2009年6月28日日曜日

頼み事は右耳から:「左耳と比べて2倍の効果」の理由


Image: flickr/THEfunkyman。サイトトップの画像は、イアリングで飾るマサイ族の青年たち。Wikimedia Commons

ここはイタリア。人いきれでむんむんする騒々しいダンスクラブで、1人の女性が近寄ってくる。テクノミュージックに声をかき消されないように、女性はぴったりと身を寄せて、あなたの耳元で声を張りあげる。「ねえ、煙草を1本いただけない?」

話しかけられたのが右耳だったら、あなたが煙草を差し出す可能性は、左耳に声をかけられた場合の2倍になる。これが、イタリア[アブルッツォ州]の都市ペスカラのクラブで行なわれた実験で得られた結論だ。

調査員の女性がクラブ客に話しかけたこの実験で、煙草を差し出したのは、右側から話しかけられた場合は88人中34人だったのに対して、左側からの場合は88人中17人にとどまったという。

これは、人間の両耳から入る音が脳内で別々に処理されていることを明らかにする、一連の研究における最新の成果だ。人は音声入力を右耳で聞きとることを好む傾向があり、両耳に刺激が与えられると、右耳に入ってきた音節のほうを優先する傾向があることは、かねてから指摘されている。脳科学者は、脳の左半球において右耳の聴覚の流れのほうが優先されるという仮説を立てている。脳の左半球は、言語の大部分が処理されている領域だ。

[言語野は大脳皮質の左半球にあることが多いが、右利きの人で数%、左利きの人で30〜50%程度が、右半球に言語野をもつことが知られている。電話での効き耳について研究している群馬大学の椎原康史教授によると、右は約20%、左は30%、両方は50%。8割の人は、メモを取る関係で左耳で通話を聞く習慣だという]

今回の研究で驚くべきことは、どちらの耳を選ぶかによって、自然な環境(すなわちこの研究を行なった研究者たちが「生態学的な環境」と呼ぶ場)にいる被験者たちの行動に、これほどまでにはっきりとした影響が出るという事実だ。右耳から話しかけられるほうが鷹揚な気分になれるのはなぜなのだろうか?

この実験を実施した、イタリアのG・ダヌンツィオ大学のDaniele Marzoli氏とLuca Tommasi氏によると、脳は左半球が積極的感情に、右半球が否定的感情にそれぞれ同調しているらしいという。右耳に話しかけられると、その言葉は、頼みを受け入れやすいほうの脳の部分に送られていく。

ストレートに煙草を求める実験のほかに、人々のやりとりを単に観察する実験、および、どちらかの耳に限定せずに煙草をくれと頼む実験も行なった。両氏がナイトクラブという場所を選んだのは、大音響の音楽のおかげで、煙草をもらう役の女性が相手に近づいて、片方の耳にじかに声をかけても、「奇妙に」思われずにすむからだ。

酔っぱらいがいっぱいの場所での実験は型破りに思えるかもしれないが、両氏は、実生活の環境で行なう研究は、きわめて人工的な実験室内で行なわれる心理学研究の偏りを是正する、価値あるものだととらえている。

「[脳の活動を記録する]イメージング技術が大々的に活用される時代だが、こういった技術は被験者に重大なストレスをかけ、自由に行動する場合の神経作用を観察しにくいということは明らかだ。脳の働きの"生態学的な"観察記録を提供し続けていくことがきわめて重要だということを、最後に述べておきたい」と、両氏は論文を結んでいる。

英国、日本への化学兵器攻撃を検討 大戦中の機密文書で明らかに

【6月27日 AFP】第二次世界大戦(World War II)中、米国による原爆投下の約1年前に、英国が東京への化学兵器攻撃を検討していたことが、26日に公開された秘密文書で明らかになった。

 この文書は英国立公文書館(National Archives)に65年間保存されされていたが、このほど秘密指定が解除された。

 文書は、1944年に民間人が暮らす地域に化学兵器を使用することを明確に提案している。これによると、まず、燃えやすい日本家屋を爆撃で破壊したあと、「より現代的な地域」を対象に毒ガスによる攻撃を行うとしている。

 計画が実行に移されることはなかったが、文書には最大限の被害を与えるための手法が克明に記されている。寒い冬の間はマスタードガスの効果が弱まる可能性があるため夏に攻撃することを推奨しているほか、強い雨は毒物を洗い流す可能性があるので、持続的な効果を得るには雨の合間をぬって攻撃すべきだ書かれている。

 また数多くの家屋が建ちならぶ道が狭い地域では、ガスの流れが悪くなるかもしれないと注意を促している。兵器としてはマスタードガス、ホスゲン、焼夷弾の使用が考えられるとしている。

 英国立公文書館の現代史専門家マーク・ダントン(Mark Dunton)氏は「米国より先に英国が日本の都市の大規模攻撃を考えていた可能性を示す点で興味深い文書だ。現在の感覚では民間人に対する化学兵器攻撃の効果がこれほど客観的に記述されていることはショッキングに思えるかもしれないが、戦争のプレッシャーがこのような恐ろしい論理を生みだした」と指摘した。(c)AFP

