表示する。国務省の場合は、CADによる図面とデジタル写真でバーチャルな大使館を作り上げている。Boeing社によると、空港や原子力発電所、さらには1つの都市全体まで、同じように容易に守備することが可能だという。

VSOCにはカメラ、生体情報の読み取り機、レーザーなどのセンサーをつなぐことができ、警報が発せられた位置や理由を即座に知ることができる。たとえば、カードキーを間違った場所で使おうとするものがいたら、VSOCのソフトウェアが「一瞬で」その位置を示してくれる。また、システムにはチャット機能が組み込まれており、警備員などが情報交換に利用できる。

米国外に260以上の施設を持ち、約7000台の監視カメラを配備している国務省にとって、VSOCシステムは歓迎すべき機能向上となる。Williams氏によると、国務省が脅威を把握するために使っている装置類の多くは「メーカーごとに仕様が異なり」、個別の通信規格が使われているという。一方、VSOCは動作環境に制約がなく、インターフェースも直感的でわかりやすい。

「これまでより格段に柔軟性がある」とWilliams氏は言う。

Boeing社が、VSOCの開発にとりかかったのは1998年からだ。同社はこの技術についていくつもの大きな構想を抱いており、対象は国務省のような政府機関にとどまらず、企業や大学、州や地方のインフラまで幅広く考えている。

Boeing社でVSOCプログラムの責任者を務めるJohn Thompson氏は、「当社の方式によれば、6週間もかからずに都市を丸ごとモデリングできる」と話す。まず衛星画像や航空写真で都市の地図を作り、地理情報システム(GIS)のデータを利用して、人が使っている可能性のある建物を立体的に表示する。画面上で建物にカーソルを合わせれば、非常口の位置といった重要な情報が手に入る。GPSやRFID(無線通信による識別技術)を利用した、消防車や救急車、個人などの位置情報をシステムに組み込むこともできる。警察、消防、救急など緊急時に出動する人たちのための『Sim City』のようなものと思えばいい。

Thompson氏によると、米国内の複数の都市がVSOCに関心を示しているという。また、セキュリティー以外の用途を考えている企業との話し合いも進んでいるそうだ。同氏は鉱業関連の1企業を例にあげ、「ポンプや換気扇の停止をリアルタイムで知りたがっている」と説明する。

シカゴ・ミッドウェイ空港はVSOCを試験運用している。デンバーの路面電車も2003年から導入している。路面電車を運行するデンバーのRegional Transportation District(RTD)で公共安全対策責任者を務めるDavid Genova氏によると、18駅、4ヵ所のパークアンドライド型駐車場、3ヵ所の駐車場に設置された約300台のカメラのネットワークが指令センターにつながっているという。

指令センターにはずらりと並んだ監視画面はなく、VSOCの制御盤が2つあるだけだ。「地下鉄の路線図を思い浮かべてほしい。基本の地図では路線配置がわかるようになっている。駅をクリックすれば、そこがクローズアップされる。そして駅にあるカメラの映像がすべて表示され、その中から1台を選択することもできる……。技術者がシステムの中を自由に動き回れるということだ」とGenova氏は説明する。

好き勝手しているトラブルメーカーたちにとっては、ありがたくない話だ。

「ナノテク兵器」開発競争の脅威

アーティストのAlice Wang氏が見せるナノ兵器が作り出す暗黒郷のイメージ(英文記事)がこびりついているだけかもしれない。しかし、KGBの後進であるロシア連邦保安庁(FSB)長官も務めた経歴を持つVladimir Putin大統領の指導の下で、ロシアがナノ兵器の研究を急ピッチで進めていることには、不安をかき立てられる。

以下、Nanotechnology.comより引用。

ロシアは現在、物資と人材を集中的に投下して、ナノテクノロジーに基づく兵器システムの開発を進めていると、Putin大統領は言う。

モスクワの『クルチャトフ一般応用核物理学研究所』で開かれた科学会議において、出席の専門家を前に演説したPutin大統領はさらに、高性能な攻撃用、防衛用新通信システムや軍事力に欠かせないとして、このような新しい概念に基づく戦略技術を開発し実装する必要性を訴えた。(中略)

ロシアの通信社RIA Novostiの伝えるところでは、Putin大統領は、この分野におけるロシア最先端の研究センターとして、クルチャトフ研究所の持つ重要性を強調し、ロシアの核の盾がここで開発されたことに言及したという。


当然ながら、米国自身も軍事用ナノテクノロジー研究を数多く進めている。他の国々も同様だ。そして、研究を行なっていない国々が将来ナノ兵器を購入できるようになるのも確実だろう。

『Center for Responsible Nanotechnology』(CRN)は、この話題に関する基本情報を掲載するとともに、きびしい監視と検査を実施する国際的なナノ兵器管理システムの構築を提唱している。

以下、CRN、「国際管理の必要性」(The Need for International Control)からの引用

国家間の争いによって、20世紀には何百万もの人々の命が奪われた。だが、分子ナノテクノロジー(MNT)による争いは、さらに悲惨な結果を招く恐れがある。国家が戦争を仕掛けるのは、他国から脅されていると感じたときか、劣悪な国内情勢など国内にある政治的圧力をかわしたいときだ。当サイトの「分子製造の危険性」(Dangers of Molecular Manufacturing)のページで説明しているように、分子製造は不安定な軍拡競争を招きやすい。それは非常に恐ろしい状況だ。表向きは同盟国である国どうしでさえ、お互いの最終的な意図についてはおそらく疑心暗鬼になるかもしれない。よく言って不安定な休戦状態という強国間の結びつきがたくさんある。各国が、分子ナノテクノロジーを予想外の方法で攻撃に使うことはないと信頼できる何らかの基盤を見出せない限り、それぞれが防衛用の、そしておそらく攻撃用のナノテクノロジーを開発せざるをえないだろう。国際的な分子ナノテクノロジー兵器の管理体制を構築し、厳密で信頼性の高い検査能力を持たせることが最良の選択だろう。

いい考えのように思える。だたし、生物兵器の国際的な管理システムの構築の難しさを考えると、前途は多難だ。

イスラエルによるシリア空爆:防空システムをハッキングか

Sharon Weinberger 2007年10月10日

9月初め、イスラエル軍はシリアの核施設とおぼしき場所を空爆した。

ここで非常に大きな疑問が生じる。イスラエル軍はどうやって、シリアのロシア製防空レーダー網に見つかることなく空爆したのだろう?

