2009年11月28日土曜日

「電子メール時代の終焉」は来るか:「メールを使わない人」が増加

10月12日付けの『Wall Street Journal』記事で、Jessica Vascellaro氏が電子メールについて論じ、電子メールの後継者と目されるものたちがティッピング・ポイント(臨界点)に入ったと述べている。インターネットの最初期にネット世界を大きく規定した――悪用例も多い――アプリケーションである電子メールに、そのような運命が迫っているのだろうか?

私は10月12日(米国時間)、CNBCの番組『Power Lunch』に出演して、この件について少しだけ議論できた[文末の動画]。ただ、十分ではなかったのでここで話を続けたい。

Vascellaro氏の見解はおおむね正しいと、私は思っている。電子メールの終焉を報じるのが時期尚早であるのは明らかだが、最初の電子メール送信[1971年]から38年経った今、パラダイムの内側からパラダイムシフトの徴候を探ることは興味深いことだ。そもそも、『Usenet』や『WAIS』(Wide Area Information Servers)、『Gopher』、『Archie』などを考えてみればわかるように、当初のインターネット・プロトコルは、電子メールを除けば大半が、すでに引退を宣告されている。電子メールはなぜ、これほど強固なのだろうか。

電子メールが今すぐにどうにかなる、ということはないだろうが、電子メールの重要性がいまに低下するという予測は、何年も前からある。例えば、2年前の『Slate』の記事を読むと、すでにこの時点で、電子メールを使うのは時代遅れの人だけだと書かれている。

単方向や双方向のほかのコミュニケーション手段が、電子メールの存在意義を脅かしていることは間違いない。とりわけ若い人は、電子メールは年上の人(教師や親など)から求められる場合にだけ使い、メールよりは、携帯メッセージや『Facebook』のやりとりといったソーシャルなメディアを好むようだ。[10代においては電子メール利用は少数派であるという調査結果を紹介する日本語版記事はこちら]

私自身はどうかというと、電子メールは現在、起床後にチェックするものとしては3番目だ。携帯メッセージと『Twitter』が先にくる。

それでは、電子メールは「いつ」「どの程度」縮小していくのだろうか? これについては企業での利用が関係してくる。企業の電子メール依存はとうぶん続くだろう。企業とはそういうものだ。インスタント・メッセージ(IM)さえ採用していない現場がまだたくさんある。

また、『iPhone』のようなモバイル機器では、電子メールを使う手間が軽減され、SMSやMMSやTwitterといわば同列になる。こういった最新モバイル機器によって、電子メールの寿命は伸びるかも知れない。

とはいえ、全体で見ると電子メールへの依存は小さくなっていくだろう。テクノロジーの産物は、何であれ、いずれは人気が落ちるものだ。絶えず新しいものが登場し、いま現在のやり方では能率が悪いことをあらわにしていくのがテクノロジーだからだ。

また、電子メールの「殺害」においては、本質的に優れた代替物よりも、スパムが果たす役割の方が大きいかもしれない。しかし、1つだけ確かなことがある。最終的に携帯メッセージが電子メールに取って代わるとすれば、その理由は、われわれがどれほど無駄に言葉を費やしがちなのかが、Twitterや携帯メッセージのやりとりによって明らかになったからにほかならない。

ネット上の発言監視:諜報機関や企業向けのシステム

米国の諜報機関は、人々のブログ記事を見たり、『Twitter』への投稿をチェックしたり、『Amazon.com』でのレビューさえも調べたいと考えているようだ。

米中央情報局(CIA)が[諜報活動に必要なシステムを開発するために]出資・設立している独立非営利ベンチャーキャピタル・グループ『In-Q-Tel』(日本語版記事)は、ソーシャルメディアの監視を専門とするソフトウェア企業の米Visible Technologies社に資金を投じている。

