2008年8月31日日曜日

日米欧、ドル防衛で秘密合意 3月の金融危機時

 米国の信用力の低い個人向け住宅融資(サブプライムローン)問題をきっかけにした米金融不安でドルが急落した今年3月、米国、欧州、日本の通貨当局がドル買い協調介入を柱とするドル防衛策で秘密合意していたことが明らかになった。ドル暴落で世界経済に大きな混乱が広がるのを回避するためで、為替市場の安定に向けた緊急共同声明も検討された。米ブッシュ政権はかねて介入に慎重姿勢を貫いてきたが、深刻なドル離れで方針転換を余儀なくされた格好だ。米国主導のドル防衛策は過去にほとんど例がない。米住宅公社の経営問題などでドル不安はなおくすぶっており、各国当局が再び連携を探る可能性がある。

 複数の国際金融筋によると、各国当局がドル防衛策の詰めの作業に入ったのは、米証券大手ベアー・スターンズの経営危機が表面化した3月中旬。金融システムの動揺が収まらず、世界的なドル安、株安に歯止めがきかなくなっていた。

ロシアが欧州向け石油供給削減も、ルクオイル幹部に準備指示=英紙

 [シンガポール 29日 ロイター] 英デーリー・テレグラフ紙は29日、ロシア政府が、国内石油会社の少なくとも1社に対し、グルジア問題で制裁を検討している欧州向けの供給を削減することを想定した態勢をとるよう通告した、と伝えた。

 同紙は、「ハイレベルの業界筋」とする匿名の情報筋の話を引用し、ポーランド、ドイツに石油を供給するドルツバ・パイプラインを通じた送油が削減される可能性に関する「情報が流れ始めた」とし、少なくともロシア最大の石油会社ルクオイル(LKOH.MM: 株価, 企業情報, レポート)の幹部は政府の通告を受けている、と伝えた。

 この情報筋は、ロシア政府が企業幹部に「早ければ9月1日にも供給を削減する準備をするよう通知した」と述べたという。

 デーリー・テレグラフ紙によると、モスクワのルクオイル幹部は、供給を削減する計画は知らないとコメント。ロシア政府はコメントを差し控えた。

原油価格、60─80ドルに下落する可能性=UAE中銀総裁

 [ドバイ 28日 ロイター] アラブ首長国連邦(UAE)中央銀行のスウェイディ総裁は28日、原油価格は現在の1バレル=119ドル強から、同60─80ドルまで下落する可能性がある、との見解を示した。

 公開イベントで、日本の当局者に語った。

 しかし同総裁は、価格の下落に関する時間的な見解は示さず、原油価格を予想することは「困難で危険だ」と述べた。

米国、2011年末までの米軍撤退で合意=イラク首相

 [バグダッド 25日 ロイター] イラクのマリキ首相は25日、2011年末までに同国から米軍が撤退することで米国と合意したと述べた。だが米国は、最終合意には至っていないとしている。

 首相は、部族指導者らに対し「両国間で、2011年末までにイラク国内からすべての外国部隊を撤退させることで、合意が成立した。国際部隊の駐留を含む安全保障協定で、期限を設定しないということは容認できない」と述べた。

 イラク当局者らはこれまで、来年半ばまでに米軍によるイラク都市部や村落の巡回を終了し、2011年までに戦闘部隊が撤退するよう望むと表明。しかし米国は、全軍撤退の期日指定に難色を示した。

 イラク政府は、特に今年同国主導で行ったシーア派民兵掃討作戦が成功して以来、米軍撤退の期日設定を一段と強く求めている。現在イラクに駐留している米軍は、約14万4000人。

 ライス米国務長官は、先週バグダッドを訪問した際、合意は近づいているがまだ最終段階ではないと述べた。

2008年8月30日土曜日

米国、ロシアとの原子力協定破棄を検討 グルジア侵攻で

ワシントン――ロシア軍によるグルジア侵攻に関連し、米ホワイトハウスのペリーノ大統領報道官は28日、ロシアとの間で今年5月に調印した原子力協力協定の破棄を米政府が検討していることを明らかにした。 


同協定は現在、米連邦議会の承認待ちだが、議会内にはグルジア情勢を受け、反対論も高まっている。協定で両国は、核燃料サイクルを保持しない国への発電用核燃料の供給事業などを想定していた。 


侵攻を受け、米政府は既にロシアとの軍事協力を凍結。協定が実際に破棄されれば、これに次ぐ対抗措置となる。欧州連合(EU)はロシアに対する制裁も検討としているが、ペリーノ報道官は米国の追随については結論を避けた。時期尚早としている。 


米国は、世界貿易機関(WTO)へのロシア加盟支持の見直しなども検討しているとされる。

ロシアが大陸間弾道ミサイルの発射実験、MD突破可能と

モスクワ――ロシア軍報道官は28日、同国北部のプレセツク宇宙基地で大陸間弾道ミサイル「トーポリ」の発射実験を実施し、カムチャツカ半島の標的に命中させる成功を収めたと述べた。地元メディアが報じた。同ミサイルにはミサイル防衛(MD)システムによる探知を避ける能力があるとしている。 


米国が東欧で推進し、ポーランドが先にミサイル配備に合意したミサイル防衛システムを意識した実験とみられる。ロシアは自国の防衛力への脅威として同システムに激しく反発していた。 


ロシアはポーランドが配備に踏み切った場合、報復措置を示唆していた。ロシア軍報道官は今年末まで類似の発射実験を繰り返すとも言明した。 


トーポリの射程は最大で約1万キロ。

2008年8月27日水曜日

イランの核情報提供など、CIAがスイス人技術者雇用 米紙

【8月26日 AFP】米中央情報局(Central Intelligence Agency、CIA)が、リビアやイランの核計画や、パキスタンの「核開発の父」アブドゥル・カディル・カーン(Abdul Qadeer Khan)博士の「核の闇市場」解体のため、スイス人の技術者一家をスパイとして雇用していた事実が明らかになった。ニューヨーク・タイムズ(New York Times)が24日、電子版で報じた。

 これによると、CIAはスイス人の真空管技術専門家、フリードリヒ・ティネル(Friedrich Tinner)氏とその息子2人に、4年間にわたって計1000万ドル(約11億円)を支払っていた。報酬の一部は、スーツケースに詰めて運ばれていたという。

 見返りとしてティネル氏らは、イランの核計画やリビアの核兵器開発阻止、またカーン博士の「核の闇市場」解体につながる極秘情報をCIAに提供していた。

 ニューヨーク・タイムズによると、ティネル氏らはこのほかにも、CIAによるリビアやイラン向け核関連機器の破壊工作でも中心的役割を担っていたとされる。

 ティネル氏とウルス・ティネル(Urs Tinner)氏ら息子2人は、イランやリビアへの核関連機器・技術を提供した疑いでスイス当局に告発されているが、スイス政府筋によると、関連書類が破棄されており、捜査は進展していないという。スイス当局は、書類の破棄は核関連情報がテロ組織の手に渡ることを懸念したためとしているが、ニューヨーク・タイムズ紙は、ティネル氏らとの関わりが発覚することを恐れたCIAから圧力があったと指摘している。