『AVIATION WEEK』のブログ『Ares』に投稿しているレーダーの専門家、Dave Fulghum氏ならその答えを知っているかもしれない。Fulghum氏は、イスラエルがネットワークをハッキングしたのだと言う。

以下にDave Fulghum氏の投稿「なぜシリアの防空システムはイスラエルの攻撃を探知できなかったのか」から引用する。

米国の航空産業界に属する者や退役した軍幹部たちによると、イスラエル軍は、航空ネットワーク攻撃システム『Suter』のような技術を使った模様だ。

Suterは英BAE Systems社が開発したもので、米L-3 Communications社によって米国の無人航空機に組み込まれているシステムだ。

このシステムは、過去1年の間にイラクやアフガニスタンでの作戦で実際に利用されたか、少なくとも試用されている。

この技術を使えば、敵国の通信ネットワークに侵入して敵軍のセンサーが見ているものを見ることができるほか、システム管理者を偽装してシステムを乗っ取り、センサーを操作して、接近する航空機の姿を見られないようにすることができるという。

敵側の送信機の位置を正確に突き止め、偽ターゲットや、虚偽のメッセージ・アルゴリズムをシステムに流し込んで、システム制御をはじめとするさまざまな活動を可能にすることも可能だ。

これが納得のいく最終説明になるかどうかはわからないが、Fulghum氏が上記ブログのなかで指摘しているように、今ごろはロシアのレーダー技術者が束になって、空爆成功の謎を解こうとしていることだろう。

イスラエルで続く謎の電波障害――シリア空爆時の電子戦の余波?

イスラエルでは現在、大勢のテレビ視聴者が衛星放送を受信できなくなっている。『Flight International』によると、軍事活動による何らかの妨害電波が原因と思われるという。

イスラエルの衛星放送局Yes社は、イスラエルのSpacecom社が運営している通信衛星『Amos1』と『Amos2』を利用しているが、Spacecom社によれば、両衛星とも問題なく動いているという。(略)

電波障害の原因については、イスラエル政府も、Yes社と同様に手がかりをつかめていない様子だ。

電波障害は、イスラエルがシリアを9月6日(現地時間)に空爆したその直後に発生した。

米国とイギリスのメディアの報道によると、イスラエルによるシリア空爆は、イスラエルが電子戦用システムを使用して、シリアが配備している最新鋭のロシア製防空レーダー網の「目をくらました」結果、可能になったという。

一部の報道は、衛星放送の電波障害と、イスラエル軍によるシリア空爆を関連付けているが、電波障害が今も続いていることから、この説の信憑性は低い。

第2の説は、電波障害は地中海を航海中の各国の情報収集船が原因というものだが、イスラエル政府の問い合わせに対して、各国政府は自国の情報収集活動が電波障害の原因である可能性を否定している。

1ヵ月もたった10月9日にようやく、イスラエルの専門家は、電波障害の原因は「非常に強力な電源」だと発表した。イスラエルの通信大臣によると、通信省の専門家は「数日中に」電波障害の原因を突き止められると考えているという。

イスラエルがどうやってシリアの防空システムをかく乱したか(日本語版記事)には諸説があり、衛星放送の電波障害の謎は深まる一方だ。

米軍の天候制御技術:「敵国の経済を破壊する気象兵器」文書が明らかに

敵国の「経済を崩壊させる」ために、洪水や干ばつを人為的に発生させることを提案した米国海軍の研究プロジェクトが、最近明らかになった。

2008年1月に情報自由法を通じて公開された、米国海軍の空中戦兵器部門『China Lake』の研究提案書(PDFファイル)には、次のように書かれている。

「気象の調節は、かつてベトナムで、特に北ベトナムから南ベトナムへの人員や物資の移動を妨害する目的で利用され、成功を収めた。(しかし)それ以来、気象調節の軍事研究は、米国では先細りになっている」

この提案書は、「実行可能な最先端の気象調節能力を再び米軍にもたらす」ために、最新の気象調節技術の研究を求めている。この技術を手にすることで、米軍は以下のことが可能になるという。

大雨による洪水や雪嵐などにより、人員や物資の移送を妨害する、または不可能にする。

洪水や干ばつなどの結果として、経済を崩壊させる。

提案書には日付が記されていないが、明らかに冷戦期のものだ。「ソビエト連邦(ロシア)」という言及があるだけでなく、現在の水準と比較するとプロジェクト費用が低めで、2年間でわずか50万ドル以下なのだ。

前述したChina Lake(米国海軍の空中戦兵器部門)が自主発行している新聞の記事によると、「気象調節はChina Lakeが秀でている分野の1つ」だという。

China Lakeは1949年から1978年にかけて、気象調節の立案と技術やハードウェアの開発に取り組み、これらはハリケーンの軽減、霧の制御、干ばつの解消に用いられて成功を収めた。

初の軍事利用となった1967年の極秘の気象調節作戦『Operation Popeye』では、降雨量を増やしてホーチミンルートを断つのに役立てる目的で使われた。(China Lakeの天候制御システム『Cold Cloud Modification System』の写真はこちら)[リンク先の記事によると、Operation Popeyeは1967年3月から1972年7月まで行なわれた。モンスーン・シーズンを延長させることに成功し、1971年に北ベトナム国土の1割を覆うほどの被害を出した大洪水の原因となったという意見もある。]

1980年、米国は軍事目的の気象操作を禁止する条約を批准した。それでも時々、軍部からは気象操作を再開する提案が浮上してくる。

空軍が委託した1996年の調査(PDF)には、「われわれの構想では、軍は2025年までに、作戦能力の達成のため、中規模(200平方キロメートル未満)または微小規模(局所)で気象に影響を及ぼすことが可能になっている」と書かれている。

米国外に目を向けると、中国当局は現在、夏季オリンピックの期間中に北京に雨が降らないよう努力している(日本語版記事)。

イスラエルや米国、無人飛行機で個人をターゲット攻撃

イスラエルによる攻撃で再び戦闘状態に突入したパレスチナ自治区だが、「警戒感を高めるガザの武装勢力は、双眼鏡を用い、常に無人偵察機を見張っている」とAP通信が報じている。

『Glouchester Daily Times』紙に掲載されたAP通信の記事「パイロット不要の飛行機がイスラエルの主要兵器として登場」から引用する。

上空に無人偵察機を見つけると、武装勢力の兵士たちはトランシーバー経由で、携帯電話の電源を切ってバッテリーを外すようにと仲間たちに警告する。イスラエルのハイテク装備によって自分たちの居場所を突き止められるのを恐れてのことだ。