これは、『オープンソース・インテリジェンス』をもっと有効に利用するための、諜報事業におけるより大きな動きの一環だ。オープンソース・インテリジェンスとは、日々作り出されている膨大な量のテレビ番組、新聞記事、ブログ投稿、オンライン動画、ラジオの報道などにおいて、公表されてはいるものの「隠れている」情報のことだ。

Visible社では1日に50万を超えるWeb 2.0サイトを調べており、ブログ、オンラインフォーラム、『Flickr』、『YouTube』、Twitter、Amazon上で発生する100万件以上の投稿や会話を収集している(現時点では、『Facebook』などの閉じたソーシャル・ネットワークは対象にしていない)。顧客は、これらのサイトで語られている内容に関して、一連のキーワードに基づいてそれぞれにカスタマイズ化された、リアルタイムでのフィードを得る。

Visible社は各投稿を「採点」し、肯定的あるいは否定的な内容か、複雑な感想を持っているか、または中立的かなど、その内容について分類する。この作業により、それぞれの会話あるいは投稿者がどの程度影響力を持っているのかを検討する(「実際に重要となる人物を判断しようとしている」と、同社のバイス・プレジデントBlake Cahill氏は説明している)。顧客は、それぞれの投稿をタグ付けしてそれらを同僚に転送したり、ウェブ・インターフェース上で議論できる。


In-Q-Telでは、Visible社に海外のソーシャルメディアも監視させ、情報を得たいとしているが、言うまでもなく、このような手段の対象は、米国内のブロガーあるいはTwitterユーザーなど、内部に向けられている。Visible社はすでに、米Dell社、AT&T社、Verizon社のためにWeb2.0サイトを監視している。米Microsoft社に対しては、『Windows 7』の発売に関する世間の反応を追跡している。ランチョンミート缶詰『スパム』製造企業の米Hormel社に関しては、同社に対する動物愛護運動家のオンライン・キャンペーンを調べている。

Visible社は90名の従業員を抱え、2010年の利益がおよそ2000億ドルになると見られている。In-Q-TelによるVisible社への投資額については、両者ともコメントを避けているが、両者の契約に詳しい関係筋によると、In-Q-Telからの投資は、Visible社の対象言語能力を高めるために使用される予定だという。同社ではすでに、アラビア語、フランス語、スペイン語のほか9つの言語をカバーしている。



諜報機関は数年前からソーシャルメディアに関心を示してきている。In-Q-Telは、別のWeb2.0監視サービスを提供する米Attensity社にも投資してきたし、米国家情報局(The Office of the Director of National Intelligence)は、Web2.0を含むネット情報全般を監視するOpen Source Centerを運営している。このセンターでは、YouTubeやMySpace、ブログなどの投稿も監視していることが公表されている。

しかし、米国防情報局(DIA)で上級技術責任者を務めていたLewis Shepherd氏は、「CIAは、ソーシャルメディアにおける進歩のペースに対応するために、特に革新的な技術企業の支援を必要としている。ソーシャルネットワーキング・サイトの絶えまない人気の変化を見抜くことに関しては、経験豊かな諜報機関のアナリストでも適任ではない可能性がある」と指摘する。

「あるサイトから他のサイトへと人気が次々に移り変わっていくなかで世界各国の若いインターネット・ユーザーたちを追跡するという作業において、CIAは助けを必要としている。Facebookによると、同サイトのユーザーの70%以上は、米国以外の180カ国の人々だという。さらに現在では、Twitterに似た、英語でない米国以外のマイクロブログ・サイトが200以上もある。もし諜報機関がこの大量のリアルタイム情報を無視しているとしたら、無能と呼ばれることだろう」と同氏は語る。

アフガニスタン援助の実態:巨額はどこへ消えるのか

米国国際開発庁(USAID)は2009年初め、『コミュニティ安定化プログラム』(Community Stabilization Program)から手を引いた。このプログラムは、6億4400万ドルの資金を費やして、イラクで仕事や公共事業を作り出すというものだった。