 ティネル氏は1970年代半ばから核遠心分離機の開発などでカーン博士への協力を続けてきた。しかし、2000年にCIAに雇用された息子のウルス氏が、ティネル氏と弟を説得。2人もCIAに協力するようになったという。(c)AFP

2008年8月25日月曜日

バイオ燃料や食糧の需要増が世界の水資源を圧迫、降水の有効利用が急務

【8月24日 AFP】世界人口の増加による食糧需要の急拡大やバイオマス燃料の利用拡大の結果、水資源に深刻な負担がかかっていると、ストックホルム水協会(Stockholm International Water Institute、SIWI)の科学プログラムのジャン・ランドクウィスト主任が警告した。

 スウェーデンのストックホルム(Stockholm)で前週に世界水週間(World Water Week)を開催したSIWIによると、世界の食糧需要は、2050年までに現在の約2倍に拡大する。また、地球温暖化や石油資源の枯渇によって、世界各国はCO2などの温室効果ガスを排出する化石燃料の代わりにバイオエタノールなどの代替エネルギーを生産する土地を確保する必要に迫られている。

 しかし、これら2つの世界的なすう勢は、「水資源には限界があるという地球の現実」と衝突する危険性があるという。ランドクウィストSIWI主任によると、現在、全人類が農業や都市部の上下水道、エネルギー生産を含め1年間に使う水の量は合計で4500立方キロに上っている。

 SIWIプロジェクトディレクターのヤコブ・グラニット氏は、2030年までに、現在、化石燃料が生産しているのと同量のエネルギーをバイオ燃料で生産できるようにする必要があることが、最近の研究で示されたと話す。しかし同氏によると水資源の利用効率を大幅に向上させない限り、2050年までに食糧需要が満たせなくなると予測されている。しかもバイオ燃料生産のための水資源はさらに別に必要だという。

 ランドクウィスト主任は河川や湖、地下水に大きな負担をかけるかんがい農業から、降水を有効利用する農業への転換が急務であり、「雨を各地のダム施設や土壌水分として蓄えることができれば、アフリカの大部分の地域で、食糧の大幅増産が可能だ」と述べた。(c)AFP

ボリビア大統領、ガス・石油施設に軍を配備へ 地元住民らは反発

【8月24日 AFP】南米ボリビアのエボ・モラレス(Evo Morales)大統領は23日、国内のガスと石油施設すべてに軍隊を配備し、これらを保護下に置く方針を打ち出した。同国では政府が進める資源国有化と社会主義改革に対し、資源が豊富な3県などで国民が反発を強めている。

 中部コチャバンバ(Cochabamba)で開かれた政府支持の労働組合の集会で演説したモラレス大統領は、「政府が(石油)パイプラインと(ガス)弁を守る」との決意を表明した。

 これに対し、サンタクルス(Santa Cruz)、タリハ(Tarija)、チュキサカ(Chuquisaca)の資源が豊富な東部3県では、不服とする住民らが25日から主要道路を封鎖する計画を進めている。

 3県の住民らは、ガス田の収益に税を課すモラレス大統領の政策に反発。地方政府は政府に対し、すでに課税・徴収された1億6600万ドル(約180億円)の返還と、隣国アルゼンチンおよびブラジル向け輸出価格の引き上げを求めている。

 さらに住民らは、近く実施される憲法改正のための国民投票についても怒りを爆発させている。前年12月に議会で採択されたこの憲法改正案は、大統領の進める社会主義的政策と大統領権限を拡大させるものとなっている。(c)AFP

2008年8月24日日曜日

ウクライナ、ミサイル防衛で欧州と協力も

 【モスクワ=坂井光】ウクライナ外務省は16日、同国のミサイル防衛(MD)システムを欧州のシステムと統合する用意があるとの声明を発表した。グルジア紛争でロシアへの警戒感が強まるなか、軍事面でロシア離れを進める狙いとみられる。

 タス通信によると、声明では、レーダーの共同利用に関するロシアとの合意文書が今年無効になったことでウクライナは欧州諸国と積極的な協力関係を築くことが可能になったと指摘した。協力の対象として宇宙空間監視に関するシステムも可能性として挙げた。

チェプ油田、生産開始来春以降に インドネシア最大の拠点

 【ジャカルタ=代慶達也】インドネシア政府は、同国最大のチェプ油田での原油生産の開始時期が当初予定の今年12月から来年春以降にずれ込む見通しを明らかにした。建設資材の高騰で、生産施設の工事が遅れているため。同油田は原油純輸入国に転落したインドネシアにとって将来の輸出再開に道を開く戦略拠点だけに、支持率が低迷するユドヨノ政権にとってさらなる打撃となる可能性もある。

 チェプ油田はジャワ島中部にあり、米エクソンモービルと国営石油会社プルタミナが共同で開発中。生産量は日量18万バレルで国内全体の約2割を占める予定。しかし世界的な建設資材の高騰などで、プラント工事が予定より大幅に遅れ、政府は今年末の供用開始を断念。プルタミナによると「(生産開始は)早くても来年3月。さらに遅れる可能性もある」という。

専門家「欧米諸国はコソボのつけをグルジアで払うことに」

【8月22日 AFP】(23日一部修正)ロシアがグルジアの南オセチア(South Ossetia)自治州とアブハジア(Abkhazia)自治共和国の独立を承認する場合、おそらく欧米諸国が今年コソボの独立への動きを支持した事実が重要な論拠となるだろうと専門家は指摘する。

 ロシア軍がグルジアの首都トビリシ(Tbilisi)まで30キロに迫っても、欧米諸国はグルジアの主権と領土保全を再三にわたり擁護してきた。しかしロシア政府は、米国やフランスなど欧米諸国と同様に、在外自国民を保護しているのだと主張している。

 ロシアの政治指導者はコソボの例を取り上げる。コソボはロシアの同盟国セルビアから一方的に独立を宣言し、米国や欧州連合(EU)加盟国約20か国などはこれを承認した。ロシアのドミトリー・ロゴジン(Dmitry Rogozin)北大西洋条約機構(NATO)常駐代表は「コソボを承認することで、彼らはパンドラの箱を開けてしまった」と語る。

 欧米諸国はコソボと南オセチアを同列視することを強く否定している。ある英外交官は「コソボには国連(UN)が駐留していた。民族浄化の問題があり、交渉が行き詰まっていて交渉による解決のめどは立っていなかった。さまざまな要因が重なり合っている」と話す。

 しかしベルギーのCenter for Security and Defence StudiesのAlain De Neve氏は、欧米諸国が望まなくても、ロシアとグルジア両政府はコソボと南オセチアを関連付けたと指摘する。

