2009年8月15日土曜日

「世界の石油産出量、2020年にピークに」--IEAチーフ・エコノミストが警鐘

世界の石油生産量が頂点に達し、そして緩やかな、かつ避けられない減少に転じる時点を「ピークオイル」と呼ぶが、これがいつ来るか/来たかについて は専門家の間でも意見が分かれている。「すでに達した可能性がある」とするアナリストもいれば、「何十年も先のこと」という者もおり、世界の主要な国々の エネルギー関連省庁の多くは後者の意見に同調している。

ところが、国際エネルギー機関(International Energy Agency:IEA)のチーフ・エコノミストを務めるフェイス・ビロル(Fatih Birol)氏によると、世界の石油生産量は2020年にピークを迎えるという。これは多くの政府が予想している時期より約10年も早い。

英国のインデペンデント紙(The Independent)は、8月3日(現地時間)に掲載したビロル氏とのインタビュー記事のなかで、この予想を明らかにした。また世界にある800の主 要な油田ではすでに産出量が年間6.7%減少していることを示すデータも示されたが、この減少率は2007年時点でのIEAの推定値3.7%よりも大きな ものとなっている。

ピークオイルが来るとの見通しは、現代の世界経済にとって重大な事柄である。なぜならほとんどすべての交通手段には石油が必要であり、またその他の社会のエネルギー需要の大きな部分も、石油関連製品でまかなわれているからだ。

むろん、石油産出量がピークに達したからといって、その時点で石油が枯渇するわけではない。だが、ピークオイルに達すれば、増大する需要をまかなうために産出量を増やすことができず、結果的に石油価格の劇的な上昇につながる可能性がある。

ビロル氏によると、この石油価格の上昇により世界経済の成長が停滞するか、もしくはマイナス成長に転じる可能性があるという。こうした事態を回避するには「サウジアラビア4つ分」に相当する新たな石油供給源を見つけなくてはならないが、その見込みはほとんどないためだ。

「今後数年のうちに経済が回復すると考えている人も多いが、この回復はゆっくりとしたしかも脆いものになるだろう。さらに、石油価格の上昇によってこの経済回復が失速するリスクもある」と同氏は述べている。

2020年に石油産出量がピークを迎えるという予想を含めて、ビロル氏がこうした事実を明らかにしてメディアの注目を集めるのは、今回が初めてでは ない。同氏は昨年12月に行った英ガーディアン紙(Guardian)とのインタビューのなかで同様の情報を明らかにしていた。

このガーディアンとのインタビューのなかで、ビロル氏はOPEC(石油輸出国機構)加盟国以外の国々の石油産出量が、今後3〜4年のうちに頭打ちに なり、さらに減少に転じることで、中東各国をはじめとするOPEC加盟国の、世界の石油供給をコントロールする力が増大することになる、との見方を示して いた。

ビロル氏のほかにも、将来における世界の石油産出量減少を懸念する声はある。ザ・ネーション(The Nation)誌6月号に掲載された記事によると、米エネルギー省のエネルギー情報監督局(Energy Information Administration)では、最新の報告のなかでこの問題に触れ、2030年時点の世界の石油産出量の予想値を引き下げたという。

同局の最新のレポート("EIA - 2009 International Energy Outlook")では、2030年の全世界の石油産出量(予想値)は9310万バレル/日とされているが、これは2007年版で出された予想値1億 720万バレル/日よりも少ない。なお、2006年における世界の石油産出量は8150万バレル/日だった。

石油産出量の減少を埋め合わせるには、従来は採掘があまり行われていなかったエリア--カナダやベネズエラにあるオイルサンド(油砂)層や、米国西 部にある石油を含んだ頁岩(けつがん)層、さらにはブラジル沿岸で開発が始まろうとしている「超深海」("ultra-deep")油田などから原油を堀 り出さなければならない。

バイオ燃料も石油の不足緩和に役立ちはするだろうが、しかしいまのところ世界の燃料供給量のなかでバイオ燃料が占める割合はほんの少しに過ぎない。 「次世代のバイオ燃料」(草や、農産物や木材から出る廃棄物、ゴミなど、食料以外から取れるもの)は、米国ではいまのところ期待されたほど増加してはいな い。

ピークオイルの予測に対して批判的な人々もおり、地球上にはもっと多くの石油が残っているというより楽観的な見方や、技術の改善によって既存の油田からより多くの石油を採れるようになったり新しい油田を発見できる余地があるなどの見方をしている。

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