このプログラムは本来、若い(つまり、戦闘が可能な)現地の男性たちに、仕事を与えたり職業プログラムに参加させたりすることで、彼らが反政府活動に参加するのを防ぐはずだった。だが、数千人のイラク人たちがゴミ拾いや壁にペンキを塗る仕事でお金を稼げるようになった一方で、このプログラムは不正行為を招きやすいものだった。バグダッドにいるUSAIDの監察長官は、2008年3月の監査で、数百万ドルの資金が反体制派によって吸い取られた可能性がある、との懸念を示した。

このことはアフガニスタンにもあてはまる。コミュニティ安定化プログラムの運営パートナーとなっているInternational Relief & Development(IRD)は、アフガニスタンでも活動しており、道路建設プロジェクトや農業プログラムを監督している。このプログラムは扱う範囲が非常に広く、説明責任が明確にならないので、他の団体はUSAIDへの入札を控えたとされている。

Joanna Nathan氏は、『Foreign Policy』紙(電子版)の記事で、米国が現地の開発事業をアウトソースするやり方は、非常にネガティブな結果になりうると指摘している。

「現地に建てられた豪華な新築の邸宅を、米国の土木業者や国連機関、大使館、それに法治プロジェクトを請け負う団体などが1ヵ月あたり数千ドルで借りているとしたら、説明責任を果たすという欧米の公約はいったいどうなるのだろうか」とNathan氏は批判する。「アフガニスタンの人々が腐敗について話すとき、それは完全に合法的な援助のことを意味している可能性がある。民間の請負業者らによってアフガニスタンで使われている数十億ドルのお金の大半は、何段階もの下請け業者を経由する中でほとんど失われ、現場には実質的効果をほとんどもたらさないケースが大半だ、という話だけがアフガニスタンの人たちの耳に入っている。このような状況では、どのような契約が交わされていようが、それは腐敗と見なされる」。さらに、援助によって政府高官の縁者が富む状態も、アフガニスタンの人々を怒らせているという。


一方、New America FoundationのPeter Bergen氏とSameer Lalwani氏は、『New York Times』紙(電子版)10月2日(米国時間)付けの記事で、アフガニスタン政府に支払われた数十億ドルもの対外援助資金は、コンサルタントたちに払う給与や諸経費の形で、あっという間に、援助を行なった国に還流していると指摘している(PDF)。

一般のアフガニスタン人は、SUV車であちこちを見て回る外国の開発コンサルタントの姿は大勢見かけるものの、ほとんどの場合、開発企業がやって来たことによる実質的なメリットはほとんどないという。

また、米国はこれまで、アフガニスタンの治安部隊に対する訓練と装備に165億ドルを費やしているが、アフガニスタンが治安部隊を自前調達できるにはほど遠い状態だ。

Bergen氏とLalwani氏は、アフガニスタンに利益をもたらすための斬新なアイデアを提案している。それは、アフガニスタンに税金を支払うという条件で、開発業者と契約するというものだ。「現在、[アフガニスタン]政府の税収は合計で3億ドルほどだ。外国からの技術援助は推定で年間16億ドルほどあり、これに税金を課すだけでも税収を倍にできる」と両氏は述べている。

しかし、援助活動家や支援企業がこのアイデアを喜んで受け入れるとは思えない。彼らはすぐにこう言って批判をはねつけるだろう――われわれは世界を救うことで手一杯なのだ、と。植民地支配と似たようなライフスタイルも、待遇の一部だと考えられている。

莫大な石油を消費する「中東の米軍」

イラクとアフガニスタンにおける戦争には、なぜこれほど費用がかかるのだろうか? これには大きな理由がある。米国陸軍では、1日あたり1人の兵士につき、22ガロン(約84リットル、1ガロンは約3.785リットル)の石油燃料を消費している(PDF)のだ。そして石油を戦場へ運ぶのには、1ガロンあたり45ドル以上の資金がかかる。

これは、Deloitte社(デロイト・トーマツ・コンサルティング)の調査による情報だ。筆者の友人であるPaul McLeary氏が、『Aviation Week』で紹介している。