2009年6月20日土曜日

【ベトナム・インドシナ】10年後にコメ輸出ゼロも、ベトナム

6月19日8時30分配信 NNA
 農業地方開発省の栽培局は、国内のコメ生産が10年後には国内市場向けで手一杯になり、輸出に回せなくなる可能性を示唆した。 ベトナムは現在、年間約400万~500万トンのコメを輸出。タイに次ぐ世界第2位だ。しかし国内需要の増加と稲作地の縮小で、2020年にはその地位を維持するのは難しいと指摘している。  国営ラジオVOVニュースサイトによると、国内最大の穀倉地帯メコンデルタの2007年の収穫量は約1,900万トン、作付面積は190万ヘクタールを超えていたが、20年には収穫量は2,100万トンとあまり伸びず、作付面積は180万ヘクタールに減少することが予想されるという。これに対し、20年までに同地域の人口は300万人、全国の人口は1,300万人それぞれ増加する見込み。  一方で、ベトナム産のコメの価格が、世界平均を約20%下回っており、他国産に比べて利幅がはるかに小さいという。  ホーチミン市農林短大のファン・フー・ヒエン教授は、収穫力向上のため、機械化をはじめとする農業近代化促進を提唱している。<ベトナム>

公費“天国”改まらず 飲み食いなどで11兆円超 中国

6月19日11時15分配信 産経新聞
 【北京=野口東秀】中国政府高官による公費を使った飲食や、公用車購入に批判が高まっている。昨年1年間だけで「公費の飲み食い」「公費の海外出張」「公用車関係費」が合計で約8000億元(約11兆2000万円)に上ることが明らかにされた。 国営新華社通信などによると、約8000億元のうち「公費の飲み食い」は約2000億元、「公費の海外出張」「公用車関係費」はそれぞれ約3000億元という。これらは昨年の国家予算の歳出6兆800億元の約13%を占める。 新華社は「公用車は公務が3分の1で、残りは幹部と運転手が3分の1ずつ私用で使っている」などとし、幹部らの堕落ぶりを批判している。 中国政府は今年2月に「人民の財産を浪費する堕落幹部には相応の代償を払わせる」と警告しているが、北京市内でも幹部が公用車で買い物に出掛けたり、高級レストランで飲食する光景はよく見られる。 中国紙・検察日報などによると、最近公表された「中央国家機関の公用車調達リスト」に高級車のBMWとベンツが入った。中国で製造されるものだが、インターネットでは「どこまで官僚は庶民をないがしろにするのか」「国産ブランドの調達比率を高めようとする政策に反する」などと批判が出ている。

国内のイラン関連資産約16億ドルを凍結=英財務省

6月19日12時52分配信 ロイター
 [ロンドン 18日 ロイター] 英政府は18日、英国内の約10億ポンド(16億4000万ドル)のイラン関連資産を凍結したと発表した。国連安全保障理事会などの制裁決議に基づくもの。 財務省は議会に提出した文書で「国連決議と欧州連合(EU)の制裁に基づき英国内で凍結された資産は、約9億7611万ポンドになる」と明らかにした。同文書にはこれ以上の情報は含まれていない。 イランでは、前週12日に実施された大統領選挙でアハマディネジャド大統領が公式に勝利を宣言。これに対し対立候補のムサビ元首相の支持者が反発、1979年のイラン革命以来最大の抗議活動が続くなど、混乱が広がっている。 国連安保理はイランの核開発問題をめぐり、2006年以来3回、同国に対する制裁決議を採択。制裁には核開発や弾道ミサイル開発に関与が疑われる企業や個人の資産の凍結も含まれる。 EUはすでにイランの銀行最大手のBank Melliの資産を凍結している。

CIAが職員募集、失業中の金融マンも歓迎

 [ニューヨーク 18日 ロイター] 米中央情報局(CIA)が職員を募集している。6月22日にニューヨークの某所で面接が行われる予定だ。 CIAはラジオでの求人広告で「経済や経営、金融関係のプロのみなさん。利益を追い求めることだけでは満足していないのなら、CIAにはほかにはない仕事があります」と呼びかけた。 CIAの採用担当スポークスマン、ロン・パトリック氏はロイターテレビの取材で、これまでに失業した金融関係者や大学院の新卒者など数百人の応募があったと明かした。  採用試験では、経歴や健康状態が厳密にチェックされ、うそ発見器も使用されるという。 当初の給与は、新卒者の場合は6万ドル(約580万円)で、経歴により最高で16万ドル(約1550万円)。手厚い福利厚生もある。 パトリック氏は「CIAの職員は国のために働いており、収益を目指す企業とは考え方が異なる。これまでの姿勢を変えることができれば、(金融関係者も)CIAでうまくやっていけると思う」と述べた。

