2009年3月30日月曜日

中国拠点のスパイ網、103か国のPCに侵入 NYタイムズ

【3月29日 AFP】米ニューヨーク・タイムズ(New York Times)紙は28日、チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ(Dalai Lama)14世のコンピューターなど103か国の政府や個人のコンピューターが、中国を主な拠点とする電子スパイ活動により侵入を受けていたと伝えた。 ニューヨーク・タイムズ紙は、カナダの研究チームが今週末に発表する報告書の内容として、このスパイ・システムのほぼすべての操作が中国国内のコンピューターから行われていたと伝えた。しかし、中国政府が関与したかどうかについては断定ができないとした。 この調査は、ダライ・ラマの事務所のコンピューターに悪意のあるソフトウエアの兆候があるとして、同事務所がカナダのトロント大学(University of Toronto)のムンク国際研究センター(Munk Center for International Studies)の専門家らに調査を依頼したことをきっかけに始まった。 その結果、103か国1295台のコンピューターが不正アクセスを受けた大規模なスパイ活動が明らかになった。 侵入を受けたコンピューターの多くは大使館や外務省、各国政府施設のもので、インド、ベルギーのブリュッセル(Brussels)、ロンドン(London)、ニューヨーク(New York)にあるチベット亡命政府の事務所も侵入を受けていた。 研究者らが「ゴーストネット(GhostNet)」と呼ぶこのスパイシステムは、ダライ・ラマに対するスパイのほかに、東アジアと東南アジア諸国の政府機関を標的にしていたという。ニューヨーク・タイムズは、これまでで最多の国が侵入を受けたスパイ活動だと述べた。 報告書によると、現在も、1週間につき十数台以上のコンピューターが新たに侵入を受け、監視されているという。 米国政府の関連施設が侵入を受けた形跡は無かったが、北大西洋条約機構(NATO)のコンピューターが半日にわたって監視され、米ワシントンD.C.(Washington D.C.)にあるインド大使館のコンピューターが侵入を受けていた。(c)AFP

ロシア、北極を「戦略的資源基地」に 軍部隊配備も

【3月28日 AFP】ロシアが2020年までに北極を「主要な戦略的資源基地」にし、軍部隊を駐留させる方針であることが、同国安全保障会議のウェブサイトに27日公開された文書で明らかになった。 この文書は前年採択されたもの。2016-2020年の間に北極帯をロシアの「主要な戦略的資源基地」にするため、2011-2015年の間に北極帯のロシア国境を確定させ、エネルギー資源の探査と輸送におけるロシアの優位性を確保するとしている。 また、「軍事的安全を確保する能力を持つ」軍部隊を北極に配備することも主要な目標の1つとして掲げている。 北極海に面するロシア、カナダ、デンマーク、ノルウェー、米国の5か国がそれぞれ北極帯の一部に領有権を主張している。北極帯には未開発の900億バレルの石油資源が眠っていると考えられている。(c)AFP

2009年3月26日木曜日

中国、空母建造の意思を表明 浜田防衛相との会談で

【3月23日 AFP】中国の梁光烈(Liang Guanglie)国務委員兼国防相は20日、訪中した浜田靖一(Yasukazu Hamada)防衛相との会談で「大国で空母を持っていないのは中国だけであり、中国が永遠に空母を持たないというわけにはいかない」と述べ、空母を建造する意思を示した。東方早報(Oriental Morning Post)紙が23日、報じた。

 また、同紙によると、梁国防相は、「中国海軍は力が弱い。空母建造が必要だ」と語った。会談に先立ち、南シナ海(South China Sea)では緊張が高まっていた。

 梁国防相の発言は、これまでで最高位の高官による空母配備の意思表明となった。空母は、海岸沿いよりも遠方の沖合まで軍事力を展開する上で重要な軍備。(c)AFP

2009年3月18日水曜日

「第5世代の戦争」:理念の衝突すらない、突発的な暴力の時代


Photo: David Axe

軍事理論の専門家たちはこの数年というもの、もっぱら「第4世代戦争」について考えてきた。これは、[領土や資源をめぐる衝突というよりは]理念の衝突であり、「グローバル・ゲリラ」の概念を唱える著述家のJohn Robb氏が、「アドホックな兵士」と呼ぶ者たちによって遂行されるものだ。