実際のところ、1ガロンあたり45ドルというのはかなり安く見積もった計算だ。海軍によると300ドルから400ドルらしい。

だが、これほどの燃料の大量消費にかかる代償は、金額だけでは計ることはできないと、Deliotte社の調査報告では警告している。燃料は、アフガニスタン国内の隔絶された基地へと輸送しなくてはならない。これは、米軍部隊がゲリラ的な爆弾攻撃にあい、兵士が死亡する危険性を伴う。

Deliotte社によると、「戦略の変更が行なわなければ、現在のアフガニスタン戦争では、結果として2014年までに米国兵士の犠牲者が124%(1年あたり17.5%)増加する可能性がある」という。

米国防総省は化石燃料に対する依存を軽減するため、世界最大規模の太陽熱発電所(日本語版記事)やハイブリッド車、[残飯や廃プラスチックなどの]廃棄物で動く発電機(日本語版記事)など、あらゆる取組みを行なっている。だが、これらの取組みの多くは、国防総省の米国内事業のエネルギー効率を向上させることに集中している。戦場の部隊に関しては、いまだ従来のペースで燃料が消費されているのが現状だ。

[Deloitte社は第二次大戦から現在の中東戦争までの米軍の年量消費量も比較しているが、それによると、現在の1日・1人あたりの消費量は、ベトナム戦争時の1.75倍だという]

青少年の75%が軍に不適格:「肥満」「軟弱」が急増

米軍の調査によると、米国の17〜24歳の若者のうち75%以上が、兵役につくことには不適格だという。たとえ本人が望んだとしてもだ。

Army Timesの記事によると、軍に不適格とされる若者たちは、太りすぎか病弱か、知能が遅れているか、扶養家族が多すぎるか、あるいは違法薬物使用による逮捕歴があるというものだ。[「医療的・身体的理由」が35%、「違法薬物の使用」が18%、「全人口の10%以下にあたる知能」が9%、「18歳以下の扶養家族が多い」が6%、「犯罪歴」が5%]

軍としては、喘息持ちや、マリファナをちょっと使った程度の志願者には、こうした制約を免除しても構わないと考えている。しかし、軍が最も懸念していることは、入隊者たちが肥満し軟弱になったことだ。

「不適格の主要原因は肥満だ」と、米国防総省の採用責任者であるCurt Gilroy氏は、Army TimesのWilliam McMichael氏に語っている。「腕立て伏せができないだけではない……懸垂ができないし、走れないのだ」

現在、18〜34歳の23%が肥満に該当する。ちなみに1987年には、この割合はわずか6%だった。[同記事によると、軍が根拠としているのはCDC(米疾病予防管理センター)による全国統計。BMI(ボディマス指数)30以上が肥満とされている]

米国の若者における「兵役志願傾向」が下降している現在、志願者集団はますます減少している、と社会科学者は述べている。Gilroy氏によると、米国の兵役資格のある若者を対象とした調査結果では、兵役に興味を示したのはおよそ12%だったという。

この1年間、不況の影響で、軍は大量に採用することが可能だった。だが経済は回復し始め、アフガニスタンでの戦争が長期化する中で、志願者から成る軍隊の維持を、[兵役に関心がありしかも適格と見なされる]少数の若者たちに頼るのは、ますます厳しくなっていくだろう。

方法は2つに1つだ。採用した新兵自体を変えるか、採用基準を変更するかだ。――空軍の新しいサイバー軍団[電子戦・情報戦・サイバー戦を担当する]では、何度も懸垂ができる人材は必要ないことだろう。

[米国では、ベトナム戦争終結後の1973年以降、徴兵を停止しているが、選抜徴兵登録制度は行なわれている。米国の将兵の数は2006年で144万人。就業人口に対する比率は1.0%、総人口に対する比率は0.5%にあたる]