ガザ地区南部の出身でイスラム聖戦グループに属する兵士によると、無人偵察機が使われるのは、主に個人を標的にする場合で、建物は狙わないとのことだ。

無人偵察機はたいてい、有人飛行機よりもはるかに高い上空を旋回飛行する。発射されるミサイルは非常に破壊力が高いものが多く、着弾地点には深い溝ができるという。

無人偵察機が標的とするのはたいてい、歩いている人や、道にできた穴を避けるために減速している車などの低速で動く対象物だと、この兵士は語った。

「無人偵察機は上空に小さな円を描いて飛んでいるように見えるが、ミサイルを発射する直前になると減速する。他の飛行機とは全く違う。ミサイルが発射された跡も見えないし、音もほとんどしない」と兵士は述べた。

今回のインタビューは、イスラエルに身元を特定されないよう、匿名を条件に行なわれた。

米国でも同様の目的で同じ戦術を数多く採用している。聖戦を行なうテロリストと疑われる人物を密かに狙い撃ちすることを目的にしてパキスタンで飛行している無人偵察機『プレデター』もその一例だ[2年前にパキスタン国境近くで行なわれ、女性や子供たちが巻き込まれた爆撃が『プレデター』によるものだったという『New York Times』記事について紹介している]。

携帯電話の電源が入っていると位置が特定される、という話については、その真偽のほどは私にはよくわからない。携帯電話から人の居場所を追跡する技術は確かに存在するが、無人偵察機の多くは、可視光線や赤外線センサーといったもっと直接的な方法で標的を見つけている。

ただし、アフガニスタンのタリバンは、携帯電話が自分たちにとって危険だと確信している(英文記事)。

2008年9月18日木曜日

ロシアで株・債券取引停止、再開の時期は不明

9月18日13時47分配信 ロイター
 [モスクワ 17日 ロイター] 17日のロシア株式市場は売り注文が殺到し、主要証券取引所のMICEXとRTSは、取引開始後2時間ほどで株式と債券の売買を停止した。取引がいつ再開されるかは、依然不明だ。
 取引が停止された時点では、ドル建てのRTS指数は前営業日終値比72.280ポイント(6.39%)安の1058.840。5月につけた年初来高値の2498.100から約58%低い水準になる。
 ループル建てのMICEX指数は27.24ポイント(3.09%)安の853.93だった。
 ING銀行のロシア調査担当のスタニスラフ・ポノマレンコ氏は「今日の売りの殺到は、パニック的な要素も多分にうかがえる。取引の一時停止は、このパニック的な要素を取り除くことが目的だった」と述べた。
 ロシア株価はここ数カ月下げ続けており、5月以来の下げ幅は約60%に達している。市場関係者は、世界的な金融市場の混乱に原油価格の下落とグルジア紛争が重なり、ロシアの金融市場を襲っているとしている。
 金融市場の混乱を受け、ロシア政府は流動性拡大策を発表。またロシア中央銀行は、17日付で銀行の預金準備率を引き下げた。イグナチエフ中銀総裁は、この措置は、3000億ルーブル(117億6000万ドル)の流動性供給に相当する、としている。

日本の国際ルール交渉力

小生、CSRの文脈で「ルール」についてこれまで何度か書いてきました。

先月は将来の「ゲームのルール」を見通すことの重要性について卑見を述べました(「真夏の夜のまじめな話:CSRと貿易ルールと企業競争力」)。また、6月には、なぜヨーロッパが環境に関するルールで世界的覇権を握りつつあるのか、なぜ日本はほぼ常に追随者なのか、なんてことも取り上げました(「ローカルな環境ルールが世界を規律する時」、「ヨーロッパの環境規制が世界を支配したわけ」、「日本が環境グローバルスタンダードを握る日は終ぞこないであろう理由」)。

しかし、こうやって振り返ると話題の選定に私の職業的経験からくる偏向が見て取れますねぇ。ロビイストとしてヨーロッパの環境ルールづくりに参加し、東京に戻ってWTOルールを使って本邦初の相殺関税発動をやり、相手の韓国府に訴えられてWTOパネル(裁判)で争い、今はWTOのドーハラウンドでその名も「ルール交渉」をやりながら、同時にアメリカ政府をパネルに訴えている、という異端のキャリアパスからくるバイアスであります。

この一連のお仕事、個人的には気に入っているのですが、誰からも羨ましがられません(笑)。

ということで、小生、CSRを考えるときも「ルール」が、どうしても頭の中でサブカテゴリーの一つになっちゃいます。スミマセン、読者の皆様には諦観の念をもっておつきあいください。

今月22日の産経新聞に興味を引く記事がありました。冒頭部分を抜粋します。
「総務省と経済産業省は今秋から、日本のIT技術の国際標準化を促進するため、国際機関での交渉技術や企業の戦略手法などを学べる専門コースを国内の大学院に提供する。日本は欧米や他のアジア各国と比べ、国際機関で交渉できる専門家が不足していると指摘されている。日本の得意技術が国際標準に認定されれば、日本企業は海外での事業展開が有利になる。政府は大学院での実戦教育により、若い専門家の育成につなげたい考えだ。」 

国際ルールには様々なものがあります。WTOの通商ルールは政府間交渉ですので、実際の交渉現場には役人しか入れません。他方、IT分野の標準は民間の産業間の交渉で、企業人の間で交渉されます。

ただ、このような、プレイヤーについての政府と民間の二分法はある意味表面的かもしれません。通商交渉についても、交渉の席につくのは各国の行政官ですが、その背後には民間の企業や弁護士の専門家がひかえていて、政府代表団に知恵を授け、また影響を行使します。

民間の標準交渉についても、各国の産業界が自国の政府と協力しながら進めることは特段珍しいことではありません。SR(社会的責任)に関するISO規格であるISO26000の交渉もその一つかもしれません。

国際的ルールづくりを背負うのは誰か? 官か民かという二分法ではなく、「プロ(専門家)」だと思うのです。「プロ」が政府にいることもあれば、民間にいることもある。むしろ、理想的にはあらゆる事項について、「プロ」が民間にも政府にもいることが、その国の交渉力を支えると思います。

国際ルールの交渉力を強めるとは、とりもなおさず、自国に強い専門家集団を持つことであります。

このような「プロ」を養成し、抱えておくことの企業にとっての重要性、この点に関する認識は、私の限られた経験に照らせば、欧米企業と日本企業とで随分ちがいます。さらに言えば、そのようなプロの待遇もちがう。全然ちがいます。どちらがどうか、申し上げるまでもないと思います。