[ウェブサイトや衛星電話、国際的な物資調達、24時間放送のケーブルニュース、銀行口座への即時送金などによって、同じイデオロギー、あるいは同じ敵を持つ者は、たとえ何千キロ離れていたとしても団結することができる。John Robb氏は、これを「オープンソース戦争」と呼んでいる(日本語版記事)。アドホックな兵士とは、組織化された従来型の軍隊ではなく、その都度形成されるようなタイプの戦闘員]

「第4世代戦争」の前の「第3世代戦争」というのは、産業化の時代を背景に、従来型の軍隊が領土や資源をめぐって戦った戦争だった。米国とその同盟国は、従来から第3世代戦争を得意としてきたが、5年間におよぶイラク戦争を通して、第4世代戦争についてもかなり腕を上げつつある。とくに、原理主義者の世界観を受け入れないよう、一般のイラクの人々に呼びかけることにかけてはかなりのものだ。

しかし、「第5世代」と呼ばれる次世代の戦争には、第3世代におけるような軍隊もなく、さらに、第4世代におけるような明確な理念もない。

アフリカ担当のトップ情報部員である米国陸軍のShannon Beebe少佐はこれを「暴力の渦(vortex of violence)」と呼んでいる。将来を見据えた首尾一貫した計画というよりも、フラストレーションをより大きな動機とした、何のルールもない突然の破壊だ。

第5世代戦争は、不満を抱える世界の人々がその絶望を、より高度に組織された第4世代戦争の兵士が開拓した戦術と戦場を利用して、自分たちに欠けているすべてのものを最もわかりやすく体現するシンボルに向けた時に起きるものだ。そのシンボルとは、世界で唯一の超大国、米国のことだ。

第5世代戦争の戦闘員たちは、自らの武器として政治的な「膠着状態」を好む、と主張するのは、海兵隊のStanton Coerr中佐だ。同中佐は、海兵隊の専門誌『Marine Corps Gazette』の記事で、以下のように主張している。

「第5世代戦争の戦闘員たちが勝利に至る手段は……非宗教的な軍事力の無能さを際だたせるというものだ。(中略)第5世代戦争の戦闘員たちは"負けない"ことで勝利するのに対し、われわれは"勝たない"ことで負けてしまう」

意外な場所が「戦場」となる――サイバースペース、クリーブランドの上水道システム、ウォール街の金融システム、『YouTube』などだ。その目的は恐怖心を植え付ける点にあり、狙いは成功するだろう。

Coerr中佐は、第5世代戦争は、アルカイダが信奉する世界的なイスラムのジハード(聖戦)に根ざしていると指摘する。しかしだからといって、第5世代戦争の戦闘員が明確なイデオロギーを持ち、現行のものとは違う政治システムを打ち立てる熱意があるというわけでは必ずしもない。彼らは日和見主義者で、頭にあるのは破壊だけだ。

ただし、脈絡がないように見える暴力でさえ、屈折した論理を持つことはありうる。突然の不合理な破壊が、「国家――とくに最も力を持った米国――が現代世界において存続可能だ」といういう考えをむしばんでいくのだ。

それでは、第5世代戦争の敵を打ち負かすにはどうすればよいのだろうか。まず何より、戦わないことだ。Beebe少佐は、アフリカにおける暴力の渦を終わらせるには、「国境を越えてこうした不安定な状態を生み出す、人々の置かれた状況」を解消することが必要だと話している。つまり、自動小銃の『M16』やエイブラムス戦車をちらつかせることなく、経済発展、人道的支援、およびコミュニケーションに注力するべきだということだ。

Coerr中佐の表現を借りるなら、「成功の度合いは、輸出される暴力に反比例するだろう」ということだ。

「命綱のトンネル網」ガザで再開:武器やヤギを運ぶ世界をギャラリーで


Photos: B'Tselem(以下すべて)

エルサレム発――ガザ侵攻の間、イスラエル軍は数百のトンネルを空爆した。イスラム過激派グループ『ハマス』の武器密輸入ルートとなっていたこれらのトンネルを封鎖し、ハマスにこれ以上物資を調達させないようエジプトに圧力をかけるためだ。

だが、停戦のわずか数日後、ハマスの指揮の下、これらのトンネルが稼働を再開した。

「ハマスは、ガザ南部にあるフィラデルフィア・ルートの地下を走る密輸トンネルをすべて掌握しており、1月18日(現地時間)に『Operation Cast Lead』(鋳られた鉛作戦)が終結してから、追加の武器をガザ地区に運び込んでいる」と『Jerusalem Post』紙は報じている