映画を超える?「米軍の超能力・麻薬研究」

「この話には、あなたが思うよりも、真実の部分が多い」――米国で11月6日(米国時間)に公開された映画『The Men Who Stare At Goats』では、観客は開始から数分後にこう宣言される。[原作はイギリス人ジャーナリストJon Ronson氏による、1960年代の米軍レポートで、2004年に出版された。邦訳は『実録・アメリカ超能力部隊』(文春文庫)]

この映画に登場する突拍子もない軍事研究計画のうち、一体どれほどが実際に行なわれたのだろうか。実のところ、映画に登場する話題の大部分は、真実にかなり迫ったものであり――ただし実際は、もっと複雑なのだという。

超能力実験:

これは実際に行なわれていた。

今回の映画の原作となったノンフィクション本では、元陸軍大佐John B. Alexander氏のことが紹介されている。Alexander氏はベトナムで米陸軍特殊部隊の司令官を務め、数十年にわたって超能力者や「遠隔透視」能力を持つ人を国家安全保障に利用するアイデアを推進してきた。(同氏が神経言語プログラミングやUFOや非殺傷兵器への興味を追究するようになる以前の話だ)。Wired.comが行なった、Alexander氏へのインタビュー記事はこちら(日本語版記事)。

Wired.comでは、さらにこの分野に関する調査を深める中で、米Boeing社が60年代に行なった超能力実験などの過去の研究を紹介してきた。このBoeing社の実験では、何人かの被験者は、無作為に番号を生成する装置に、意思の力だけで特定の番号を出力させることができるようだ、との結論が出ている。

1985年以前の陸軍の報告書には、「サイコキネシスは、継続的な研究が行なわれ、有効利用できるレベルにまで開発された場合、今後の軍事作戦において軍事的価値を持つ可能性を秘めている」という記述がある(日本語版過去記事)。

比較的近年の1996年になっても、「視覚によらない知覚」なる現象が調査されているし、米軍のお抱え超能力者たちは今日なお活動中なのかもしれない。9.11テロはその何年も前に、遠隔透視能力者らによって予知されていた、と示唆する報告が2007年に公開されている。[リンク先記事によると、予言が出たとされるのは1986年。「建物の崩壊を伝える新聞の見出し、飛行機と関連したパニック」などの「予言」が書かれている。

1972年から米スタンフォード研究所で研究が始まった「遠隔透視」について書かれた本の邦訳は『サイキック・スパイ―米軍遠隔透視部隊極秘計画』(扶桑社ノンフィクション)]

ドラッグの実験:

これも事実だ。

前線の兵士たちは、[濃縮された]液体大麻からLSDまで、あらゆる薬物を――場合によっては、それと知らされずに――投与されていた。

研究者らは、軍人たちが「目に見えないさまざまな人と、2、3日間にもわたって会話を続け」たりするのを目撃している。[米陸軍がLSDなどの幻覚誘発薬を使って行なった『エッジウッド実験』などを紹介する日本語版記事はこちら]
ヒッピー軍隊:



実在の人物である元陸軍中佐のJim Channon氏はニューエイジ思想に深く傾倒し、きわめてオルタナティブな戦争観を米軍にもたらした――例えば、軍隊が花や、[子羊などの]平和的なイメージの動物を抱えて戦場に赴くという『第一地球大隊』(First Earth Battalion)などだ。

映画では、Channon氏に当たる役柄[役名Bill Django]をJeff Bridgesが演じている。Channon氏の考案した『第一地球大隊』は、映画では『New Earth Army』の名で登場するが、その理念は同じだ。映画の中でNew Earth Armyのマニュアルに使われている図版の多くは、Channon氏による実際のマニュアルからそのまま引用されている。[Wikipediaによると、瞑想や指圧や「地球への祈り」などを推奨し、7つの行動指針を頭文字をとって「SAMURAI」とまとめた]