2009年6月10日水曜日

北朝鮮国境レポート:経済力の圧倒的な差と「核問題」


板門店の軍事境界線を見る。なお、トップサイトの画像はWikipediaより

大韓民国ソウル発――朝鮮半島で全面戦争が起きるおそれはどの程度あるのだろう? この問いかけは、北朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)の最近の「ロケット打ち上げ」や、寧辺(ヨンビョン)核施設の再開(日本語版記事)という脅しを考えるとき、大きな意味を持ってくる。

だが筆者は、最近韓国を訪れ、非武装地帯へのツアーに参加した結果、あの「Land of the Morning Calm」[朝鮮の英語別名としてよく使われる]で大きな戦争が起きるという心配は現実的ではない、と考えるようになった。その理由を説明しよう。

われわれを乗せたバスがソウルを抜けて北朝鮮へと向かう道中、首都圏全体で2300万人が暮らすこの都市ソウルが、いかに現代的で繁栄しているかということに改めて感銘を受けた。ガラスと鋼鉄の高層建築が見渡す限りそびえ、その多くが、世界でも最大級の企業のロゴを屋上に冠している。もちろん、それも道理だ。米中央情報局(CIA)によれば、韓国は世界14位の国内総生産(GDP)を誇っているのだから。[GDPの各国順位リストには、IMF、世界銀行のものもある。14位というのは、CIA調査による購買力平価ベースのGDP]

首都を北に進むにつれ、人口はだんだんと少なくなっていくが、現代的なインフラは変わらない。8車線の高速道路、現代的なホテル、多すぎるほどの自動車。そしてもちろん、要塞がある。幾重にも連なる防衛のための施設や障害物が、戦闘地域の前線としてのシステムを構築している。さらに北に向かうと、たくさんの掩蔽壕や監視塔、延々と連なる有刺鉄線が見えてくる。北朝鮮が攻め込んでくるなら、韓国は一歩も譲らないという計画だ。

ツアーがまず向かった見学地の1つが、烏頭山統一展望台だ。ハンガン(漢江)とイムジンガン(臨津江)を見晴らす山頂にあって、韓国側から北朝鮮を望む、観光客向け偵察基地とでも言おうか。

烏頭山の展望台では、北朝鮮の生活を映したビデオや、今見おろしている景色そのままの地形モデルを見ることができる。高倍率の双眼鏡で北朝鮮領をのぞくことさえできる。

のぞき見えるのは、世界で94番目のGDPの国だ。畑にいる少数の農民を除けば、何一つ動くものがない。背後の川沿いには何車線もある韓国の高速道路が走っているが、目の前には、どんな種類の自動車も見えなければ、舗装道路さえない。無骨で醜悪なコンクリートの建物は見えるが、窓があるようにさえ見えない。電気の気配もない。

展望台の建物の中には、『クムガンビール』(金剛ビール)など、北朝鮮の輸出製品が陳列されているが、どれも安っぽく不格好に見える。[金剛山は北朝鮮にある有名な山。韓国からの観光も行なわれていたが、2008年に韓国女性が立ち入り禁止区域に入ったとして射殺される事件が起きてから中断されている]

では、こういう状況が朝鮮半島の軋轢にどんな意味を持つのだろう? すべてだ。(文字どおり)飢餓と成育不全の経済状態である国が、経済的に世界でもトップクラスの、活気あふれる国を凌駕するチャンスなどまったくない。

確かに、北朝鮮が攻撃をかけ、血の惨事を引き起こすことはできるかもしれない。だが、それでどうなるというのだろうか? 掩蔽壕やトンネルから出た瞬間から、彼らは現代社会の餌食になる。北朝鮮の農民出身の戦車長は、蛇のように縦横にのたくるソウルの高速道路網を、GPSなしで走り回ることはできるかもしれない。だが、GPSによるナビゲーションシステムは、韓国の精密な武器が彼らを見つけ出し攻撃するのに申し分ない威力を発揮するはずだ。韓国の現代的なインフラを完璧に破壊してしまう以外に、北朝鮮が韓国を管理していける見込みはまるでない。

もちろんこの状況は、どんなに北朝鮮に制裁を加えたところで、同国の政権が終わりになることはないことをも意味している。微積分による限界のようなもので、限りなくゼロに近づくだけのことでしかないだろう。

そしてこれこそ、平壌(ピョンヤン)政府が核を持つ意味だ。権力を握るための手段。世界最大の交渉材料。――北朝鮮は韓国に戦争を仕掛けることはできない。軍隊がソウル北方の非武装地域で粉砕されたら、政権は終末を迎える以外に道は残っていないのだから。

北朝鮮の地下核実験:規模等をどう測定するか


画像は別の英文記事より

北朝鮮は25日(現地時間)に核実験を行なったが、各国の情報機関が集めようとする計測情報(MASINT)の最初の手がかりは地震データだ。[a href="http://en.wikipedia.org/wiki/Measurement_and_Signature_Intelligence" target="_blank">計測情報(MASINT)は情報機関が扱う情報タイプのひとつで、ほかに公開情報、電波情報、画像情報、人的情報がある]