[フィラデルフィア・ルートとは、エジプトとガザ地区の間にある、全長およそ20kmの道路。エジプトとガザ地区を結ぶラファ検問所があり、ガザ地区に武器を入れないよう、イスラエルとエジプトの監視下にある。パレスチナ武装組織は、これに対抗し武器をガザに入れるため、フィラデルフィア・ルート各地の地下にトンネルを掘っている]

これらの通路は、「多くの場合、地域のパレスチナ人の氏族たちによって運営されている。ハマスがこれらのトンネルを支配すると決定したのは、彼らがガザにおいて勢力を立て直そうという試みの一環だと考えられている。ハマスは現在、ガザ地区に密輸される物資を決定することが可能で、武器や爆弾を優先的に運び込んでいる」という。

ここで疑問が出てくる。エジプトは自国の国境側から密輸入を阻止しようとはしないのだろうか? カイロにいるイスラエルの外交団は、そのことを主張しようとしている。エジプト国境の軍を2倍、あるいは3倍にも増強することについて話し合いも行なわれている。だが、この地域の武力政策を長い間観察してきたジャーナリストのKhaled Abu Toameh氏によると、実質的な変化は起こりそうにないという。

Toameh氏は、[イスラエルが抱える歴史的および現在の問題を伝える教育機関]『Project Interchange』が主催した複数のミーティングの1つにおいて、ワイアードの軍事ブログ『Danger Room』に次のように述べた。

「われわれは振り出しに戻った。(エジプトのホスニー・)ムバーラク大統領にとっては、ユダヤ人たちを殺すこれらの兵器のために[今のままの方が]都合がいいのだ。そうでなかったら、シナイ半島あるいはカイロでトンネルを封鎖できるはずだ」

ガザ地区にある、封鎖されたエジプトとの国境の地下に、トンネルが作られたのは数十年前のことだ。やがてこれらのトンネルは、ガザ地区の人々およびシナイ半島のベドウィン(アラブ遊牧民)たちの経済における大きな経路(日本語版記事)となった。

[リンクされている記事によると、これらのトンネルは、イスラエルに事実上封鎖されているガザにとっての「経済的な生命線」にまでなっており、家畜や建設資材から、勃起不全治療薬『バイアグラ』や密輸品の『iPod』にいたるまで、あらゆる物資が運ばれているという。ガザでは食糧や燃料などが恒常的に不足しており、2008年の報告によれば、人口150万人のうち8割が食糧援助に依存している。2008年1月には、検問所近くの壁が爆破され、ガザ住民がエジプト側に流入して物品を購入する事態も起きている]

エジプトの役人たちがトンネルの往来に対して見て見ぬふりをしているのにはさまざまな理由があると考えられている。例えば、国境の役人たちが金を得られる。エジプト国内のイスラム過激派グループの手に武器が渡らないようにする。また、表向きには反ハマスの姿勢を維持しつつも、エジプトがパレスチナ人過激派グループを支持していることを示す、などだ。

2008年末に開始されたガザ侵攻・ハマス攻撃の背後にあるイスラエルの目論みの一部は、エジプト人たちの姿勢を変えることだった。つまり、ハマスと彼らの密輸ルートがエジプトにとっていかに脅威的であるかを示し、ガザ地区の難民たちがシナイ半島に流出する可能性があるとの巧妙な警告を送るというものだった。「そのことによって、エジプト人たちは問題に関与せざるを得なくなる」と、イスラエルの軍高官だったある人物は述べる。

だが、ガザ地区における軍事行動がエジプトの姿勢をどのように具体的に変化させたのか、と尋ねられると、この人物は肩をすくめ、自分にも「分からない」と語った。

(2)では、イスラエルの人道的団体『B'Tselem』が、『Danger Room』に提供してくれた地下トンネルの画像をいくつか紹介する。

以下は、イスラエルの人道的団体『B'Tselem』が、『Danger Room』に提供してくれた地下トンネルの画像だ。

WIRED NEWS 原文(English)

「現代の戦争」最前線は人類学者:米軍のHTSプログラムとその実態

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Photo: Robert Young Pelton

米陸軍は、社会科学者を軍に同行させて情報収集などに協力させる試み『Human Terrain System』(HTS)を行なっている。HTSは物議を醸しているが、「21世紀の戦争」の最前線に立つと考えられている。