「コソボ独立問題がなければ(グルジアの)話がこれほど早く展開することはなかっただろう。コソボの独立を承認しなかった国々は、それをきっかけにさまざまな地域で独立が宣言されることを何よりも恐れていた。しかしそれが、自国領土全体を掌握したいグルジアの介入を引き起こしたのだ」

 フランスのFrench Institute of International RelationsのThomas Gomart氏も、「ロシアの動きの背景には、コソボにおける欧米諸国の行動がある。欧米諸国は1999年、ロシア政府の反対にもかかわらず国連の承認なしに軍事介入し、今度は独立を承認した」と考えている。

 しかしGomart氏は、アブハジアと南オセチアの独立承認についてロシアは二の足を踏むだろうとみている。コソボの一方的な動きに反対したのと同様、ロシアはチェチェン(Chechen)共和国などロシア連邦内での独立の機運を促すことは避けたい。Gomart氏によるとロシアは「(南オセチアとアブハジアを)不明瞭な状態にしておき、いつでも好きなときに介入できるようにしておくこと」により関心があるという。

 Bruno Coppieters教授(政治学)は、グルジア問題はより大きな枠組みの中で解決されるべきだと考えている。「ロシアが(南オセチアとアブハジアを)承認しても、多くの国々が後に続くことは期待できない。欧米諸国もロシアに効果的な圧力を掛ける手段を持っていない」

 Coppieters教授は「紛争状態が再び凍結されるのが最も可能性の高いシナリオだ。長期的には国連安全保障理事会(UN Security Council)常任理事国の間で幅広い合意が必要となるだろう」と語った。(c)AFP

2008年8月22日金曜日

インド、食料品価格高騰がインフレの拍車に

2008/08/22 Friday 14:47:52 JST

〈ニューデリー〉インドでは野菜・豆類・牛乳といった食料品の価格高騰が原因で、8月第2週インフレ率が過去13年間で最も高い12.63%まで上昇した。

インド財務省は「2008会計年度の基本30品目の年間インフレ率は、19週間で5.7%から6.7%の幅で上昇率している」と発表した。また、穀類・豆類・食料油・生活必需品等の基本品目の価格は多少安定しているという。8月第1週のインフレ率は12.44%で、0.19%の上昇となった。2007年同時期は、4.24%であった。

インドの信用調査・格付け会社Crisil(Credit Rating and Information Services of India Ltd)のジョーシ主席研究員は、モンスーンの影響で食料品が高騰していると見ている。

ジョーシ主席研究員は「野菜と果物は、時期的なもので心配する必要がない。時期が過ぎればまた価格が安定する」、「8月第3週には価格がまた上昇する。インフレ率はもう13%を超えている」と語る。

日常品の価格は、茶が2%、牛乳1%、豆類1%、油1%、綿8%、ポリエステルが7%上昇している。一方、輸入食料油は6%、菜種油は2%安くなっているという。

台湾、中国機関投資家の銀行口座開設認可を検討=現地紙

 [台北 16日 ロイター] 16日付の経済日報によると、台湾は、中国本土の機関投資家への市場開放に向けた準備を進めるなか、こうした投資家に台湾での銀行口座開設を認めることを検討している。

 金融監督委員会が検討するこの計画は、今後見込まれる、適格国内機関投資家(QDII)の認定を受けた投資家による台湾市場への投資を補完することを目的としているという。

 経済日報は、こうした投資家の一部は、中国の厳しい規則に沿うため、口座が必要になる可能性があるとしている。

 本土の投資家はQDII制度のもと、運用資産の3%を上限として台湾株式市場への投資が認められる。投資総額は11億2500万米ドルが上限となる。

米軍がイラクに投入する新たな非殺傷兵器は「音」

AP通信 2004年03月08日

 ニューヨーク発――イラクに駐留する米軍の兵士は、反抗的な群衆を蹴散らし、敵側とみられる戦闘員を寄せつけないようにできる新兵器を手に入れた。この兵器は狙った目標に向けて、耳をつんざくような音のビームを発射する。

 『LRAD』(ロングレンジ・アコースティック・デバイス)と呼ばれるこの装置は、2000年にイエメン沖で起こった米駆逐艦『コール』爆破事件の後、小型ボートが米軍艦船に接近するのを防ぐために開発された、いわゆる非殺傷兵器だ。

 米アメリカン・テクノロジー社(カリフォルニア州サンディエゴ)によって開発されたこの装置は、昨年夏以来、一部の米軍艦船上で防御用装備の一環として利用されている。

 今回、音のビームを連続的に発するこの装置を新兵器として採用したのは米陸軍と海兵隊だ。反抗の中心になっているバグダッド西方のファルージャなど、危険地域に駐留する米軍が群集とかかわる場合、戦闘意志のない市民のなかに、殺人をも辞さない敵が紛れ込んでいることが多い。

 アメリカン・テクノロジー社は最近、米海兵隊から110万ドルの契約を取り付けた。米海兵隊は契約を通じて、LRADを購入してイラクに配置された部隊に配備する。また米陸軍でも、イラクで使用する車両に試験的に搭載するため、LRADを現地に送った。

 イラクに送られるLRADの一部は、西部のアンバール州に派遣されて間もない、第一海兵遠征軍と第三海兵航空団の兵員が使用する予定だ。アンバール州は大部分が不毛地帯で、スンニ派イスラム教徒勢力が大多数を占める。

 公式には、米軍『合同非殺傷兵器理事会』(JNLWD)が定めた装備の一環とはなっていない。しかし、重量約20キログラムで、直径約80センチメートルの皿のような形状をしたLRADは、人々を殺傷する代わりに戦闘意欲をそぐことを目的として現在開発が進んでいる多くの兵器と同じカテゴリーに属する。

 エネルギー・ビームを発射して相手に苦痛を与え、撃退することを目的とした『アクティブ・ディナイアル』システムも、まもなく現場で試験的に使用される予定だ。

 アメリカン・テクノロジー社で軍事・政府関連事業を担当するカール・グルーエンラー副社長は、LRADは「バグダッドで徐々に使用され始めている」が、動作状態について「最初のフィードバック」をまだ得られていないと述べている。

 同社がパンフレットで「音響による防御機能」と強調しているように、LRADは警告メッセージなどの音声ファイルを遠くから発することができる。電子翻訳装置と併用すれば、警告を伝える対象を絞り込むことも可能だ。

 群集や敵対行為を行なう可能性のある集団が言葉による警告を無視した場合は、LRADから、ごく狭い範囲に的を絞って耳をつんざく高音のビームを発射できる。LRADを取扱う兵士やすぐ近くにいる人々に影響はない。

 アメリカン・テクノロジー社が海兵隊との契約を発表した声明で、第一海兵遠征軍の防御装備責任者スーザン・ノエル海兵隊中佐は次のように述べた。「(LRADは)海兵隊と、脅威となる敵の間に距離を置き、兵士が慎重に適切な対応を選択できる時間をかせげるようにするものだ」