東洋思想やオルタナティブなライフスタイルへの米軍の関心は、今ふたたび高まっている。ノースカロライナ州のキャンプ・ルジューン海兵隊基地では、心的外傷後ストレス障害(PTSD)の代替療法の1つとして、昔のサムライの鍛錬法に基づいたらしい『Warrior Mind Training』(軍人向け精神トレーニング)を指導している(日本語版記事)。

このほかに米国陸軍も、400万ドルを投じて、「レイキ」と呼ばれる手当て療法や超越瞑想、「生体エネルギー」などの代替療法を研究している。空軍も、戦場での鎮痛法として鍼治療を研究中だ。


画像は別の英文記事より

音を兵器にする:

これも事実だ。

不快な音や同じ曲――たとえば子供向けテレビ番組『Barney & Friends』のテーマ曲[『アルプス一万尺』のメロディー]など――を繰り返すことは、実際に心理的拷問や尋問の技術として用いられてきた。[米軍がグアンタナモ基地で、音楽を繰り返す拷問を行なっていたことを紹介する日本語版記事はこちら]

また、音波で攻撃する音響兵器(日本語版記事)『Low Dispersion Acoustic Projector』(LDAP)もある。Wired.comの記者David Axeは、この音波攻撃をみずから体験して記事(英文記事)にこう書いている。「口うるさい彼女が100人も頭の中にいて、自分に向かって叫んでいるみたいだった」

テレパシーで動物を殺す:


画像は別の英文記事

これはフィクション。今回の映画(と原作本)に描かれている最も奇抜なエピソードが、軍の超能力者らは、見つめるだけでヤギを殺すことすらできる、というものだ。だがJohn Alexander氏でさえ、これは真実ではないと語っている。

もっとも、ヤギは軍事研究において、実験対象としてヒトの代わりにしばしば用いられる動物だ。本来は非殺傷兵器である『Active Denial System』の実験で、ヤギが一瞬にして死んだ、という噂もある。また、特殊作戦軍では、戦場での救急訓練にヤギを用いている――まず(麻酔をしていない)ヤギを撃って、それから治療するというもので、この慣行には根強い批判がある。

タトゥーのように皮下移植可能:絹利用の電子回路

本当のタトゥーの写真:Spacemanbobby/Flickr

レイ・ブラッドベリのSFファンタジー短編集『刺青の男』(The Illustrated Man)には、全身が刺青で覆われている男が出てくる。[夜になり、男が眠ったときに]刺青を見ると、刺青が動き出して、奇妙な数々の物語を語り始めるのだ。

ペンシルベニア大学が中心になって開発し、マウスに移植している新しいLEDタトゥーは、この刺青の男を現実のものとする可能性がある(ぞっとするような物語は抜きにして)。

同大学のBrian Litt氏らは、シリコンと絹でできており、入れ墨(タトゥー)のように皮下に移植可能な電子回路を開発した。これらは、LEDを利用して皮膚を「スクリーン」へと変えることもできる。

このチップを所定の場所に固定する絹シートは、生理的食塩水に接すると必要な皮膚の形に変形させることができる。絹の基材は、最終的に分解されて体内へ吸収され、電子機器だけが残る。シリコンチップ自体の大きさは、長さが米粒程度の約1ミリ、厚みはわずか250ナノメートルだ。

ペットに注入される小さなRFIDタグなど、生物の体内で各種チップがすでに使用されているが、ペンシルベニア大学の「タトゥー」回路は、身体とともに柔軟に動き、硬い回路基板であれば移植できないような場所にも移植することができる。

[MIT Technology Reviewの記事によると、生体と回路を絶縁する必要がなく、ほとんど完全に組織内にとけ込み、脳などにも移植できるという。同記事では、1センチ四方の絹に6つの回路がある「絹フィルム」の画像も見ることができる。Applied Physics Lettersに掲載された論文はこちら]

この電子機器は、あらゆる種類の電子機器につなげたり、体内にも接続することが可能だ。さまざまな医療用途が検討されており、皮膚上にデータを表示する血糖値センサーのほか、身体の神経システムと接続される神経機器などが考えられている。例えば、チップを特定の神経とつなげて義手をコントロールするといったものだ。