彼我の差は、ビジネスにおける「ルール」の持つ意味の評価のちがいからくるものです。将来のルールを考えることへのコミットメントの強さ、欧米企業で強く、日本企業は弱い。この強弱はCSRに対する欧米企業と日本企業の関心の差を一部説明するものでもあると思います。

「ルール」は、本質的に公共財の性格を持ちます。「ただ乗り」しようとすればできる。他方、ルールづくりに参加することによって費用を上回る便益を得ることもできる。

公共的な貢献と自己利益(self-interest)の計算の両立という点でも、ルールづくりはCSRにとても似ていると思うのです。かつて、小生、CSRは「企業の公共政策」だと申し上げました(「『企業の公共政策』としてのCSR」 2007年12月24日)。ルールづくりも、企業の公共政策の一つであり、かつ、将来の競争力を左右するものでもあると思うのです。

より多くの企業の方、とりわけ若い方が国際交渉の分野に関心をもってくれることを願っています。

スパイ業界で増える「契約社員」:連邦政府職員よりも高給取り

外部の請負業者を雇うことで、政府の支出は減らせるはずだった。だが、米国の各情報機関が構成するインテリジェンス・コミュニティーにおいては、これが実際には節約になっていないことが判明した。

米国家情報長官局(ODNI)によると、平均で比較した場合、諜報機関と請負契約を結んだ「雇われスパイ」は、連邦政府職員よりも65%高い報酬をもらっているという。連邦政府職員の平均給与が12万5000ドルであるのに対して、雇われスパイの報酬は平均20万7000ドルだった。

雇われスパイに払う報酬は、米国のスパイ活動予算にかなり大きな影響を与えている。目一杯控えめに見積もっても、これら2万7000人の請負契約者が諜報活動要員に占める割合は4分の1を超えているからだ。

こうした請負契約者たちは、どういう種類の仕事をしているのだろうか? ODNIで人的資源を担当するRonald Sanders副長官は、『Defense News』の記事の中で、その役割分担を以下のように概説している。

請負業者の約27%は情報収集および作戦のサポート、22%はIT業務、19%はデータ分析のサポート、19%は管理業務、4%は研究開発活動を行なっている、とSanders副長官は語る。残り9%の請負業者が行なっている業務は明らかにされなかった。

『Federal Computer Week』によると、情報機関側は、請負契約者の大多数は「独自の専門知識や技術」を評価されて雇われたと主張しているという。だが、この説明は信用できない。ODNIが以前に発表した報告には、「請負業者は、公費ですでに身上調査と訓練が行なわれた職員を引き抜き、政府職員だった時の給与よりもかなり高い報酬で元職員を『貸し出し』ている」という指摘があるからだ。

1990年の「政府改革」時の予算削減によって、情報機関は骨抜きにされた、とSanders副長官は述べている。その後、2001年9月11日に同時多発テロ事件が発生し、急いでスパイを養成する必要が生じた。

「スパイ衛星やコンピュータ機器を製造する企業に勤務する人たちや、カフェテリアの従業員、警備員」などを計算に含めれば、情報機関のために働く人員の「約70%を(外部の)請負業者が占めることになる」と『Los Angeles Times』紙は指摘している。

それにもかかわらず、「使命を果たすために、請負業者に頼り過ぎてはいない、とわれわれは確信している――繰り返すが、そう確信しているのだ」とSanders副長官はFederal Computer Weekに語っている。

[なお、過去記事「米国で活動するスパイの実態調査:無給、逮捕率も上昇」では、米国人が、米国にとって不利になるようなスパイ活動をした件についての調査結果を紹介している]

海賊・誘拐がソマリアの主要産業に:今年の「儲け」はすでに30億円

BBCの報道によると、フランス軍がソマリア沖の海賊を急襲し、誘拐された2人のフランス人を救出するという事件が9月15日(現地時間)にあった。海賊のうち1人は死亡し、6人が逮捕された。

フランス軍がソマリア海賊から自国民を救出したのは、ここ5カ月で2度目になる。4月の救出では、戦艦やヘリコプター、スナイパーなどが動員され、数人の海賊をフランス法廷に送ることに成功した。

ソマリアの海賊事件は今年着実に増加しており、陸上でも誘拐事件が頻発している。

ソマリアの首都モガディシュでは8月下旬、外国人ジャーナリスト2人と交渉役のソマリア人1人が誘拐された。それから2週間後、誘拐犯たちはついに身代金額を提示した。ジャーナリストを安全に解放する見返りとして300万ドル[約3億円]を要求したのだ。

陸と海に出没するソマリアの武装集団は、外国の企業や家族が支払う身代金によって、1ヵ月あたり数百万ドルを首尾よく獲得しているわけだ。

現在のところ海賊たちは、ソマリア北東部の漁村エイルの南に位置する港に、11隻の船を保有している。彼らによる大型船の乗っ取りは今年に入って急増し、1回で平均100万ドルの身代金をもたらした。

ワイアードのブログ『Danger Room』に寄稿している海軍アナリスト、Galrahn氏は、この問題はさらに悪化すると予測している。その根拠として、同氏は具体的な計算を示して、海賊行為や誘拐がソマリア人たちにとって比較的収益性の高い「産業」になっていることを説明した。

Galrahn氏のブログによると、エイルの村では、「元々地場産業だった漁業が、海賊行為に取って代わられた」という。「[今年に入ってから]現在までに乗っ取られた30隻以上の船舶は、数字の上では地域経済に3000万ドルをもたらしたことになる。これに対し、現在のソマリア全体の水産業は約150万ドルの規模と見積もられている」

この件について、先進諸国は何か手を打っているのだろうか? どうやら、大したことはしていないようだ。

交代制の国際海軍が商業船を守る任務についているものの、その数はまばらであり、また、主に国連の食糧援助船を守っている。商業船の乗組員たちは、機関銃やロケット弾で武装した海賊相手に、なんとか自衛しているのが実情だ。フランス軍は、海賊に積極的に対抗する勢力としては唯一といえる存在だが、いまのところ、エイルに接近しすぎることは避けている。

商業船にとって最善の防御策は、「回避航路」を取って海賊から逃れることか、逃げ切れなかった場合は、乗船しようとしてよじ登ってくる海賊たちを強力な放水砲で打ち落とすことだ。過去には、乗組員たちが「音響兵器」で攻撃して、海賊たちの接近を防いだ例もある(日本語版記事)。

[ソマリアでは、1991年以来、内戦状態が続いている。経済は崩壊状態で、大量の難民も発生している。

日本が関係したソマリア海賊事件では、2007年10月に日本の海運会社が運航するパナマ船籍のケミカル・タンカーが乗っ取られた事件と、2008年4月に日本郵船の大型原油タンカーがロケット弾によるものと思われる攻撃を受け被弾した事件がある。また、2005年3月には日本船籍のタグボートがマレーシア付近のマラッカ海峡で襲撃を受け、船長を含む3名が人質に取られた事件が発生した]