 グルーエンラー副社長は、かん高いLRADの音について、火災報知機の音のようだがずっと大きな音だと説明している。LRADの音は最大で約150デシベルに達するが、火災報知機の音は80〜90デシベル程度でしかない。

 この装置は、約270メートルの範囲内なら十分な効果を発揮する設計で、「LRADから約90メートル以内にいると、とても耐えられない気持ちになる」とグルーエンラー副社長は述べた。

 聴覚の専門家は、LRADが発するような大音量で、高い周波数――2.1〜3.1キロヘルツ――の音に長時間さらされるのは危険な場合があると述べている。

 ニューヨーク州立大学バッファロー校に付属する『聴覚および難聴センター』の責任者、リチャード・サルビ氏は次のように説明している。「耳は敏感な部位で、障害が起きやすい。LRADの発するような高音にさらされる時間が長ければ長いほど、聴覚に与える影響は深刻になるだろう」

 グルーエンラー副社長も、LRADが発する高音に長時間さらされた場合、永続的な聴力障害を引き起こす可能性を認めている。

 しかし、このような高音は、一度に数秒ずつしか用いないことを想定しているという。

[日本語版:高田なおみ/湯田賢司]

アブハジア、ロシアに独立承認を要請へ

【8月20日 AFP】グルジアからの分離独立を求めるアブハジア(Abkhazia)自治共和国の共和国議会副議長は20日、独立承認をロシアに正式要請する準備を進めているとAFPに伝えた。

 アブハジア共和国議会のVyacheslav Tsugba副議長によると、20日には、ロシアへの独立承認要請を議会で審議する。

 21日には、各地域の政党や団体の代表がアブハジアの首都スフミ(Sukhumi) の広場に集まり、ロシアへの承認要請を正式に決定する。

 グルジアのミハイル・サーカシビリ(Mikheil Saakashvili)大統領は、アブハジアと南オセチア(South Ossetia)自治州のグルジアへの再編入を公約にして、大統領当選を果たした。そのため、アブハジアの正式な独立に向けた動きに対しては、同大統領の強い反発が予想されている。(c)AFP

ロシア、NATOとの軍事協力を全面凍結か ノルウェーに通知

オスロ――ノルウェー国防省当局者は20日、ロシアが同国に対し、北大西洋条約機構(NATO)との軍事協力の全面凍結を予定していると通知してきたと述べた。AP通信が報じた。


NATO外相理事会が19日、グルジア情勢に関連し、ロシアに和平原則に則った速やかな部隊撤収を要求、「NATOロシア理事会」や合同軍事演習を当面中断することを決めたことに反発した可能性がある。


モスクワのノルウェー大使館がロシア国防省の高官からの電話で説明されたという。書簡を送り、通知するとも語ったという。AP通信によると、ロシア大統領府はコメントしていない。ブリュッセルのNATO本部当局者はロシアから通知は受けていないとしている。


ロシアのインタファクス通信はモスクワの軍事外交筋の情報として、ロシア政府が2008年に予定していたNATOとの軍事協力を見直していると伝えた。


 ただし、ロイター通信によると、ロシアのロゴジン駐NATO大使は、凍結は一時的で、協力全般に及ぶものではないとし、アフガニスタンのテロ対策での協力は続けることを示唆。極東や地中海、バルト海での海軍演習が凍結対象だと説明した。

 今のところ、ロシア側は協力凍結について発表していない。


NATOロシア理事会が設置された2002年の合意では、NATOによる地中海での対テロ警戒活動へのロシア軍艦船の参加、アフガニスタンでのヘロイン密輸対策での協力などが盛り込まれていた。

2008年8月20日水曜日

野鳥絶滅の危機も、気候変動の速度についていけず 仏研究者ら

【8月20日 AFP】野鳥の生息域は地球温暖化に合わせて変化しているが、気温の急激な上昇に対応しきれず、一部が絶滅するかもしれない。20日の「英国王立協会紀要(生命科学版、Proceedings of The Royal Society B)」に、このような論文が発表された。

 論文を執筆したフランス国立自然史博物館の研究者らによると、さまざまな生態系における野生生物の微妙なバランスは、予想を8倍も超える速度で変化しつつあり、一部の種において深刻な結果を招く可能性があるという。

 論文は、フランスの鳥類個体群の99.5%にあたる105の鳥類について、1989年から2006年までに生息域が平均91キロ北上したと指摘。一方で同時期の平均気温は、それの約3倍に当たる273キロも北上している。鳥の生息域の変化と平均気温の変化の間のギャップは、さらに開きつつあるという。

 執筆主幹のビクトル・デビクトル(Victor Devictor)氏は、AFPとの電話インタビューで、「動植物は気候変動に適応していくものだが、たとえば鳥と、鳥が捕食する虫の適応速度が違うというような『ミスマッチ』が発生すると、種の間の相互作用に混乱が生じるようになる。こうしたミスマッチは徐々に大きくなる可能性があり、一部の鳥が絶滅してしまうかもしれない」と話した。(c)AFP

イランのロケット打ち上げは失敗、米国防総省筋

【8月20日 AFP】米国防総省筋は19日、模擬衛星を軌道に載せることを目的にイランが行ったロケット打ち上げは失敗だったと語った。

 米国防総省関係者は匿名を条件に「われわれは16日にイランが行ったロケット打ち上げを探知、分析した結果、成功しなかったと判断した」とし、「軌道にも到達していない」と語った。

 イランは17日、模擬衛星を積んだロケットの打ち上げに成功したと発表していた。ただ、このロケットが実際に衛星を積んでいたのか、それとも積める能力があるだけなのかについては、イラン政府関係者から矛盾する説明が行われていた。

 ある米情報機関関係者は「地上からそれほど高くまで到達しなかったはずだ。イランが成功したと主張している目的を達成しているわけがない」と語り、ロケット打ち上げ直後に失敗したとの見方を示した。(c)AFP

12年度にメタン産出試験=日本近海に埋蔵の「燃える氷」-経産省

8月19日21時1分配信 時事通信
 経済産業省は19日、シャーベット状態で海底などに埋蔵しており、「燃える氷」とも言われる「メタンハイドレート」からメタンガスを取り出す技術の実用化に向け、2012年度に日本近海で産出試験を行う方針を決めた。産出試験は長期的に実施し、技術面や経済性などの課題を研究、克服して18年度の商業生産開始を目指す。
 メタンハイドレートは水とメタンガスがシャーベット状に固形化したもので、石油や天然ガスに代わる新エネルギー源として注目されている。日本近海や米国で埋蔵が確認されており、静岡~和歌山県沖合の海溝「東部南海トラフ」には、日本の天然ガス年間消費量の約14年分に当たる1.1兆立方メートルが埋蔵していると試算されている。メタンガスには燃焼時の二酸化炭素(CO2)排出量が石油や石炭より少ないというメリットもある。