イラクとアフガニスタンでは、民族学研究のツールを利用して、死者の出る可能性がもっと少ない賢明な対ゲリラ活動を行ない、アフリカでは文化的専門知識を利用して紛争を防止する――これが軍の思惑だ。

少なくとも、理論上は。

『Men's Journal』誌の最新号には、映画制作も行なっている作家のRobert Young Pelton氏が、アフガニスタンの『Human Terrain Team』に同行したときのルポが掲載されている。Pelton氏の記事は、ある意味愉快で参考になるが、非常に心をかき乱すものでもある。

Pelton氏は、バグラム空軍基地(これは、アフガニスタンのパルワン州東部に、米国のミニ商店街を移植したような所だ)に到着した後、あるHuman Terrain Teamに合流した。

このチームは、「ラオス人のDNA」に関する専門家、中国語を話せる米Intel社の元アナリスト、元歩兵といったタイプの人物、アフガニスタン系米国人の自動車整備士から成るものだった。

その後、Jeremy Jones中尉の車に同乗した。同中尉はインディアナ州出身で、レストラン『Cheesecake Factory』の元ウェイターだが、現在このプログラムの研究マネージャーとして働いている。

Jones中尉(上の写真)は、軍の人類学チームを代表する友好的な人物だ。自分たちの働きによって、担当地域での「実際の」(言いかえれば、生死がかかった)作戦が40〜60%減少した、とJones中尉のチームは主張している。Jones中尉はまさに、善意のある研究者のように見える。

一方、Pelton氏は途中で、別のタイプのHuman Terrain Teamにも出会った。こちらは武器や装備を携行した小編成のチームで、アフガニスタン人を捕まえて尋問し、人的情報データベースを増強させていた。

Pelton氏は彼らのチームに、Jones中尉による文化研究チームとの違いを説明するよう求め、メンバーの1人はPelton氏に次のように答えた。「私たちは、おしゃべり専門のチームではなく、撃つのが専門のチームなのだと思う」。

軍は「ソーシャル・ネットワークのマッピング」に熱心に取り組んでいるが、これがその裏側の実態であるようだ。まさに、『闇の奥』[映画『地獄の黙示録』の原作となった、ジョゼフ・コンラッドの代表作]を思い出す。

Men's Journalの記事「アフガニスタン:新たな心理戦」全文は、こちら

[Pelton氏は、中東で米軍が契約している「傭兵」に関する著書『Licensed to Kill: Hired Guns in the War on Terror』も書いている人物。下の画像の前列、右から2番目]


「傭兵」たちと一緒のRobert Young Pelton氏。画像は別の英文記事より

「警察がスパイウェアで個人のパソコンを捜査」:世界で拡大

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Photo: AP

英内務省は、英国の警察あるいは情報局保安部(MI5)の職員が、電子メールの傍受や、コンピューターを使うその他の行動の監視を許可する令状を得ることなく、家庭やオフィスなどのコンピューターに侵入することを認める提案を支持している。

欧州連合(EU)閣僚会議からのこの提案は、英国住民が犯罪に関与している疑いがあって欧州の他の国々から要請を受けた場合、英国の警察が、対象者のコンピューターにスパイウェアをインストールするというものだ。

このような監視活動を実行するのに必要な唯一の条件は、「重大な」犯罪(少なくとも3年間の実刑判決の可能性があるあらゆる犯罪)を捜査する上で、上級の捜査官がこれを「適切」かつ必要だと判断することだ。たとえばテロ行為、小児性愛、個人情報やクレジットカード情報の窃盗などの容疑者が対象となる可能性がある。

遠隔からの操作を可能にするため、捜査機関は対象者のコンピューターにウイルスを含んだ電子メールを送信したり、住居に侵入してキーロガーをインストールしたり、あるいはワイアレス・ネットワークの近くに監視用の車を差し向けてトラフィックを傍受したりできることになる。

英国の警察は、すでにコンピューターを遠隔から監視する権限を持っている。1990年代に成立した法律が根拠だ。しかし、英『Times』紙日曜版『Sunday Times』によると、こうした遠隔監視はどうやら現在までほとんど実施されなかったようだという。EUの提案は、フランスやドイツなど、あらゆるEU加盟国が、英国住民の監視を要求できるようにするものだ。