米国地質調査所は、25日に北朝鮮でマグニチュード4.7の地震が発生したと報告した。[包括的核実験禁止条約(CTBT)準備委員会では4.52、日本の気象庁は5.3を観測したと発表している]。

これらのデータは、2006年に北朝鮮が初めて核実験を実施したときに発生した揺れよりも大きい。2006年では、米国地質調査所はマグニチュード4.2、CTBT準備委員会は4.0、韓国では3.58〜3.7、[日本は4.9]と発表している。[CTBTの推定では、今回の核実験の規模は前回の約4倍としている]

地震の波形は発生場所の地質によって異なるが、都合のよいことに、核実験が行なわれたのは[北朝鮮北東部にある]咸鏡北道吉州郡の豊渓里で、中国の新華社通信によると、北朝鮮が2006年10月9日に最初の核実験を実施した場所と同じだという。つまり、地理的な点で同一条件による比較対象実験のようなものができる可能性があるのだ。

地下核実験では多くの場合、地表の陥没によるクレーターが生じる。写真は1980年代に米国ネバダ州にある地下核実験場で撮影されたもので、以前行なわれた地下実験で生まれたクレーターが見える。英文Wikipediaより

もちろん、手に入りそうな情報は地震データだけではない。もし、たとえば実験現場の地表に穴が開いた場合(文末に動画を掲載)は、放射性雲(プルーム)が存在することを意味し、測定も可能だ。これが測定できれば、小型核爆弾のシミュレーションを行なうために従来型の爆発物が使われた場合を除外するのに役立つ。

核関連条約の監視と核事象の検出を行なう米国空軍技術応用センター(AFTAC)は、核物質の痕跡を示す粒子を検出できる空気試料採取装置とフィルターを装備した空中給油機『Constant Phoenix』(以下の画像)を保有している。


Photo credit: 米国空軍

冷戦中、米国では同種の航空機による部隊を保持していたが、現在では1機しか残っていない。2006年には北朝鮮付近を飛行して、同国初の核爆発の発生を確認した。Constant Phoenixが再び多忙な日々を送っていることは間違いない。

[以下の動画は、地下核実験をテーマにしたサイトで紹介されていたもの。他にも多くの動画や画像が紹介されている]


脳の活動パターンから「空間記憶の読み取り」に成功


被験者の脳の断面図(矢状断)。Rは脳の右側。
Image credit: Current Biology。サイトトップの画像は神経細胞、Wikimedia Commonsより


記憶と空間認知をつかさどる脳の部位である『海馬』は、活動に一貫したパターンが存在せず、その働きを詳しく解明することは困難と考えられてきた。しかし、まもなくその謎が解けるかもしれない。

バーチャル空間の中にいる被験者の脳をスキャンし、脳の活動を分析したところ、被験者が空間のどの位置にいるのか特定することができたというのだ。

「いわば被験者の空間記憶を読み取ることに成功したわけだ」と、今回の研究論文を執筆した1人で、ロンドン大学ユニバーシティー・カレッジ(UCL)の認知神経科学者であるEleanor Maguire氏は話す。「空間記憶がニューロン(神経単位)で符号化される過程には、必ず何らかの構造が存在するはずだ。そうでなければ、われわれに記憶を予測できたはずがない」

Maguire氏の研究チームが注目したのは、海馬だ。海馬とは、空間的関係や短期記憶を処理する大脳辺縁系の一部であり、人間が空間を移動するときは、自分が今どこにいるか把握するのに海馬の活動が役立っている。

しかしこれまでの動物実験では、特定の海馬の活動と記憶とを関連付けることができず、ラットを使った実験では、空間記憶はランダムに蓄積されていることを示唆する結果が出ていた。そのため、記憶の蓄積には一定のパターンは存在しない、少なくとも、研究者が解読、応用できるようなパターンは存在しないとみられていた。

こうした認識を覆すのが、『Current Biology』誌に3月12日(米国時間)に掲載されたMaguire氏らの論文だ。といっても、脳から記憶をじかに取り出せる日が来るのはまだ遠い先の話だが、この研究成果は、アルツハイマー病やその他の認知症の研究に新たな道が開ける可能性を示唆している。


Image credit: Current Biology

研究チームは、バーチャルリアリティで作られた室内を移動する被験者4人に対し、機能的磁気共鳴画像法(fMRI)装置を使って海馬の血流を測定した。[論文によると、15メートル×3.15メートルの「部屋」が2つあり、それぞれに複数の「目標物」がある。被験者は、これらの目標物の間を移動するよう指示された]

実験の際に着目されたニューロン群は、ロンドンのタクシー運転手を被験者に使ったMaguire氏の先行研究で特定されたものだ。先行研究(PDF)では、迷路のようなロンドンの道を何年も行き来することにより、運転手たちの海馬が特別に発達していることが確認されていた