短距離ミサイル 露、南オセチアに配備 CNNなど報道 米は撤去要請

8月19日16時7分配信 産経新聞
 【ワシントン=山本秀也】CNNテレビなどの米メディアは18日、複数の米政府筋の話として、ロシアがグルジア・南オセチア自治州内に短距離弾道ミサイル「SS21」を配備したと一斉に報じた。米政府は公式確認を避けながらも、「仮に配備されたのであれば、撤去されるべきだ」との表現で、ロシアにミサイル撤去を求めた。

 グルジアでの紛争で、弾道ミサイルの投入が伝えられたのは初めて。SS21は旧ソ連時代に開発された移動式弾道ミサイルで、射程圏は120キロ。同自治州の州都ツヒンバリ付近に展開しているとされ、首都トビリシを含むグルジア領の中心部がすっぽりと射程圏内に入る。

 ロシア軍の侵攻部隊は、旧式に属するT72型戦車などが中心だった。弾道ミサイルの配備は短距離型とはいえ、国土の狭いグルジアへの脅威拡大を示す。米紙ニューヨーク・タイムズは、グルジアの北大西洋条約機構(NATO)加盟を牽制(けんせい)する目的との見方を伝えた。

 国防総省は「情報収集活動に関してコメントできない」とし、国家安全保障会議(NSC)のジョンドロー報道官もロシアの個別装備には言及を控えるとしながらも、紛争開始以降に配備されたのであれば、撤去を求める考えを示した。

 米側は、ロシア軍の動向を密に監視するとし、軍事偵察衛星などによる情報収集を強化していた。

2008年8月18日月曜日

イラン、国産ロケット打ち上げ成功 初の国産人工衛星も搭載か

【8月18日 AFP】イラン政府は17日、国産ロケットで初の国産人工衛星「オミド(Omid、希望)」の打ち上げに成功したと発表した。今回の打ち上げによって、イランの核開発計画と絡めて、欧米諸国との緊張が一層高まるとの見方が強まっている。

 国営イラン通信(IRNA)が伝えたイラン国防省の声明では、「イランの専門家によって製造された」ロケットが、マフムード・アフマディネジャド(Mahmoud Ahmadinejad)大統領の立ち会いの下、打ち上げられたとしている。さらに声明では、今回2度目の打ち上げとなるサフィル(Safir、大使)ロケットには、国産人工衛星オミドが積まれていたことが明らかにされた。

 一方、イランの宇宙開発当局者は、国営テレビに対して「ロケットは無事打ち上げに成功した。同ロケットで使われているシステムはすべてイラン製だ」とした上で、『模擬衛星』が軌道に乗ったと語った。

 また、イラン政府高官の1人はAFPに対し、国産初の通信衛星が打ち上げられたとする国営メディアの報道は正しくないと語った。同高官は、今回打ち上げに成功したのは人工衛星を搭載可能なロケットで、オミド自体が打ち上げられたわけではないとしている。

 イランが核兵器開発を進めているとの見方をしている欧米諸国は、イランの宇宙開発技術が軍事目的に転用されるという懸念を表明している。だが、イラン側はこうした主張を否定している。(c)AFP/Siavosh Ghazi

肥満指数と心臓病リスクの関係に疑問符 米研究

シカゴ(AP) 心臓病や脳卒中を引き起こす恐れがある高血圧、高コレステロールなどのリスク要因と、肥満傾向との関連は、一般に考えられているより弱いとの研究結果を、米ミシガン大の専門家らがこのほど発表した。全米の成人5440人の検査結果を、体重(キロ)を身長(メートル)の2乗で割った「肥満指数(BMI)」に基づいて分析した。 


検査は1999年から2004年にかけて、連邦政府が実施。同大で肥満を研究するメリーフラン・ソワーズ氏らがこれを分析し、内科学専門誌「アーカイブズ・オブ・インターナル・メディシン」の最新号に報告した。 


研究チームはまず、対象者をBMI25未満の「標準」、同25以上の「太り気味」、同30以上の「肥満」と3つのグループに分け、それぞれについて、心臓病などのリスク要因とされる血圧、コレステロール、中性脂肪、血糖値の4項目を調べた。 


この結果、太り気味グループの約51%は、異常が0または1項目にとどまっていたことが判明。全米の人口に換算すると、3600万人が「太り気味だが低リスク」に当たると推定される。また、肥満グループでも3分の1が低リスクと判定された。一方で、標準グループのうち、2項目以上で異常値を示す人が約4分の1を占めることも明らかになった。全米に換算して1600万人が、「標準体型だが高リスク」に分類されることになる。チームではこの結果について、「肥満指数で標準の判定が出ても、心臓病リスクが低いとは限らないことが確認された。太っている人はもちろん、そうでない人も注意が必要だ」と説明している。 


研究ではまた、2項目以上に異常がみられる高リスクの判定は、高齢者や喫煙者、運動不足の人に多いとの傾向が明らかになった。さらに、内蔵脂肪量の目安となる胴囲と、リスク要因との関連性も指摘された。BMIによる標準グループの中でも、胴囲の大きい人ほど高リスクとなり、太り気味・肥満グループの中でも、胴囲の小さい人ほど低リスクとなる傾向がみられたという。

2008年8月16日土曜日

野菜で食道がん予防 摂取100グラム増でリスク10%減、厚労省研究班

 野菜や果物の摂取量が多い男性は、食道がんになるリスクが低いとの疫学調査結果を、厚生労働省研究班(主任研究者・津金昌一郎国立がんセンター予防研究部長)が14日、発表した。

 合計摂取量を推定して3グループに分けると、摂取量「高」のグループは「低」に比べリスクがほぼ半減。摂取量が1日当たり100グラム増えるとリスクは約10%低下した。特にキャベツや大根、小松菜などで関連がみられた。調査は岩手など8県の45―74歳の男性約3万9000人を、1995年から平均で約8年追跡。この間に116人が、日本人の食道がんの大半を占める扁平上皮がんになった。

「たばこ1箱1000円なら禁煙」70% パソナが若者意識調査

 たばこ1箱1000円なら7割以上が禁煙する――。人材派遣大手のパソナグループは14日までに、10代、20代の若者の喫煙に対する意識調査の結果を公表した。税収と禁煙者の増加を図ろうと、各政党などで議論されているたばこ価格の欧米並み引き上げは、若者には“効果”がありそうだ。

 調査は街頭とインターネットを使ったアンケート方式で、10代、20代を中心に男女計212人から回答を得た。

 たばこ価格が1箱1000円でも喫煙を続けるかとの質問に、喫煙者の40.3%が「すぐに禁煙する」、30.6%が「本数を減らし、いずれ禁煙する」と回答。計7割以上が禁煙に向かう意思を示した。

グルジア経由の石油輸送停止 アゼルバイジャン

 カスピ海の産油国アゼルバイジャンの国営石油会社(SOCAR)は9日、グルジアの黒海沿岸の港を通じた石油と石油製品の輸出を8日から停止したと発表した。ロシア軍による10日のグルジアの海上封鎖を受け、ロシア経由の石油輸送への切り替えを検討しているもよう。ロシアは今回の紛争を利用し地域のエネルギー輸送の主導権回復も狙っているとの指摘もある。