世界の石油供給、5大「急所」――「攻撃されれば国際経済が危機に」

ガソリンが1ガロン(約3.8リットル)4ドルに到達し、エネルギー価格は米国人最大の関心事となっている。しかし、世界にエネルギーを届けるパイプラインの急所が攻撃されれば、価格はさらに高騰するだろう――『New Scientist』誌はこのような警告を発している。

同誌は6月28日号で、世界の石油供給網の脆弱さを分析し、その上で、多くの国が石油に依存しているが、その石油は輸送と処理の数少ない拠点に依存している、という恐ろしい実態を指摘した。

「ほとんどの工業国は、最前線の防御策として非常用の備蓄を確保している。しかし、世界が恐慌状態に陥れば、石油を購入するだけでは不十分かもしれない」と、New Scientist誌の記事(全文を読むには登録が必要)でIan Sample氏は述べている。

「石油が底を突いた国は輸送が崩壊する。国際貿易はもちろん、国内の食品流通や緊急サービス、日々の商活動など、その国に必要なものまでが混乱をきたす。石油がなければ、すべてが動きを止めるのだ」

世界の石油供給網は驚くほど複雑だが、そのほとんどは数少ない要所(後半で紹介)を通過している。テロリストなどがそれらの地点で輸送や処理を停止させれば、原油価格は1バレル250ドルまで高騰する恐れがある。現在の1バレル143ドル[7月2日時点での原油先物価格]でさえ記録的な数字だ。

New Scientist誌の記事は、米国の国家安全保障に関するシミュレーションで使用される[石油危機]シナリオに基づいている。一連のシミュレーションが示唆しているのは、1つの供給網が崩壊したとの認識が広まるだけで石油価格が高騰し、破滅的な結果を招く恐れがあるということだ。

最新のシミュレーションは『Oil ShockWave』と呼ばれるもので、Robert Rubin元米財務長官の指揮で2007年11月に実施された。New Scientist誌によると、このシミュレーション(PDFファイル)の結果、「世界の石油供給の1.2%が途絶した場合、わずか4ヵ月で価格が75%(95ドルから165ドルに)上昇する」ことが判明したという。

現在の原油価格が143ドルであることを考えると、液体燃料の供給量がほんの少し減っただけで、価格は250ドルを突破する恐れがあるわけだ。

以下に、石油供給網の5つの要所を紹介する。いずれも、事故または故意の攻撃によって深刻な妨害を受けた場合、世界の供給システムの秩序が崩壊することになる。ほかにもそういう場所があれば、ぜひコメント欄で教えてほしい。

1. 加Enbridge社のパイプライン(地図)

この一連の原油パイプラインは、米国に1日220万バレルの原油を供給している。これは、米国が1日に輸入している原油の約5分の1に相当する。

2007年11月には、ミネソタ州で爆発事故が起きてパイプラインが閉鎖され、事実上、米国の原油輸入の5分の1が数日にわたって停止となった


2. アブカイクの処理施設(すぐ上の写真、地図)

サウジアラビアの同名の巨大油田の近くにあり、同国で生産される石油の3分の2がここで脱硫されている。

すでに2006年にはテロ未遂事件の標的となっている。フランス通信社(AFP)の最近の報道によると、サウジアラビア警察はこの半年間に、石油関連施設への攻撃を企てた容疑で700人を逮捕したという。

ほかにも、ベネズエラや韓国の製油所など、標的にされそうな処理施設や製油所は多数ある。しかし、アブカイクが攻撃されれば全世界が大きなダメージを被るだろう。

3. ラスタヌラ沖の石油ターミナル(地図[閲覧には『Google Earth』のインストールが必要]):

New Scientist誌の記事によると、世界で生産される石油の実に10%が、ペルシャ湾に浮かぶこの石油ターミナルを通過しているという。ターミナルを含むこの巨大施設を所有するのは、サウジアラビアのSaudi Aramco社だ。

4. ホルムズ海峡
5. マラッカ海峡

1日の世界総生産量のほぼ20%に当たる1600万バレルの石油が、ペルシャ湾とアラビア海を結ぶホルムズ海峡を通過している。ドバイ近くの、最も狭い地点は幅30キロメートル余りしかない。

スマトラ島とシンガポールを隔てるマラッカ海峡はさらに狭く、わずか幅3キロほどだ。それでも、そこを1日の世界総生産量の18%に当たる1500万バレルの石油が通過している。

New Scientist誌は、国際インフラの急所であるこれらの地点が攻撃される恐怖のシナリオを紹介している。

「考えられるシナリオの1つは、これら航路のいずれかを定期的に通る液化天然ガスのタンカーが乗っ取られ、爆発物を積んで別の石油タンカーに衝突させられるというものだ。このような海に浮かぶ爆弾によって油が燃え、流れ出せば、航路は数ヵ月にわたって通過できなくなる恐れがある。そうなると、ほかの航路を利用しても失われた供給量を埋め合わせるには至らないため、世界の経済は危機に陥る」

世界初、藻類原料のジェット燃料:「石油燃料と同等の性能」

カリフォルニア州の新興企業、米Solazyme社は、世界初の藻類由来のジェット燃料を開発し、独立した研究所によるテストで、石油を精製した燃料と同様の性能が明らかになったと発表した。

Solazyme社の発表では、サウスウェスト研究所の分析で、藻類から作ったこのジェット燃料は高高度でも凍結せず、濃度、安定性、引火点は従来のジェット燃料と同じだったという(バイオ燃料には、高高度で凍結するという問題がよく見られる)。

藻類から作ったこの燃料は、米材料試験協会(ASTM)が定めた航空燃料の最も厳しい基準である「D1655」11項目を満たした。これは、航空業界の厳しい要求を満たす代替燃料の実用化に向けた大きな一歩と言える。

「Solazyme社が開発した、藻類を原料とする航空燃料用ケロシンは、既存のエンジンやインフラと完全に適合する商用および軍用ジェット燃料の開発を成し遂げるために、越えなければならない最大のハードルを乗り越えた」と、同社は述べている。

だからといって、読者が次に乗る旅客機が、藻類から作られた燃料で空を飛ぶというわけではない。

Solazyme社は、3年以内に競争力のある価格で大量生産を開始したいと考えている。楽観的すぎるきらいもあるが、米Chevron社は、Solazyme社の試みに大いに感銘を受け、同社と提携している。