[過去記事「FBI、スパイウェアを捜査に活用」では、米国でスパイウェアが捜査に使われている例を詳説している。こうした監視は盗聴の許可がなくても可能とされており、その根拠になっているのは、インターネットを利用中のユーザーは、データの「プライバシーに対する期待」を抱いていない、という考え方だという。

また、オーストラリアでも、2004年に成立した「Surveillance Devices Act(監視装置法)」の下、警察は容疑者のコンピューターにスパイウェアやトロイの木馬、キーロガーをインストールすることができる]

バトルチップ:米軍が開発する次世代マイクロマシン

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Image: Micro Cryogenic Cooler/Darpa/サイトトップの写真はWikipedia Commonsより

米国防総省の主要な研究部門である国防高等研究計画庁(DARPA)は、低温冷却器、真空ポンプ、レーダー、赤外線ビデオカメラなどあらゆる機器をチップ程度の大きさまで小型化する研究に取り組んでいる。うまくいけば、米軍向けにはまったく新しい種類の兵器やレーダー、そしてわれわれ一般人には新しいガジェットが手に入る可能性がある。

私は3月5日(米国時間)付けの『Guardian』紙で、あらゆる機器をマイクロチップほどのサイズに小型化するDARPAの驚くべきプログラムの一部について紹介した。このプログラムの最終目標は、「低電力で体積が小さく軽量なマイクロセンサーやマイクロロボット、マイクロ・コミュニケーション・システム」など、新世代の「マッチ箱サイズの高度に統合された機器およびマイクロシステムのアーキテクチャー」の開発だ。

チップ上で化学分析

研究者たちの世界では数年前から、「ラボ・オン・チップ」(LOC)センサーが関心を集めている。これらの小型機器は[毛細管が組み込まれた1枚のチップ上で化学分析ができるもので、例えば血液から]バクテリアやウィルスなど調査対象を検出・確認することなどに使用される。その名の通り、ミクロレベルで作られるので、サンプルが少量で済み、(距離と熱容量が小さいので)非常に速く結果を出せる。

この狭い研究分野における多くの進歩に、DARPAは影響を及ぼしている。それどころか、DARPAの5つの部門のうち1部門は、こうしたマイクロ技術の専門部門だ。

冷却

熱画像センサーや超伝導性部品など、ある種の電子部品にとって問題になるのが冷却だ。こうした冷却には通常、液体の供給と多くの電力が必要だが、DARPAの『低電力Micro Cryogenic Cooler(MCC)』はこうした問題を解決すると見られる。

これは、超小型機械の機器全体ではなく、特定の部品を冷却するという発想で、「微小機械熱分離構造(PDF)」を利用している――電流が流れると、熱電効果によって冷却する仕組みだ。0.1ワットの電力を流すだけで、4立方センチメートルの物体をマイナス200度まで冷却できると想定されている[図の説明では、「1mWで1立方センチメートルを冷却」とある]。

[熱電効果は、電気伝導体や半導体などの金属中において、熱流の熱エネルギーと電流の電気エネルギーが相互に及ぼし合う効果の総称。そのひとつペルティエ効果は、異なる金属を接合し電圧をかけると、接合点で熱の吸収・放出が起こる効果]

超小型カメラ

Microsensors for Imaging』(MISI)は、短波長の赤外線スペクトルで作動する超小型カメラの開発を行なうプログラムだ。

特に、重さ200グラムの頭部装着型システムのほかに、超小型飛行機(MAV)用の重さ10グラムのカメラの開発に重点的に取り組んでいる。MAV用は、「標的認識範囲」が100メートル以上、視野が40度で、「光学的品質が高い」。シリコン上にあり、小型なので、既存のカメラと比べて非常に頑強で信頼性が高い。

すべてがチップ上に搭載されているこうしたカメラが市販され、低コストで大量生産されれば、侵入者を検知するセンサー、新しい地上ロボット用の汎用プラグイン式ビデオカメラ、爆弾やミサイルの誘導システムなど、あらゆる用途が実現可能になる。多くの企業が関心を抱く可能性があり、数年後には外国製のコピー製品も出現していくのではないかと思う。

日光に当てると自己修復する新塗料

数年後には、車のバンパーの引っかき傷を取り除くためには、日の当たるところに停めておきさえすれば良くなるかもしれない。紫外線光を浴びると自己修復するポリウレタン塗料が開発されたのだ。