 アゼルバイジャンは世界の原油生産量の約1%にあたる日量約87万バレル(07年)の原油を産出しており、旧ソ連圏ではロシア、カザフスタンに次ぐ有力産油国。19世紀末に現在の首都バクーの沖合のカスピ海で油田が発見され、欧米の石油会社が開発に参加、20世紀初頭には世界最大の生産量を誇った。ソ連時代は油田の中心が西シベリアに移り、バクー油田老朽化もあって、産油地帯としての地位は低下した。ソ連邦崩壊後、英BPなど西側資本が再参入し、バクーのより沖合で未開発の油田を開発したことで産油量が回復。産油国として復活しつつある。

ウクライナ、ロ黒海艦隊を入港許可制に 海上封鎖に抗議

 【モスクワ=坂井光】ウクライナのユーシェンコ大統領は13日、同国がロシアに長期貸与しているロシア黒海艦隊のセバストポリ基地について、ロシア艦船の出入港を許可制にする大統領令に署名した。グルジア紛争でロシアが黒海艦隊で海上封鎖を試みたことに抗議するため。ウクライナでは大統領が率いる親欧米派の間でロシアに対する警戒感が一気に高まっており、2国間関係に新たなひびが入りそうだ。

 大統領はグルジア支援のため12日に同国を訪問し、サーカシビリ大統領らと会談、対ロシア共闘を確認した。ユーシェンコ大統領は13日の声明で「外国戦艦の存在はウクライナの安保に対する潜在的な脅威となる」と指摘した。

 インタファクス通信によると大統領は同日、ミサイル攻撃に対する早期警戒システム維持と宇宙空間監視に関するロシアとの合意の履行を停止。さらに、南オセチアで今後展開される予定の国際平和維持部隊に参加する考えも表明した。

ロシア軍の南オセチア介入直前にサイバー攻撃 米紙報道

 【ニューヨーク=共同】13日付の米紙ニューヨーク・タイムズは一面で、ロシア軍がグルジア・南オセチア自治州に軍事介入する直前にグルジア大統領府などに対するサイバー攻撃があったと報じた。インターネット専門家は、実際の戦闘と連携した形のサイバー攻撃は史上初めてと指摘している。

 同紙によると、8日のロシア軍の南オセチア軍事介入前、グルジアのインターネットシステムに対し、コンピューターウイルスに感染した複数のコンピューターをネットワーク化した「ボットネット」を利用したサイバー攻撃が仕掛けられるのを、米国内の非政府組織(NGO)を含む複数のインターネット監視機関が確認した。

 このサイバー攻撃をしたのがサンクトペテルブルクを根城とする犯罪組織であることは確認されたが、ロシア政府が関与しているかどうかは不明だという。

ロシア軍のグルジア攻撃、進攻の時期や迅速さに米軍「驚き」

【8月12日AFP】米国防総省高官は11日、グルジア・南オセチア(South Ossetia)自治州へのロシア軍進攻のタイミングとその迅速さについて米軍も意表を突かれたと話し、発生した事態について分析中だと述べた。

 ロシア軍は前週、グルジアからの分離独立を求める南オセチア州に進軍した。それ以前、両国間の脅迫や警告、衝突は数週間にわたって続いていた。6日にグルジア軍が南オセチア部隊と交戦、2日間にわたり同自治区に進攻し、ロシアとの緊張も最高に達した。

 米国防総省幹部らは、グルジアとロシアの衝突は予測されていたが、圧倒的なロシア軍の攻勢は想定外だったと述べた。ある米軍高官は「その週の前半にはロシア軍の動きを監視していたので、事態の激化は把握していた。しかし、初日のロシア軍の動きは、われわれの予想よりも迅速だった」と言う。

■米軍の最新鋭偵察システムをもっても予測できず

 しかし、事態がどのように展開したのかについては、両国の主張が食い違っているため、依然として不明瞭な点が多い。

 グルジアの高官たちは、グルジア軍が首都トビリシ(Tblisi)に向かって撤退している間に、ロシア軍が南オセチアからグルジア領内へ移動し、ゴリ(Gori)を制圧したと述べている。

 しかし、米国防総省高官は、グルジア側のこの主張は確証が取れないと述べた。「ロシア軍がゴリに駐留していることを示す証拠は見あたらない。グルジア側がなぜそのような主張をしているのか見当がつかない」。米国防総省のブライアン・ホイットマン(Bryan Whitman)報道官は「その件の評価は、現在進行中」だとして見解を明らかにすることを避けている。

 米国は、各国の軍事衝突に向けた準備段階の行動を監視するために、スパイ衛星や偵察機、無線電波や地上軍部隊のリアルタイム画像を収集する無人飛行機など、世界でも最先端の手段を有している。しかし今回、遠隔地で発生した対立から軍事衝突に発展する過程をどの程度までとらえる訓練ができているかについては、よく知られていない。

 一方、ロシア軍は3日、グルジア政府と南オセチア自治州との間で「大規模な軍事衝突」の危険性が高まっていることを警告していた。

■ロシア軍は7月に北カフカスで8000人軍事演習

 米国防総省は5日、ロシアに対して挑発的な行為を抑えるよう要請する声明を控えめに発表していた。しかし、直近にグルジアあるいはロシアが軍事行動を起こす可能性について、米国側が察知していることを示唆するような情報はなかった。

 米国防総省幹部は、戦闘は差し迫った脅威ではないとみなしていた。こうした米側の認識は、グルジアに米軍兵士95人と民間軍事会社の派遣した要員35人しか駐留させていなかった点からうかがえる。また、これらの部隊や要員は、イラクへ派遣するグルジア軍兵士の訓練のためで、駐留地は南オセチア付近ではなかった。

 7月中旬には米軍兵士1650人がグルジア軍と合同訓練を実施したが、グルジアとロシアの対立が過熱したころには米軍はすでにグルジア国外へ退去していた。

 一方、同時期にロシア軍は、対テロ軍事演習として北カフカス(North Caucasus)に兵士8000人を展開していた。同演習についてロシア側は、南側国境に隣接するグルジアとの緊張の高まりとは無関係だとしていた。

■「ロシア軍の進軍能力、予想以上」と米分析

 米国防総省高官によると、今回これまでに南オセチアに進攻したロシア軍兵士は8000-1万人、またロシア軍の戦闘機や爆撃機SU-25、SU-24、SU-27、TU-22などが出動した。

 しかし同高官は、ロシア軍の進攻準備を示すような国境沿いでの部隊集結はなかったと述べる。「これを根拠にすれば、ロシア軍は迅速な進軍が可能であり、ただ単にそれを実行するか否かの問題だったということになる。国境沿いに軍を集結し待機させていたわけではなかった」(米国防総省高官)

 また同高官は「ロシアの今後の計画についてはわからない。明らかなことは、必要であればさらに部隊を増派できるということだ」と述べた。(c)AFP/Jim Mannion