最初のディスプレイは粗い作りになることは間違いないが、おそらくこうした機器を受け入れる患者たちにとっては非常に有益なものとなるだろう。

ディスプレイとしての機能は、フルカラーで高解像度の画像は実現できないだろうとはいえ、商業やアートで利用される可能性もある。オランダの家電大手Royal Philips Electronics社のDesign Probe部門では、こういった可能性のかなりセクシャルな利用法を追求している。その動画[以下に埋め込み。職場での閲覧は不適切]はやや気味悪いが、自分のパートナーの背中でアダルト動画を再生するという用途が、一部の人々の心を捉えるのは間違いないだろう。



われわれとしてはもちろん、この技術のよりギーク的な面について考えている。手の甲にマップ情報を表示するGPSは、確実に便利だろう。眼球の表面に搭載し、日光がまぶしすぎるときは視界を暗くするチップなどもいいだろう。

また、全身を利用したディスプレイは、最終的には広告に使用されるだろう。例えば、この技術と生物発光インクを組み合わせれば、自分自身がタイムズ・スクエアの小さな歩くバージョンへと変わることが可能だ。少なくとも本物のタトゥーとは異なり、電源を切って表示を消すことができる。

実際、この技術の可能性のある用途について想像し始めたら、ほとんど終わりがないように思える――刺青の男の身体で語られる物語のように。

ガソリンの臭いで攻撃性アップ:ラットで確認

Photo: Flickr / markvall

ガソリンを満タンにするのに法外な料金を支払わされれば誰でも頭に来るが、その怒りは、ガソリンを入れている時に吸い込んだ臭いで倍増されるかもしれない。

カイロ大学のAmal Kinawy氏は、ガソリンの臭いにさらされたラットは、新鮮な空気を呼吸していたラットより攻撃的になり、不安の兆候を示しやすいことを確認した。さらにそのラットの脳では、視床下部、海馬、小脳の神経伝達物質が変化していた。この研究はラットでしか行なわれていないが、研究結果は人間にも当てはまるもので、交通渋滞でのイライラなどの一因と考えられる、とKinaway氏は述べている。

Kinawy氏は、15匹のラットを有鉛ガソリン(エジプトでは今でも使用されている)、他の15匹を無鉛ガソリンに暴露した。さらにもう15匹を対照群として使用した。ラットはまずガソリンの気体を6週間に渡って毎日30分間暴露され、次の10日間、実験に使用されなかった同腹の兄弟たちと一緒の場所で飼育された。

その結果、ガソリンの臭気を吸い込んだラットは、歯をカチカチと鳴らしたり、背中を弓なりにしたり、噛み付いたりといった攻撃的な態度を示す傾向が高いことがわかった。無鉛燃料に暴露されたラットは、有鉛燃料に暴露されたラットよりも攻撃性を示す傾向がわずかに高かった。

Kinawy氏は各ラットを解剖し、ガソリンにさらされたことによってラットの脳が変化したことを突き止めた。

「ガソリン燃料の吸引によって、視床下部、海馬、小脳における神経伝達物質の顕著な変動が誘発された」とKinawy氏は述べている。[論文によると、モノアミン神経伝達物質で、セロトニン、ノルアドレナリン、アドレナリン、ヒスタミン、ドーパミンなどのこと]

「無鉛ガソリンに暴露されたラットは、対照群や有鉛ガソリンのグループに比べて、フリーラジカルによって引き起こされる損傷が大きく、大脳皮質領域の神経伝達物質のレベルが変化するという兆候を示した」ともKinawy氏は述べている。

論文はオンライン・ジャーナル『BMC Physiology』に掲載されている。

[ガソリンへの鉛(アルキル鉛)は、エンジンのノッキングを防止する為に添加されていたが、有毒で大気汚染の原因となるため、日本では、レギュラーガソリンは1975年に、ハイオクガソリンも1987年には完全無鉛化を達成した。