研究の共著者の1人である、南ミシシッピ大学のMarek Urban教授(化学)は次のように語る。「この新素材にはさまざまな実用的な使い道がある。引っかき傷のできそうなものは何でも――電子部品とか、航空機とか、自動車とか、思い付く限りのものは何でも――、この塗料でコーティングすれば良い」

自己修復塗料によって、さまざまな製品の維持と補修が最低限で済むようになり、消費者は費用を節約できるし、廃棄物の削減にもつながる。

「自動車の耐用年数が延びるだろう。見た目も、新品同様の状態を長い間保てる」とUrban教授は言う。

今回の塗料は、人類にとって初の自己修復素材というわけではない。2001年にイリノイ大学の研究チームが、ポリマー塗料に液体入りの小さなカプセルを仕込んで、塗装がひび割れたときにはカプセルの中の補修材が損傷部を満たして修復する、という仕組みを発案した(日本語版記事)

イリノイ大学の研究チームの1人、Scott White教授は、この技術を基に2005年に会社を立ち上げた。このAutonomic Materials社は数ヵ月以内に、自己修復塗料を市場に投入できる見込みだと、『MIT Technology Review』誌が昨年末に報じている

別の方法を考案した研究者もいる。2002年に、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)と南カリフォルニア大学(USC)の研究チームが、高温にさらされると短時間で自己修復する化学物質を完成させた。

南ミシシッピ大学による今回の塗料も、修復を始めさせるのに外部からの刺激が必要だという点ではこれに似ている。だが今回の塗料の場合、必要な刺激は紫外線光なので、与えるのが難しくない。数分間日に当てるだけで、修復を始めさせるには充分だ。

Urban教授と、論文の共著者でやはり南ミシシッピ大学のBiswajit Ghosh氏は、キトサン(節足動物の外殻の主成分であるキチンをアルカリで処理したもの)をポリウレタンに混ぜ込んで、今回の塗料を完成させた。この新素材に小さな刻み目を付けてから、太陽光から得られるのと同程度の強さの紫外線光を浴びせたところ、一連の反応が引き起こされ、損傷を受けた分子が互いに再結合した。こうして、約30分のうちに切り傷が修復されたという。

この研究の詳細は、『Science』誌3月13日号に掲載されている。この新素材の作用は湿気に左右されない。またUrban教授によると、この塗料はかなり安価に製造できるという。

途上国では「携帯電話が銀行」:世界人口の6割が携帯を使う時代

国連機関のITU(国際電気通信連合)が今週発表した報告によると、世界全体の携帯電話の契約数は2002年から2008年12月までの7年間に、10億件から41億件へと4倍に増えている。

つまり、世界人口の約60%が、携帯電話の契約を結び、不要な機能や追加の料金プランを売り込む電話会社の従業員のセールストークを聞くという苦行に耐えなければならなかったということだ。これこそ「ワンワールド」というものではないだろうか? みなが同じ苦痛を味わうようになっているのだ。

今回の報告の中で、こうした増加の大部分は、生存や実用性のために携帯電話を利用する発展途上国の人々が直接の原因だと指摘されている。[2002年には、携帯電話契約の半分が途上国のものだったが、現在は3分の2を占めるという]

銀行口座を持たない人々にとっては、携帯電話の主要な用途の1つは、電話による送金サービスの利用だ。たとえば、ナイジェリアケニアの企業は最近、今後1年間にこうしたサービスを拡大すると発表した。

[途上国では銀行インフラが整っておらず、銀行口座を持たない人も多い。そこで、銀行口座を持たない携帯電話ユーザーを対象とした送金サービスが世界各国で始まっている。情報通信総合研究所の記事によると、たとえばボーダフォンはケニアの移動通信事業者、サファリコムと共同で、ケニアにおいて携帯電話を利用した支払いサービス「M-PESA」を2007年から開始している。携帯電話加入者がサファリコムの代理店で自分のアカウントに料金を充填。同じサービスに加入するサファリコム・ユーザーへ送金したり、この口座を銀行口座のように利用して商品を購入することが可能になる。マレーシアなどでは海外送金にも使われている]

報告では他にも2、3の興味深い技術動向が指摘されている。インターネットの利用は、世界全体では2002年の11%から23%へと倍以上に増えているが、発展途上国でインターネットに接続しているのは平均して20人中1人にとどまっている。