「永遠にさらばだ、ソビエト連邦よ」、グルジアがCIS脱退へ

【8月13日 AFP】グルジアのミハイル・サーカシビリ(Mikheil Saakashvili)大統領は12日、首都トビリシ(Tbilisi)の議会前で演説を行い、旧ソ連12か国で構成する独立国家共同体(Commonwealth of Independent States、CIS)を脱退する意向を示した。また、ウクライナなどに対し同調するよう呼びかけた。

 サーカシビリ大統領は集まった10万人の聴衆の前で「グルジアはCISを脱退することを決定した。ウクライナやそのほかの加盟国もわれわれの決定に続くよう求める。永遠にさらばだ、ソビエト連邦よ」と語った。(c)AFP

OPEC:半年で1年分の収益を確保

 2008年上半期に原油輸出がOPEC(石油輸出国機構)加盟国にもたらした利益は、2007年通期の利益に匹敵することが明らかとなった。記録的な収益の要因として、原油価格の高騰及び過去最高の増産が挙げられる。フィナンシャル・タイムズ紙が報じたところによると、2008年全体としてのOPEC加盟国の収益は、およそ1兆2450億ドルに上る見込みである。
 
 先週末、原油価格は、14週ぶりに115/バレルまで下落した。この数ヶ月間、原油価格高騰の一因となっていたのは、イスラム諸国の核計画をめぐるイランと先進国との軋轢であった。しかし、新たに、ロシアとグルジアの軍事衝突という問題も浮上してきた。この軍事衝突によって、バクー・トビリシ・ジェイハンを結ぶBTCパイプラインを始めとするカスピ沿岸諸国における原油供給に支障が出ている。こうしたことを背景に、原油先物の10月渡し価格は、北海ブレント原油がおよそ115.4ドル/バレル、WTIがおよそ116.2ドル/バレルと若干の上昇を示した。多くのアナリストは、ドルが持ち直してきたことによって、原油価格の上昇幅は、限られたものになるだろうと予測している。現に、ロシアは通貨バスケット制を採用しているが、現在、6ヶ月間ぶりのドル高傾向となっている。しかし、現在の原油価格は、依然2008年上半期の平均価格(111ドル/バレル)を上回っている。
 
 また、原油の大幅な増産も、OPEC加盟国の利益に寄与した。7月におけるOPEC加盟国全体の原油採掘量は、過去最高の日量3260万バレルとなった。HSBC銀行は、2006-2010年に石油輸出国が得る収益は、2006年以前の20年間に得た収益を上回るとの試算を公表している。また、2008年に石油輸出国が得る収益は、1980年代全体の収益に匹敵すると見込まれている。
 
 しかし、イギリス王室国際問題研究所(Chatham House)の専門家は、石油危機の到来を予測している。現在、石油に対する需要は急激に増加している。しかし、新たな産地の開発に向けた投資額は不足している。石油危機に関する論文を執筆したP.Steven博士は、「国際的石油企業の株主は、利益を得ることばかりに執着していて、新たな産地開発のための投資には関心がない。」と指摘する。また、同氏は、自国に存在する資源を自国で管理・開発しようという資源ナショナリズムの動きが再び台頭してきたことに言及し、こうした流れによって、将来性のある産地開発に外国企業が参入することが難しくなり、世界市場に影響を及ぼす可能性もあると注意を喚起している。

 イギリス王室国際問題研究所は、今後、供給不足を背景に、原油価格は200ドル/バレルまでは容易に上昇するとの見解を示している。このような数字を予測している専門家は多い。アメリカの投資銀行ゴールドマン・サックスのアナリストも、長期的には、原油の供給不足によって、原油価格は、200ドル/バレルまで上昇するだろうとの予測を発表している。
 
 また、サウジ・アラビアの原油採掘量に関して、イギリス王室国際問題研究所は、2009年に日量125万バレルに達した後は、平行線を辿るだろうと考えている。サウジ・アラビアを除くOPEC加盟国にも、大幅な増産を図る方針はない。
 
 ロシアの原油採掘事情はどうかというと、現在、すでに、問題が発生している。ロシア統計局のデータによると、2008年上半期、原油採掘量は、前年同期比0.6%減となった。また、高い輸出関税が課されていることが影響し、ロシアの原油輸出量は6.2%減少した。
 
 原油価格がどこまで上がるかということに関して、俄かには信じられないような高値を予測する声も上がっている。2008年6月、ヨーロッパを歴訪中であったガスプロムのCEOミレル氏は、近い将来、原油価格は250ドル/バレルに達するだろうとの見解を示した。原油価格の高騰は、ロシア企業にとっては、財務基盤を強固にし、より効果的な成長政策を取る上で大きく寄与するだろう。しかし、その一方では、インフレを加速させ、世界経済の減速を招く要因ともなり得る。

2008年8月14日木曜日

「肥満」などを「疾病」とする法案可決、アルゼンチン上院

ブエノスアイレス――南米アルゼンチンの上院は13日、肥満や拒食症、過食など食生活の問題を、同国の公共、私的な健康衛生プログラムの対象に入れる「疾病」と規定する法案を満場一致で可決した。国家利益にかかわる問題としている。AP通信が報じた。 


下院も既に可決している。該当者は今後、健康衛生プログラムでの治療を受ける権利を得た。法案はまた、メディアに対し、専門家が支持しないダイエット方法を紹介することなどを禁じた。

米国の人口比、2042年にマイノリティが過半数を突破と

ワシントン──米国における少数派の「マイノリティ」が、2042年には人口構成比の過半数を突破し、2050年には実質「マジョリティ」になると、米国勢調査局が7日に発表した統計結果から予測されている。「マイノリティ」が「マジョリティ」になる時期は、2004年調査時よりも8年早まり、米国における「マイノリティ」の増加が急速に進んでいることが明らかになった。 


「マイノリティ」は非ヒスパニック系の白人、「マイノリティ」はヒスパニックやアジア、アフリカ系米国人などと定義されている。 


国勢調査局によると、米国の人口は現在3億500万人。今後は増加傾向にあり、2039年に4億人を突破し、2050年には4億3900万人に増加すると予測している。 


このうち、マジョリティが占める割合は現在66%と過半数を超えているが、2042年には過半数を割り込み、2050年までに46%に減少する見込みだという。 


特に、ヒスパニック系の増加が著しく、現在の4680万人から2050年には1億3280万となり、人口比で現在の15%から30%と、米国人の3人に1人がヒスパニック系になるという。 


アフリカ系米国人は4110万人から2050年までに6570万人に増加し、人口比では14%から15%になる見込み。アジア系米国人は1550万人から4060万人、人口比で5.1%から9.2%に増加する。 