[先行研究によると、運転手の海馬は、統計的に有意な差をもってコントロール群と異なった構造を示し、その変化は運転歴の長さにほぼ比例。海馬総体の大きさには変化はないが、後部が肥大し、前部が小さくなっているという。なお、海馬には、空間内の位置に特異的に反応する細胞(場所細胞)が存在し、この細胞の活動は主として視覚情報と身体情報(運動情報など)の影響を受けることが知られている。空間感覚で重要なものとしては、ほかに、海馬に隣接する嗅内皮質で発見されたグリッド細胞などもある]

今回の研究では、海馬の活動パターンを分析し、それらを被験者の移動記録と相関させたところ、活動パターンを使って被験者の位置を予測できることが判明した。

この結果は、「fMRIを使った視空間的景色に関する情報の読み出し実現に向けた、興味深い第一歩だ」と、カリフォルニア大学ロサンゼルス校(UCLA)の認知神経科学者Arne Ekstrom氏は話す。同氏は今回の研究には関与していない。

一方でEkstrom氏は、海馬のごく一部をfMRIで俯瞰的に観察しただけの今回の研究結果は、個々のニューロン内部、あるいは海馬全体で起きていることを説明しているわけではない、と慎重な見解も示した。

今後の研究では、今回のようにたった4人でなく、もっと多くの被験者を使い、また、空間記憶以外の記憶も扱うことになるだろう。

今回の研究と同様のものとして、脳の視覚野の活動パターンから視覚記憶を再現(日本語版記事)してみせた先行研究が存在する。それでも、本格的な「心を読み取る」技術が開発されるのは数十年も先の話だと、今回の研究論文を執筆した1人で、ロンドンを拠点に人工知能を研究するDemis Hassabis氏は述べている。

それよりも関連性が高いものとしてHassabis氏は、記憶力が低下する過程に関して新たな知見がもたらされる可能性を指摘した。これについて、Maguire氏は次のように述べている。「記憶が蓄積される仕組みに関して、次々と新たな事実が明らかになっている。今後は、疾患の過程で記憶がいかに蝕まれていくかを解明し、また、患者の脳に残っている記憶を最大限に活用して、患者のリハビリを助ける方法を考え出すこともできるだろう」

アルツハイマー病の患者では、[海馬が最初の病変部位になり]、見当識[自分がどこにいるかといった、周囲の状況の把握]と記憶に、同時に障害が現われる。[さらに、心理的ストレスを長期間受け続けると、コルチゾールの分泌によって海馬の神経細胞が破壊され、海馬が萎縮する。心的外傷後ストレス障害(PTSD)や鬱病の患者にはその萎縮が確認されている]

2009年6月9日火曜日

外国スパイの活動が活発化、金融危機で スイス

【6月9日 AFP】金融危機のなか、世界の金融の中心地スイスでスパイ活動が急増している。スイスの情報当局がAFPに明らかにした。

 スイス国防省で約120人が所属する情報部門を率いるJuerg Buehler氏は、「金融危機と金融機関同士の競争で、金融関連情報への関心が強くなっている」と語った。特に、銀行ネットワークに侵入する機会をうかがうハッカーらによるサイバー攻撃が多いという。

 スイス当局は、2008年に外交官の地位をもつ21人の入国を拒否した。07年は8人、06年はたった2人だった。

 情報当局の年次報告書によると、スパイの大半は、外交官かジャーナリストとしてスイスに侵入するという。「この方法だと、疑いを向けられずに情報収集したり、人と接触をすることができる」。スパイである可能性が最も高いのは、翻訳者やインターンなども含め、外交官関連の職員だという。

 また、サイバー攻撃も発見されている。Buehler氏によると、サイバー攻撃の一部はアジアや中国を経由しているが、実際にどの国から行われているのかを知ることは不可能だという。

 年次報告書によると、研究機関や各業界のトップレベルの技術をもつ企業があるスイスへの関心は変わらず高い。また、多くの国際機関がスイスに設置されており、それらが重要貿易や金融センターとしての役割を担っていることも外国の情報機関にとってスイスが魅力的な標的となる理由として挙げられる。

 スイスの隣国リヒテンシュタインでは、ドイツのスパイ機関がリヒテンシュタインの銀行の顧客情報を入手した結果、リヒテンシュタインの銀行側が脱税を教唆(きょうさ)していたのではないかとの疑惑が発覚し、米国を含む大国の怒りを呼ぶ事態が起こったことがある。(c)AFP/Andre Lehmann

世界の軍事支出、過去最高に 米中露の勢い強く

【6月8日 AFP】スウェーデンのストックホルム国際平和研究所(Stockholm International Peace Research InstituteSIPRI)が8日発表した2009年版年鑑によると、08年の世界の軍事支出は、米国によるイラク戦争の影響や、ロシアの世界舞台への復活、そして中国の台頭などから増加し、総額1兆4640億ドル(約144兆円)となった。

 これは、前年比で実質4.0%増、10年前と比較して45%増。世界全体の国内総生産(GDP)の2.4%に相当し、人類1人あたり約217ドルの額となった。

 世界1位は米国で、世界全体の42%を占めた。また、中国は849億ドルで世界全体の6%を占め、初めて世界2位につけた。中国とロシアの軍事費は、過去10年で3倍近い増加となっている。