報告では、「固定電話」のブロードバンド接続が最も高速なウェブ接続を提供するが、一般に料金が高いので、今のところ先進国ではインターネット接続している人々の約80%はこうしたサービスを利用していないことも明らかになった。発展途上国でブロードバンド接続しているのは5%にとどまる。

報告で注目すべき興味深い点がもうひとつある。携帯電話の利用が大幅に増加しているのと同時に、携帯電話向けの高速ウェブ接続が、企業や家庭向けの通常の高速接続と比べて急速に増加していることがわかる。これは、地球上の多くの人々が将来利用および依存しそうな機器は断然携帯電話であることを意味するだろう。

中国、外貨準備の運用失敗で800億ドル目減りか 英FT紙

【3月16日 AFP】中国が外貨準備の運用多角化を図るため金融危機直前に米国株式に投資した結果、800億ドル(約7兆9000億円)以上目減りした可能性があると、英フィナンシャル・タイムズ(Financial TimesFT)紙が16日、報じた。

 約2兆ドル(約196兆円)の外貨準備の運用は、国家外貨管理局(State Administration of Foreign ExchangeSAFE)が実施している。

 米シンクタンク「外交問題評議会(Council on Foreign RelationsCFR)」のエコノミスト、ブラッド・セッツァー(Brad Setser)氏は、外貨管理局が外貨運用多様化の一環として外国株式投資に着手した時期は2007年始めごろとみられると、FT紙に語った。投資は米国でサブプライムローン(信用力の低い個人向け住宅ローン)問題が表面化してからも続いたという。

「政府系ファンドを含む米金融商品への中国国家外貨管理局による投資ポートフォリオは、外国政府のなかで最大級だ」(セッツァー氏)

 しかし、外貨管理局は投資先を公開していないため、その投資結果予測は、大きな誤差が生じることは避けられない。

 温家宝(Wen Jiabao)首相は前週、第11期全国人民代表大会(全人代)閉幕後の記者会見で、米国を投資先とした中国の巨額資産の行く末について「多少、懸念している」との見解を語っている。(c)AFP

中国、最新鋭監視船を南シナ海に派遣

【3月15日 AFP】北京の大衆紙・新京報(Beijing News)は15日、中国政府が南シナ海(South China Sea)に最新鋭の監視船を派遣したと伝えた。

 同紙によると、監視船は海軍の救助船を転用したもので、西沙(パラセル)諸島(Paracel Islands)と南沙(スプラトリー)諸島(Spratly Islands)周辺の中国が排他的水域と主張している海域をパトロールし、中国の漁船や商船を保護するという。

 8日には中国の艦船5隻が米国の海洋調査船を妨害した。中国側は調査船が中国の排他的経済水域に入っていたと主張するが、米国はこれを否定している。

 その後米海軍は調査船の護衛のため中国南方沖の公海に複数の駆逐艦を派遣し、南シナ海の緊張は一層高まっている。

 西沙・南沙両諸島は以前から紛争の火種になっていた。南沙諸島は中国、ベトナム、フィリピン、マレーシア、ブルネイ、台湾が領有権を主張。西沙諸島は実効支配している中国のほかにベトナムと台湾が領有権を主張している。(c)AFP

2009年3月12日木曜日

掃討作戦が激減、「退屈」が新たな敵 イラク駐留米軍

【2月28日 AFP】武装勢力の掃討作戦がめっきり減り、完全撤退への動きも始まったイラクの駐留米軍。若い兵士たちにとって、このごろでは「退屈」が新たな敵となりつつある。

 バグダッド(Baghdad)空港に隣接したキャンプリバティー(Camp Liberty)では、イラクとは隔絶した生活が営まれている。メインストリートの「USAフードコート」には、バーガーキング(Burger King)、タコベル(Taco Bell)、サブウェイ(Subway)などのファストフード店に姿を変えたトレイラーが軒を連ね、ビジネスを競い合っている。

 キャンプ内の巨大スーパーでは、ほとんどすべての生活必需品に加え、DVDやCD、MP3プレーヤー、iPodなども手に入る。任務中のアルコールは禁止されているが、本国では経済制裁で輸入が禁止されているキューバの高級葉巻も、ここでなら楽しめる。