現在鉛の代わりに利用されているのは有機化合物のMTBE(メチル・ターシャリー・ブチル・エーテル)等。ただしMTBE添加は、ガソリンが飲用地下水に混入する問題を引き起こしており、米環境保護庁はガソリンへのMTBE添加を2014年12月31日以降禁止すると2005年に決定している]

2009年11月22日日曜日

「戦争は貧困と失業のせい」、アフガン国民の認識が明らかに

【11月19日 AFP】貧困と汚職がアフガニスタンの人々を戦争に駆り立てている――アフガン地元住民へのヒアリング調査に基づくこのような報告書が18日、発表された。

「The Cost of War(戦争の代償)」と題された報告書は、戦争で荒廃した同国の様子を浮き彫りにするとともに、同国政府に法の整備、警察組織と司法制度の立て直しのほか、汚職の取り締まり強化、刑事免責や利益供与の慣習撲滅を促している。

■戦争の原因は「貧困」

 この調査は、国際支援団体オックスファム(Oxfam)とアフガニスタンの地元団体が共同で、今年1月~4月に14州からランダム抽出した男女704人を対象に行ったもので、1978年のクーデターとそれに続くソ連の軍事介入を発端とする30年間におよぶ戦争が一般市民にどのような影響を与えたかをまとめた。

 その結果、戦争の主な要因として70%が「失業」と「貧困」を挙げ、48%が「汚職」と「機能していない政府」と回答した。

■国際援助の実感なし

 アフガニスタンでは国民の半数近くが貧困ラインを下回る生活をしており、25万人以上が国内避難民となっている。報告書は「多くのアフガン人は、(政府や国際社会は)数々の約束をするが、実際に人々が恩恵を受けることはほとんどないと感じている。これが欲求不満や失望を招き、最終的に安定を揺るがしている」と指摘。汚職を撲滅し、経済発展と必要な人に届く支援を確実にするよりよい方法を取るよう国際社会に呼びかけている。

 また、戦争当事者に対しては、武装勢力と国際支援部隊の双方に対し、一般人の安全を最優先とすることを強く求めている。(c)AFP/Ian Timberlake

中国が対米スパイ行為を拡大、手口も洗練 米議会報告書

【11月20日 AFP】米中経済安全保障検討委員会(US-China Economic and Security Review Commission)は19日、議会に提出した年次報告書の中で、中国が米国に対するサイバー攻撃やスパイ活動を強化しており、手口も洗練されてきていると警告した。

 報告書は、米政府ウェブサイトやチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ(Dalai Lama)14世のウェブサイトに対する接続切断や侵入の件数が急増していると指摘している。

■対米サイバー攻撃が急増

 ゲーリー・マッカラム(Gary McAlum)大佐が同委員会に報告したところによると、米国防総省が2008年に探知した同省ウェブサイトに対する悪意あるサイバー攻撃は、前年比20%増の5万4640件に達したという。

 攻撃元は世界各地だが、中国が最も多かった。政府支援を受けていない「愛国的ハッカー」もいるものの、政府がハッカーを使って海外の「敵」のコンピューターを攻撃するケースもあるようだとしている。

■金品でスパイ勧誘、米シンクタンクに影響も

 同委員会はまた、中国が対米スパイ行為に最も熱心な国でもあり、米国人をスパイとして雇おうと試みているとも指摘した。これまでにも中国が中国系米国人の同情を誘ってスパイに勧誘する例はあったが、最近は金品で情報提供者を買収する「旧ソ連式」の手口に切り替わりつつあるという。

 中国は情報の発信元を偽装する手口(偽旗作戦)も拡大。さらに、米国の研究・学術機関に対する影響力を高めるため、学者の入国を許可する一方で、中国に批判的な人には査証を与えない取り組みを始めたとしている。(c)AFP/Shaun Tandon