 上位15か国のうち、1999年以降軍事費が減少したのは日本とドイツのみで、それぞれ1.7%減、11%減だった。(c)AFP/Marc Preel

「利他的行動は戦闘で進化」:コンピューターモデルで分析


Image credit: Mary Jackes/University of Waterloo

戦場で、自己より他者を優先させる――石器時代の人々が交戦時にこの傾向を選択したことが、「利他的行動」の発達を加速させた可能性がある、という研究結果が発表された。

文化的進化と、集団間の競争を再現したコンピューター・モデルに、暴力に満ちた人類の初期時代の研究データを投入したところ、現代人的な行動とされる利他主義が、実際には血なまぐさい起源を持つ可能性が示唆されたというのだ。

「それが集団を戦いの勝利に導く場合には、利他的行動が強く支持される」と、サンタフェ研究所の経済学者で制度理論を研究するSam Bowles氏は話す。同氏が執筆した今回の研究論文は、『Science』誌6月5日号に掲載された。「これは、通常集団内で、利己的な個人が利他的な個人より優勢になる傾向を相殺するものだ」

他者の利益を自己のそれに優先させる人間の能力が、このような野蛮な起源を持つ可能性があるというのは、自然の道理に反しているように思える。しかし、それは利他主義自体も同じだ。遺伝子はそもそも利己的なものであり、自己犠牲の性質は持たないと考えられている

実際、人間以外の動物にみられる利他的行動の例は、そのほとんどすべてが血縁選択という概念によって説明できる。これは、個体が遺伝的に近い血縁者のために犠牲になる[それによって自らの遺伝子を伝える]という考えだ。何の見返りも求めず、赤の他人のために行動する習慣を持つのは人間だけだ。

このような行動は、高度に複雑化した利己主義の例として説明できるかもしれない。つまり、一見利他的に見える行動は、実際には社会の要求を満たす、あるいは人々の寛大さに接して育まれた良心を満たすための行動かもしれない。しかし、たとえそうであっても、何か最初に利他主義を可能にするようなきっかけが必要だ。それが一体どのように誕生したかは謎に包まれている。

利他主義は、動物界で珍しいだけでなく、集団における相互作用を再現したコンピューター・シミュレーションでも劣勢の存在(日本語版記事)だ。シミュレーションでは、利己的な行動が優勢を占めるコミュニティ内部に利他的な個人が出現しても、利己主義のほうが勝つ。協力的な人よりも、自分さえよければいい人のほうが得をするのだ。

利他主義の最初の小さな火花は、生まれても消えていく運命にあるのかもしれない――ただし、その火花を大きく燃え上がらせる別の何かがあれば、おそらく結果は違ってくる。考えられる候補の1つが、小さな集団間の争いが進化に与える影響だ。集団間の争いは、人類の歴史の大半を通じて、われわれの生活の重要な部分を占めてきたと考えられる。

「利己は利他を圧倒するが、時おり、利己的な人間によって構成される集団が、利他的な個人からなる集団との競争において打ち負かされることがありうる」とBowles氏は語る。

そのような説を最初に唱えたのはチャールズ・ダーウィンだ。ダーウィンは『人間の進化と性淘汰(1)』(The Descent of Man、邦訳は文一総合出版刊)において、「紛争時に互いを守るような……勇気があり共感的で信頼できるメンバーが多い集団」が進化において有利であるという説を唱えた。しかし、利他主義は遺伝的なものだとするこのような考えが公式に注目されることは、これまではほとんどなかった。その理由の一部は、石器時代に交戦していた集団間の遺伝的差異は小さいと考えられたからだ。

しかし、Bowles氏が2006年に発表した研究によると、今なお石器時代の生活を送る複数部族の遺伝子を分析したところ、集団間競争が遺伝子変化の原動力となるのに十分なほどの遺伝的多様性が認められたという。また、利他的行動を発現させるうえで、文化的な伝承が遺伝子より重要だとしても、Bowles氏の主張するダイナミクスは依然として成立する可能性がある。

同氏が石器時代の遺跡から見つかった考古学的資料を分析し、さらに現存する部族たちを対象に民俗誌的研究を行なったところ、集団間の戦闘は、狩猟採集社会における死因の約14%を占めることが判明した。このような、大規模な社会制度を持たない数十人の構成員からなる集団は、人類史の大半を通じて、共同体の主流の形式であり続けてきた。

Bowles氏は、「利他的行動を取ることによって個人が自らの子孫を残す機会が減る確率」を推定し、その数値を集団間競争のモデルに投入した。このモデルでは、個人の利他的行動が、集団が戦闘に勝利する可能性を高める役割も果たしていた。その結果、利他的な個人を擁する集団がやがて優勢となり、利他主義がその集団内で支配的となった。

「他の集団に対する殺意や敵意が、人間の集団内部における協力やサポートを支援した可能性がある」と、ロンドン大学の人類学者Ruth Mace氏は、この論文へのコメンタリーの中で書いている(同氏はこの研究には参加していない)。