現在、大豆や家畜用飼料を原料とするバイオジェット燃料の実験を行なっている企業はいくつかあるが、Solazyme社では藻類を利用している。

日光の当たらない発酵タンク内に藻類を入れ、糖類を常時供給することによって培養する。同社は、これと同じ製造プロセスにより、従来のディーゼル燃料と同じ働きをする、藻類を原料とする自動車用バイオ燃料『Soladiesel』もすでに生産している。

藻類を原料とするジェット燃料の開発に取り組んでいる企業は、Solazyme社以外にもいくつかある。例えばシアトルの米Inventure Chemical社が現在、試験工場を建設中だ。また、アリゾナ州に本社を置く米PetroSun社は、テキサス州に所有する総面積約4.5平方キロメートルという海水の池の一部を、航空燃料開発用藻類の研究開発のための「農場」に利用している(日本語版記事)。[PetroSun社の他の農場では、藻油を抽出し、バイオディーゼル精製工場へ輸送。残さからもバイオエタノールなどを製造する]

原油価格高騰による財務状況の悪化を懸念する航空会社と航空機メーカーは、こうした新しい代替燃料を試すことに意欲を燃やしている。英Virgin Atlantic社は2008年2月にバイオ燃料によるテスト飛行を実施し、オランダのKLM Royal Dutch Airlines社、 米Continental Airline社、米JetBlue社、ニュージーランドのAir New Zealand社は、独自の試験飛行に関して米Boeing社や仏Airbus社と提携する計画を発表している。

一方、米国防総省の国防高等研究計画庁(DARPA)と米空軍も、石油に代わる代替燃料探しに強い関心を抱いている[過去記事「海藻からバイオ燃料を作る研究」では、DARPAからの助成金を受けているアリゾナ州立大学の研究について紹介している]。

Solazyme社のニュースは朗報だが、近い将来に、藻類を燃料とするジェット機に乗れると思ってはいけない。技術革新は行なわれているが、規模を拡大できる条件が整っていないからだ。

Solazyme社の最高経営責任者(CEO)であるJonathan Wolfson氏の話では、「設備があれば何百万ガロンという藻類バイオ燃料を生産することはできるが、設備投資にかかる費用は莫大だ」という。それに、藻類バイオ燃料はいまだに石油を精製した燃料よりもコストが高いという問題もある。

2008年9月15日月曜日

肥満遺伝子の影響、運動で帳消しと アーミッシュ研究

シカゴ(AP) 肥満になりやすい遺伝子を持っていても、1日3‐4時間の運動を続ければその影響は現れず、肥満を避けることができるとの研究結果を、米国の医学者らが発表した。伝統的な生活様式を守り続けるキリスト教プロテスタントの一派、アーミッシュの人々に注目して、遺伝子と体重の関係を調べたという。 


メリーランド大のソレン・スニトカー博士らが、内科専門誌「アーカイブズ・オブ・インターナル・メディシン」に報告した。専門家らによれば、欧州系白人の約30%が持つFTOと呼ばれる遺伝子の変異形は、肥満傾向に関係することが分かっている。同博士らは、ペンシルベニア州ランカスター郡のアーミッシュ居住地域で暮らす704人を対象に、血液検査でこのタイプの有無を調べ、影響を検証した。 


アーミッシュは18世紀から19世紀にかけて北米で暮らし始めたドイツ系移民で、現在も車や電化製品を使わず、当時の質素な生活を続けている。アーミッシュの社会では、多くの男性が農業や大工仕事、女性は家事や育児に、それぞれ1日の大半を費やしてきた。同博士らによる研究の対象者らは1週間、昼夜を問わず電池式モニターを装着し、こうした生活の中での運動量を記録した。その結果、1日に3‐4時間、掃除や庭仕事、早歩きなどの運動をしている人は、たとえ肥満を起こすとされるタイプのFTO遺伝子を持っていても、肥満傾向が増大しないことが分かったという。一方、運動量が最も少なく、平均的米国人並みだったグループは、運動を続けたグループに比べ、体重が平均7キロ近く多いとの結果が出た。 


スニトカー博士は「一般の人々にとって、肥満防止のために19世紀の生活様式に戻すというのは非現実的な発想だろう。しかし、夜テレビを見る代わりに散歩をしたり、エレベーターの代わりに階段を使ったり、車に乗る代わりに徒歩で出かけたりすることは、それほど難しくないはず」として、活動的な生活を呼び掛けている。

2008年9月13日土曜日

北朝鮮の金正日総書記、卒中の可能性=米情報筋

 [ワシントン 9日 ロイター] 北朝鮮の金正日総書記は、過去数週間の間に卒中を患った可能性がある。米国の情報当局者が9日、明らかにした。当局者は匿名を条件に「(総書記に)健康上の問題が起きたもようで、卒中を患った可能性がある」と語った。

 これまでのところ政権に変化の徴候はないが、総書記が引き続き統治可能かについては、憶測するしかないと述べた。

 北朝鮮は9日、建国60周年を記念して軍事パレードを実施したが、金総書記の姿は見られなかった。総書記は66才で、慢性疾患を抱えているとされる。朝鮮日報は、北京の韓国外交筋の話として、総書記が8月に倒れたと報じた。

 総書記が卒中を患った可能性があるとの報道について、米ホワイトハウスのペリノ報道官は「情報は何もない」と述べた。

2008年9月11日木曜日

「ケータイは喫煙より危険」? 豪脳外科医が「脳腫瘍リスク」警告

   日本ではすっかり下火になった感もある「ケータイの電磁波は危ない」という議論だが、海外では、その議論が再燃しつつある。オーストラリアの脳外科医が「ケータイは喫煙よりも危険」という主張したことを英高級紙が大きく取り上げ、CNNの老舗討論番組も、この問題を取り上げた。

「ある種の脳腫瘍との関係を示す証拠は多い」

   日本国内の状況を見ると、ここ2年ほどの雑誌の見出しを検索してみても、ケータイと電磁波との関係を扱った記事は、せいぜい10件。国内ではすっかり話題にならなくなってしまったことがうかがえる。

   ところが、海外では様相が異なるようなのだ。

   例えば2008年に入ってから、フランス政府が、特に児童の携帯電話の使用について警告したとされるほか、ドイツも、出来るだけ受話器を使って通話しないように呼びかけているという。また、米科学アカデミーも、PCやケータイが発信する電磁波が及ぼす影響を研究する必要性を訴える報告書をまとめている。