 キャンプ前にあるイスラム教のモスクから、夕拝の呼びかけが流れてくるなか、兵士たちは隣接したアル・ファウ(Al-Faw)宮殿の池を挟んでゴルフの技を磨いている。その池で釣りをしたりアヒルに餌をやる兵士、故ヤセル・アラファト(Yasser Arafat)元パレスチナ解放機構(PLO)議長が故サダム・フセイン(Saddam Hussein)大統領に贈ったとされるひじ掛けいすに座って写真を撮り合っている兵士たちもいる。

 この宮殿は、フセイン大統領がイラン・イラク戦争(1980-88年)の「勝利」を記念して建てさせたものだが、現在はフセイン政権の転覆を記念して「勝利の宮殿」と呼ばれ、米軍を中心とした多国籍軍の本部となっている。イラク国内に展開するほかの部隊にとっては、観光名所にもなっている。

■「銃を使ったことはほとんどない」

 2003年3月のイラク進攻以来、米軍には4250人の犠牲者が出ているが、ここ最近は全土で暴力が収束しつつあり、この数か月間はキャンプへの攻撃は起きていない。20歳のある兵士は「ここに来て4か月だけど、銃を使ったことはほとんどない」と語る。

 今年1月1日、バグダッド中心部の米軍管轄区域グリーンゾーン(Green Zone)の治安権限がイラク政府に移譲され、イラクの主権の完全回復に向けた歩みが始まった。だが前年11月のイラク政府との安全保障協定に基づき、米軍の戦闘部隊は2011年末まではイラクに駐留する。

■イラク人と交流しない米兵

 再び、キャンプリバティー。イラク南部に駐留する3人の従軍牧師が若い護衛らに、古代ウル王朝のジッグラト(ピラミッド型神殿)や預言者アブラハムの生誕地の写真を見せている。文官向けにイラク国内の歴史遺産を訪問するツアーが実施されているのだ。

 一方、イラク軍と活動してきた兵たん担当のエドワード・ドーマン(Edward Dorman)大佐は、「米国とイラクは、文化の違いを克服する努力をしなければならない」と説く。だが、共同の任務やイラク人通訳とのやりとりをのぞいては、米兵14万6000人は、キャンプの外側にいるイラク人とはほとんど接することはない。(c)AFP/Haro Chakmakjian

タリバン、音楽ソフトやDVDの販売店を爆破 パキスタン北西部

【3月6日 AFP】パキスタン・ペシャワル(Peshawar)北西の町で、イスラム原理主義組織タリバン(Taliban)の戦闘員が、音楽ソフトやDVDを販売していた市場の商店16店を爆破した。地元警察が5日、発表した。

 地元警察によると、爆発が起こった時は市場は閉まっている時間帯だったため、負傷者などはいなかったという。

 タリバンはここ数年、音楽や映画はイスラムの教えに反するとして、パキスタン北西部一帯で、音楽や映画ソフトなどを販売する商店多数を爆破している。(c)AFP

英、大手銀ロイズを実質国有化 不良資産に政府保証

【3月8日 AFP】英政府は7日、英大手銀ロイズ・バンキング・グループ(Lloyds Banking Group)の株式保有比率を43%から65%に引き上げ実質国有化すると発表した。資産保証制度の適用を認め、約2600億ポンド(約約36兆円)の不良資産について将来発生する損失の大半を保証する。

 産保証制度が適用されると、今後損失が発生した場合、250億ポンド(約3兆4000億円)まではロイズが処理するが、これを超えると損失の90%を政府が保証し、肩代わりする。

 ロイズは制度申請に約160億ポンド(約2兆2000億円)を政府に支払う。

 資産保証制度の適用を受けるのは、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(Royal Bank of ScotlandRBS)に続き2番目となる。これにより英銀行大手4行で独立を維持しているのはバークレイズ(Barclays)とHSBCのみとなる。(c)AFP/Robin Millard

1月の国際経常収支、13年ぶり赤字転落

【3月9日 AFP】財務省が9日発表した1月の国際収支速報によると、海外とのモノやサービスの取引状況を示す経常収支は、1728億円の赤字となった。赤字転落は13年ぶりで、赤字額も1985年1月に同統計が始まって以来最大。

 世界的な経済の低迷で輸出が落ち込んだためで、特に輸出をけん引してきた自動車、ハイテク機器の需要が大きく低下したことが響いた。前年同月の経常収支は、1兆1637億円の黒字だった。(c)AFP