むろん、Bowles氏の推論は多分に仮定の要素を含むものであり、また、戦いに参加するという選択は一見利他的でリスクを伴うが、他の報酬的要素、たとえば、戦利品にありつけるといったようなことが、リスクを乗り越えさせる力となっている可能性も考えられる。それでもBowles氏の説は、可能性として検討する価値のあるものといえるだろう。

2009年6月6日土曜日

米国、韓国にバンカーバスター売却へ

【6月2日 AFP】韓国軍当局者は2日、米国が、地下施設を破壊することのできる特殊貫通弾(バンカーバスター)を韓国に有償提供することに合意したと述べた。

 国防当局者はAFPに対し、1990-91年の湾岸戦争(Gulf War)でイラクの地下管制施設を破壊するために使用されたレーザー誘導特殊貫通弾「GBU-28」の提供を、米政府が最近になって承認したと語った。

 韓国の聯合(Yonhap)ニュースによると、GBU-28は、2010-14年に韓国に提供される。有事の際に、北朝鮮の核施設や洞窟内の火砲などを攻撃するため戦闘機に搭載されるという。

 韓国軍当局によると、軍事境界線沿いのトンネルに北朝鮮が設置している火砲が、韓国にとって深刻な脅威となっているという。在韓米軍のウォルター・シャープ(Walter Sharp)司令官は4月に、北朝鮮が世界最大の砲兵部隊を保有していると述べていた。シャープ司令官によると、北朝鮮は、軍事境界線沿いに火砲1万3000基を配備しているという。(c)AFP

在韓米軍、無人偵察機配備へ 北の監視を強化

6月3日 AFP】北朝鮮の核武装をめぐり朝鮮半島で緊張が高まるなか、北朝鮮の監視を強化するため、在韓米軍は無人偵察機を配備する。在韓米軍幹部が明らかにした。

 ジェフリー・レミントン(Jeffrey Remington)在韓米軍副司令官(中将)は、韓国・東亜日報(Dong-A Ilbo)に掲載されたインタビューで、在韓米空軍は数十年使用したU-2偵察機を無人偵察機グローバルホーク(Global Hawk)に入れ替えると語った。また、韓国も偵察能力強化のためにグローバルホークを導入べきだと主張した。

 在韓米軍の報道官もレミントン中将のコメントを確認した。(c)AFP

オバマ大統領、53年イラン軍事クーデターへの米国関与を認める

【6月5日 AFP】中東歴訪中のバラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は4日、1953年にイランのモサデク(Mossadegh)政権を転覆させた軍事クーデターに米政府が関与していたことを、任期中の米大統領として初めて認め、米・イラン間の和解に向けた姿勢を明確に打ち出した。

 オバマ大統領はエジプトのカイロ(Cairo)で行ったイスラム世界に向けた演説の中で、「冷戦中、民主的に選出されたイラン政権の転覆に米政府が関わっていた」と述べた。

 モサデク政権は、それまで英資本のアングロ・イラニアン石油会社が独占していたイラン石油産業の国有化を進めていた。米中央情報局(Central Intelligence AgencyCIA)は53年、英政府の協力を得てパーレビ国王(Shah Mohammad Reza Pahlavi)派によるクーデターを画策、モサデク政権は崩壊した。米国はその後、パーレビ国王を積極的に支援したが、国王は79年のイラン革命で失脚した。

 53年のクーデターはイラン国民の間では、米国が自由の擁護者を自任する一方で、自国の経済的・戦略的利益のためには民主的に選出された他国政府を不正な手段で排除することもいとわない、二重基準に基づいた国だということを露呈した象徴とみなされている。(c)AFP

2009年6月1日月曜日

イランにウラン供給か ベネズエラとボリビア

 【エルサレム=共同】AP通信は25日、イランの核開発のために南米のベネズエラとボリビアがウランを供給しているとするイスラエル外務省の秘密文書を入手したと報じた。ベネズエラのチャベス大統領が同じく反米のイランを支援することで米国の立場を害するのが狙いだなどと記されているという。

 文書にはウランの原産国がどこかは書かれていないが、APによるとベネズエラ、ボリビアともウランを保有しているか産出が可能とみられている。イランもウラン産出国だが、これまで外国からも輸入している。

 文書は、イスラエルのアヤロン外務副大臣が近く南米を訪問するのに先だって準備された。

ベトナム、NASAから技術 国産衛星打ち上げ目指す

 【ハノイ=岩本陽一】ベトナム政府は米航空宇宙局(NASA)から宇宙開発に関する技術を導入する。このほど訪米した科学技術省の代表団が米側と合意した。ベトナムは産業構造の高度化に向けたハイテク産業育成を急いでおり、人工衛星などの宇宙開発を原子力、航空機開発と並ぶ戦略分野に位置づけている。今後日本、フランスなどとも連携、各国のノウハウを吸収しながら2020年の国産衛星打ち上げを目指す。