   08年3月になって、さらに刺激的な記事が英高級紙の「インディペンデント」に掲載された。「ケータイは喫煙よりも危険だ」と題した記事で、オーストラリアで神経外科医をしているヴィニ・クラナ博士の主張を紹介したものだ。クラナ博士は、ここ16年で14の賞を受賞している。記事では、

「ケータイの使用と、ある種の脳腫瘍との関係を示す証拠の量は多く、増え続けている。このことは、この次の10年で、確実に証明されることだろう」

とした上で、

「この危険は、アスベストや喫煙よりも広範囲に、国民の健康に対して悪影響をあたえるものと懸念される」

と予測。

「今すぐに抜本的な対策を打たないと、脳腫瘍の患者数が10年間で世界的に増加するだろう。だが、そのときには手遅れになっているだろう」

と訴えている。

出来るだけ離して通話するのが良い

   これに対して、英国の業界団体は

「(クラナ博士の主張は)一個人による、論文にすぎない。バランスのとれた分析が示されていない。論文では、WHOや、他の30以上の論文と、全く反対の結論が示されている」

などとして反発している。

   この問題は、CNNの老舗トークライブ「ラリー・キング・ライブ」でも08年5月と7月の2度にわたって取り上げられ、クラナ博士も出演。ケータイが脳に影響を及ぼす懸念について発言した。

   番組には、「電磁波と脳腫瘍との間には因果関係は確認できない」とする専門家も出演。賛否両論を戦わせた。ただし、番組中に出演した複数の専門家は、「(直接ケータイ端末を耳につけるのではなく)イヤホンマイクを使うのが望ましい」という立場では一致をしており、「自分の頭部とケータイのアンテナは、出来るだけ離して通話するのが良い」ということだけは間違いなさそうだ。

「イヌとネコは仲良く暮らせる」 人間も見習うべき?-イスラエル研究

2008年9月10日水曜日

OPEC総会、イランは減産主張へ

【9月9日 AFP】石油輸出国機構(Organization of Petroleum Exporting Countries、OPEC)は9日、オーストリア・ウィーン(Vienna)で総会を開催する。原油価格を維持するためにOPECは減産に踏み切るとの見方が強まるなか、イランのゴラムホセイン・ノーザリ(Gholamhossein Nozari)石油相は8日、総会で減産を求める意向を示した。

 原油価格は、7月に記録した史上最高値の1バレル=147ドルから急落し、現在は同107ドル前後で推移している。今回の総会は、OPECが維持したい価格水準と原油市場に与える影響力とを判断する試金石と見なされている。

 OPEC加盟国は、12月の会合で合意される可能性が高い、公式の生産目標の変更を待たずに、非公式の減産で合意するのではないかとの見方が強い。減産は、主に盟主サウジアラビアの役割が大きい。サウジアラビアは、OPECの割当量を超えて過剰生産している分の減産には同意している。

 現在のOPECの原油生産量は、従来の割当生産量である1日あたり2967万バレルから、最大で100万バレル以上の過剰生産となっているとみられている。サウジアラビアは、米国からの強い圧力を受け、原油価格の高騰を緩和するための増産に合意しており、過剰生産分のほとんどはサウジアラビアが担っているとされている。(c)AFP/Adam Plowright

2008年9月8日月曜日

来年元旦、日本大使館を開設=グルジアで外交活動本格化へ

9月8日2時33分配信 時事通信
 【トビリシ7日時事】ロシアとの軍事衝突を受けた混乱にもかかわらず、日本政府がグルジアの首都トビリシに来年1月1日付で予定通り大使館を新設する方針であることが7日、分かった。外交筋が時事通信に明らかにした。グルジア紛争をめぐり米ロ関係が緊張する中、日本も現地での外交活動を本格化させる。
 日本はグルジアに大使館を置かず、隣国アゼルバイジャンにある大使館でグルジア関係業務を担当してきた。主要8カ国(G8)でグルジアに大使館がないのは、日本とカナダだけだった。 

2008年9月7日日曜日

米住宅金融に公的資金投入か、米紙報道

【9月6日 AFP】米各紙は5日、米政府が、経営難に陥っている米連邦住宅抵当公庫(ファニーメイ、Fannie Mae)および米連邦住宅貸付抵当公社(フレディマック、Freddie Mac)を厳しい公的管理下に置き、2社の経営陣を退任させた上で、救済のために公的資金を注入する計画を進めていると、ウェブサイトなどで報じた。

 ファニーメイとフレディマックは、米議会の設立許可を受け株式が上場される政府系住宅金融機関で、住宅市場に流動性を提供する。過去1年の金融危機で業績を悪化させ、住宅ローンの債務不履行による損失拡大への不安から株価は1年間で約9割も下落した。

 2社の経営悪化が、既にぜい弱となっている世界の金融システムへの大打撃となるとの見方もあり、米国では7月、これを回避し2社を救済する目的で、2社の株式購入や流動性供給のための公的資金注入を可能にする法案が成立した。

 米ニューヨークタイムズ(New York Times)紙は、ジョージ・W・ ブッシュ(George W. Bush)政権幹部や米連邦準備制度理事会(US Federal Reserve、FRB)高官が5日、ファニーメイとフレディマックの経営陣を呼びこの計画を説明したと報じた。同紙は、政府による救済に必要な金額を現時点では計算不可能ではあるものの、2社の潜在的な債務は膨大であり、米国民に数百億ドル(数兆円)の負担を強いるおそれもあると伝えた。(c)AFP

2008年9月5日金曜日

中国、資源節約推進へ新法

 【北京=多部田俊輔】中国の国会にあたる全国人民代表大会常務委員会は29日、循環経済促進法を採択した。廃棄物のリサイクルよりも資源節約や廃棄物削減を優先する内容。鉄鋼や非鉄、化学などの効率的な工場運営に向け、企業や地方政府の管理を強化する。

 2009年1月に施行する。地方政府が経済計画を策定する場合、資源の効率利用の数値目標や汚染物質の排出量の総量規制を設けることを義務づけた。企業が工場を新設する際、地方政府の要求に応じる必要がある。

 企業責任も広げた。メーカーは従来の品質責任に加え、製品廃棄後の回収や処理にも責任を負う。ただ、細則が出ていないため、家電メーカーなどに実際どの程度の負担が生じるのか不透明だ。

2008年9月4日木曜日

パラグアイが台湾の国連加盟不支持を表明

 【サンパウロ3日綾村悟】南米パラグアイからの報道によると、同国のルゴ大統領は先月31日、次回の国連総会で台湾の国連加盟を支持しない方針を明らかにした。ルゴ大統領は、今年4月の同国大統領選挙で当選した後、中国との関係を重視することを言明していた。AP通信が報じた。