一方、マジョリティの白人は現在の1億9980万人から2050年には2億303万人に微増するものの、人口比では46%と過半数を割り込む。 


このほか、85歳以上の高齢者は2050年までに1900万人と、現在の3倍に増加するほか、65歳以上は2倍になると予測している。

2008年8月10日日曜日

イラク、約20年ぶりに油田探鉱を再開

【8月9日 AFP】イラク政府は8日、国連の制裁などにより約20年間行われていなかった油田探鉱を再開すると発表した。(c)AFP

OPEC脱退ではなく加盟留保を検討=インドネシア代表

 [バンコク 7日 ロイター] インドネシアのマイザル石油輸出国機構(OPEC)代表は7日、インドネシアはOPECから脱退するのではなく、加盟国の地位を保留することを検討していると述べた。

 マイザル代表はロイターに対し、インドネシアはOPEC幹部と非公式に会談を持ってきたが、OPEC事務局に正式に脱退するとは通達しておらず、2008年末まではOPEC加盟国であり続けると述べた。

 その上で同代表は「脱退という言葉を使うのはやめよう。インドネシアは(加盟を)保留とすることを考えている」と述べた。また、「OPEC加盟国であることは役に立つ」とも述べた。

 マイザル氏は、東南アジア諸国連合(ASEAN)のエネルギー大臣会合・ASEANエネルギー産業フォーラムに出席するため、当地を訪れている。

 原油価格の高騰については、「OPECは充分な量の原油を供給している。価格高騰はOPECのせいではない」と述べ、OPECを擁護した。

 インドネシアのプルノモ・エネルギー鉱物相は5月、年内にもOPECから脱退する方針を表明した。原油の純輸入国に転落したためで、純輸出国に戻り次第、再加盟するとした。

 インドネシアの原油生産量は油田の老朽化などが原因で近年は減少している。2008年の生産量見込みは日量92万7000バレル。国内原油需要は日量1200万─1300万バレルで、不足分は輸入に頼らざるを得ない。

原油価格の下落は「好ましい」=ベネズエラのチャベス大統領

 [ブエノスアイレス 5日 ロイター] ベネズエラのチャベス大統領は、原油価格が1バレル150ドルに達するのは合理的でないとし、原油価格の下落は「好ましい」との考えを示した。

 チャベス大統領は、最近何度か、原油価格は1バレル100ドルが適正だと発言している。

 原油価格は、7月11日に記録した147.27ドルをピークに、下落が続いている。

 大統領は、ブエノスアイレスで記者会見し「原油価格の下落はよいことだ。原油価格は100ドル前後で安定することが望ましい。1バレル150ドルまでの上昇は投機が主因で、合理的ではない」と述べた。

イラン、射程300キロの海洋兵器の実験を実施=革命防衛隊司令官

 [テヘラン 4日 ロイター] イラン革命防衛隊は4日、300キロの範囲内にいる船舶を破壊する能力のある海洋兵器の試験を実施したと発表した。FARS通信が伝えた。

 それによると、革命防衛隊のMohammad Ali Jafari司令官は「革命防衛隊は最近、海洋兵器の試験を行った。300キロの範囲内にいる船舶は安全でなく、海底に沈められるだろう」と述べた。

イラン、ホルムズ海峡を「制限なく」容易に封鎖可能=革命防衛隊司令官

 [テヘラン 4日 ロイター] イラン革命防衛隊のジャファリ司令官は、イランが核開発プログラムをめぐって攻撃を受けた場合、原油輸送ルートの要であるホルムズ海峡を容易に閉鎖することが可能だと言明した。

 国営ラジオが4日、報じた。

 それによる同司令官は、イランは「ホルムズ海峡を容易かつ無制限に閉鎖する可能性がある」と述べた。

ロシア中銀、商業銀行の預金準備率を9月1日から引き上げ

 [モスクワ 1日 ロイター] ロシア中央銀行は1日、インフレ抑制のため、商業銀行の預金準備率を9月1日から引き上げる方針を明らかにした。

 外国銀行がロシアの銀行に持つ預金に対する準備率はこれまでの7.0%から8.5%に、個人顧客のルーブル建て預金に対する準備率は5.0%から5.5%に、その他に対する準備率は5.5%から6.0%に引き上げられる。

2008年8月7日木曜日

人間のあくび、犬にも「伝染」することが判明=英研究

 [ロンドン 6日 ロイター] 人間のあくびが犬に移ることが英国の研究で明らかになった。これにより、犬にも初歩的な他者に共感する能力がある能性が示された。英国の科学者らが6日発表した。
 あくびは多くの動物で見られるが、他者があくびしているのを見てあくびが引き起こされる「移るあくび」についてはこれまで人間とチンパンジーでしか確認されていなかった。
 ロンドンのバークベック・カレッジの研究員、千住淳氏らが専門誌に発表した記事によると、調査した29匹の犬のうち72%が人間のあくびを見た後にあく びをした。この行為から、犬は人間の社会的な「合図」を察知する能力に長けていることが示されたとともに、犬の「共感する能力に関連している」可能性があ るとしている。

2008年8月1日金曜日

インド、イランとエネルギー分野での協力を約束

2008/07/31 Thursday 11:15:27 JST 

〈テヘラン〉インドとイランがエネルギー分野での協力を発表した。インド政府はイランとのエネルギー協力を発表する数時間前に「すべての国は自国の責任のもとで、平和的利用の核開発を行う権利をがある」との声明を発表していた。 

非同盟諸国(NAM)外相会議に出席するためイランの首都テヘランを訪れていたプラナーブ・ムカルジー外相は29日夜、マフムード・アフマディーネジャード大統領とマヌーチェフル・モッタキ外相と会談し、エネルギー安全保障やその他の2国間問題について話し合った。政府高官によると、両国はエネルギー分野での協力を進めていくことを確認しあったという。 

また、74億ドル(約7990億円)プロジェクトのイラン-パキスタン-インドを結ぶガスパイプライン計画が議題になったかという記者団からの質問に対し政府高官は「今回の会談の目的とは異なる」とし、回答を避けた。 

ムカルジー外相は、2国間の交通網を増加させ、更なる2国間関係強化に繋げたいとのインド側の要望を伝えたという。一方アフムード大統領は、今年4月のインド訪問の成功を伝え、2国の間には文明的な統一性があるとした。 

29日に行われた非同盟諸国(NAM)外相会議で、ムカルジー外相はすべての国は自国の責任のもとで、平和的利用の核開発を行う権利を持つと主張し「クリーンかつ低コストという原子力発電の利点は誰もが知っていることだ」と原子力発電の利点を強調している。 

現在イランと欧米諸国の間で、イランの核開発プログラムが問題になっている。ムカルジー外相の発言はイランの核開発問題にも影響を与える可能性がある。国際社会がこの発言をどう判断するのか注目される。 

ジュネーブで先日、イランの核開発問題の打開に向けたイランとEUとの協議が行われた。イランの最高安全保障委員会のサイード・ジャリリ事務局長が出席し、アメリカの国務次官も出席した。アメリカがEUとイランの協議に参加したのは初めて。 

国連常任理事国のメンバー国やドイツはイランに対し、濃縮ウランの製造停止の見返り案として、貿易の奨励や民生核開発の支援などを提案している。