 ベトナム政府の公式サイトによると、導入するのは衛星に関する包括的な技術。開発、製造、打ち上げ、運航管理、データ収集・分析などが含まれるとみられる。ベトナム科学技術アカデミー(VAST)が窓口となり、人材開発面での支援も要請する。

 ベトナム側は電波を利用したリモートセンシング(遠隔探査)技術の導入にも期待を寄せている。洪水など大規模な自然災害が発生した場合に迅速な被害状況の把握が可能になるほか、農林業の振興などにも活用する計画とみられる。

iPS細胞の安全な作製手法を開発、来年に臨床試験へ

【5月29日 AFP】米研究機関「Stem Cell & Regenerative Medicine International(幹細胞と再生医療に関する国際研究所)」とハーバード大学(Harvard University)は28日、皮膚細胞から安全に幹細胞を誘導する方法を開発したと発表した。万能細胞の臨床用途としての可能性が一段と高まったことになる。

 研究チームは、細胞に浸透するペプチドを用いて遺伝子を融合させるという手法で、遺伝子を誘導することに成功した。この手法だと、遺伝子突然変異のリスクはないという。

■これまでの人工多能性幹細胞(iPS細胞)生成技術

 研究は、山中伸弥(Shinya Yamanaka)京都大(Kyoto University)教授が2007年に開発した画期的技術をベースにしている。教授のチームは2007年、皮膚細胞に4種類の遺伝子を導入するだけで、iPS細胞を生成する技術を開発した。

 これにより移植材料をほぼ際限なく作製できるという可能性が開けた。しかも、胚(はい)由来の細胞は一切必要としないため、倫理的な問題もクリアできると考えられている。

 だが、従来のiPS細胞の作製にはウイルスを使用するという負の側面があった。ウイルスを使って細胞を再プログラミングすると、DNAが異常を起こしてがん化、または遺伝子が変異しやすくなると指摘されていた。

 これまでにも、DNAトランスフェクションと呼ばれる手法や化学洗浄を用いて遺伝子導入に成功した例はあったが、いずれも健康被害をもたらす可能性があった。

■来年には臨床試験を実施

 今回開発された手法は、iPS細胞の作製に従来の2倍の時間がかかるというが、研究を主導したロバート・ランザ(Robert Lanza)氏は、タンパク質の純度を上げることで誘導効率は上がると自信を見せている。来年半ばごろまでに臨床試験を開始したいとしている。

 研究の詳細は、米科学誌「セル・ステムセル(Cell Stem Cell)」電子版に掲載されている。(c)AFP/Mira Oberman

米軍、「サイバーテロとの戦い」に対応する新組織設置へ

【5月31日 AFP】バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は29日、サイバーテロ攻撃に対する米国の防衛力を強化する方針を示し、米軍は初の「サイバー司令部(cyber command)」の設置に向けて動き始めた。

 米国防総省(Pentagon)関係者はAFPに対し、ロバート・ゲーツ(Robert Gates)国防長官が近日中に、大将が統括するサイバー司令部について正式な提案をする予定だと述べた。

 中国やロシアなどからのサイバー・スパイ行為を頻繁に受けている米国では、サイバーテロに対する懸念が高まっている。米政府当局者によると、中国は精巧なサイバー戦争プログラムを作り上げており、米国やそのほかの国のコンピューターシステムに中国から行われたとみられる侵入行為が多発しているという。

 国防総省関係者によると、サイバー司令部の活動は米国のコンピューターネットワークの安全確保が中心だが、米国の国益と「サイバースペースにおける行動の自由」を守るために必要な攻撃力を持つことも目指すという。

 米国のサイバー戦力の詳細は秘密のベールに覆われているが、コンピューターシステムへの侵入行為やアクセス妨害などの技術開発も行うとみられる。(c)AFP/Dan De Luce【5月31日 AFP】バラク・オバマ(Barack Obama)米大統領は29日、サイバーテロ攻撃に対する米国の防衛力を強化する方針を示し、米軍は初の「サイバー司令部(cyber command)」の設置に向けて動き始めた。

 米国防総省(Pentagon)関係者はAFPに対し、ロバート・ゲーツ(Robert Gates)国防長官が近日中に、大将が統括するサイバー司令部について正式な提案をする予定だと述べた。

 中国やロシアなどからのサイバー・スパイ行為を頻繁に受けている米国では、サイバーテロに対する懸念が高まっている。米政府当局者によると、中国は精巧なサイバー戦争プログラムを作り上げており、米国やそのほかの国のコンピューターシステムに中国から行われたとみられる侵入行為が多発しているという。

 国防総省関係者によると、サイバー司令部の活動は米国のコンピューターネットワークの安全確保が中心だが、米国の国益と「サイバースペースにおける行動の自由」を守るために必要な攻撃力を持つことも目指すという。

 米国のサイバー戦力の詳細は秘密のベールに覆われているが、コンピューターシステムへの侵入行為やアクセス妨害などの技術開発も行うとみられる。(c)AFP/Dan De Luce