 パラグアイは南米で唯一台湾と外交関係を持ち、1957年から一貫して国連では台湾の加盟を支持し続けてきた。

 しかし、南米有数の大豆生産・輸出国に一つでもあり、パラグアイに対して、南米地域で大量の大豆を買い付けている中国が経済交流拡大を求めていた。

 先月15日に就任した中道左派のルゴ大統領は、大統領就任式典に合わせてパラグアイの首都アスンシオンを訪問していた台湾の馬英九総統と先月14日に会談、外交関係の維持に合意したばかり。馬総統はパラグアイ政府に対して経済援助の増額を提案していた。

 台湾は近年、中国の激しい外交攻勢の中で正式な外交関係を保つ国を失っている(現在23カ国)。パラグアイは中南米・カリブ海諸国の中で数少ない台湾と外交関係を継続している国の一つ。


2008/9/3 21:04

夫婦間のもめ事は男性の遺伝子変化が原因?研究成果

【9月3日 AFP】夫婦間のもめ事の原因は男性の遺伝子にあるのではないか――。世の女性たちが常に抱えてきた疑惑を証明する研究結果がスウェーデンの研究チームによって発表された。

 スウェーデン・ストックホルム(Stockholm)のカロリンスカ研究所(Karolinska Institute)の研究チームが、2日の米科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences、PNAS)に発表した論文によると、男性にみられるある遺伝子変化が、妻や恋人との関係の親密さの度合いに影響を与えることが分かったという。

 チームは、スウェーデン人男性の約4割にみられる「allele 334」と呼ばれる遺伝子変化と男女関係に問題が生じることの関連を国内の双子550組とそのパートナーや配偶者を対象に調査した。この結果、男女関係において、その遺伝的変異の複製を1つないし2つ持っている男性は、持っていない男性とは異なる行動をとることが多いことが分かった。

 統計的にみて「allele 334」はパートナーとの結びつきの感じ方に影響を与えており、その遺伝子の複製を2つ持つ男性が過去1年間に妻や恋人ともめ事を起こした割合は、持たない男性の約2倍に上ったという。

 研究チームの1人、Hasse Walum氏は声明で、「男女間でもめ事が起こる原因はもちろん多数あるが、男性のパートナーとの接し方に特定の遺伝子変化が関連付けられたのは初めて」と明らかにした。

 この遺伝子変化の有無の違いは女性側も感じ取っているようで、Walum氏によると、この遺伝子を持つ男性と結婚した女性は、持たない男性と結婚した女性と比較して、男性との関係に満足していないという。

 ただし、遺伝子変化の影響はそれほど強いものではなく、将来の関係における行動を正確に予測することはできないという。

 同研究所のMartin Ingvar教授(神経生理学)は調査結果を「非常に興味深い」とし、「今回の研究結果は、われわれのすべての行動が本能と学習の両面に影響されるという事実を初めて証明した。結婚などの複雑な文化的・社会的現象でさえ、個人の遺伝子の影響を受ける」と述べた。

 問題の遺伝子変化は、大半のほ乳類に見られるバソプレシンと呼ばれるホルモンの分子受容体の生成をコントロールするもので、この同じ遺伝子が雄の野ねずみの一雄一雌行動と関係していることは以前から判明していた。

 カロリンスカ研究所のチームは、人間関係におけるバソプレシンの影響をさらに詳しく調べれば、自閉症などの病気の原因解明に役立つ可能性もあるとして期待している。(c)AFP

2008年9月3日水曜日

北朝鮮、核施設の復旧作業を開始

【9月3日 AFP】北朝鮮は、米国によるテロ支援国家指定解除の先送りを受け、主要核施設の復旧作業を開始した。共同通信(Kyodo News)や米フォックス・ニュース(Fox News)が3日、伝えた。

 北朝鮮は前年11月、6か国協議の合意に基づき、米国の監視下で、平壌(Pyongyang)の北90キロの距離にある寧辺(ニョンビョン、Yongbyon)の原子炉を含む核関連施設の無力化を開始していた。

 共同通信は、在北京の外交官筋の話として、北朝鮮は2日から復旧作業を開始したと伝えた。

 北朝鮮側は、コメントを拒否している。(c)AFP

北朝鮮、韓国軍関係者にスパイウエア付きメールを送信

【9月3日 AFP】韓国の国防当局は2日、北朝鮮がスパイウエアを使って韓国軍関係者のコンピューターにハッキングを試みていたと発表した。韓国では1週間前、脱北者を装った北朝鮮の女性スパイが逮捕されたばかり。

 韓国国防省の報道官によると、「多数の」韓国軍関係者にハッキングプログラムが仕掛けられた電子メールが送られてきたという。その電子メールは、受信者が開くとコンピューター内のファイルなどを自動的に盗み出すようになっていた。報道官は、電子メールを受けとった具体的な人数については言及を避けた。

 こうした電子メールは6月ごろから届きはじめ、受信者には大佐も含まれていた。国防省は、軍事機密の漏えいはないとしている。

 国防省は、前週逮捕された女性スパイが中国で、韓国軍関係者の名刺100枚を北朝鮮のエージェントに渡していたとの疑惑を調査中だが、この中に電子メールを受け取った大佐が含まれているかについては明らかにされていない。

 朝鮮日報(Chosun Ilbo)紙は、大佐に届いた電子メールは中国から発信されていたと報じている。(c)AFP

2008年9月1日月曜日

中央アジア諸国と中国、グルジア問題でロシアを支持 SCO首脳会議

【8月28日 AFP】タジキスタンの首都ドゥシャンベ(Dushanbe)で開かれた上海協力機構(Shanghai Cooperation Organisation、SCO)首脳会議は28日、グルジア問題の解決にむけたロシアの「積極的な役割」を支持する内容の声明を採択した。

 SCOは、中央アジア地域での北大西洋条約機構(NATO)の影響力に対抗する目的で、中国の主導で2001年に設立された。加盟国は中国とロシアのほか、カザフスタン、キルギス、タジキスタン、ウズベキスタンの6か国。

 首脳会議に先立ち、欧州連合(EU)は、グルジア情勢をめぐりロシアへの制裁も辞さないと発表していたが、ロシアのドミトリー・メドベージェフ(Dmitry Medvedev)大統領は、「黒い物を白と言って軍事侵攻の正当化を図っている者たちへの重大なメッセージとなるだろう」と述べ、SCO加盟国の団結が国際的な影響力を持つことに期待を示した。(c)AFP/Alexander Osipovich