2011年4月14日木曜日

世界で最も安全な国債は?

 【ロンドン】安全な場所など、あるのだろうか。

 ウォール街の金融界は、西側先進国が発行した国債が最も安全な投資先だと言うだろう。

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 しかし、最近の出来事は、その考え方を否定するものだ。国際的な救済パッケージがないとしたら、ギリシャやアイルランド、ポルトガルの国債は間違いなくデフォルト(債務不履行)になっていただろう。

 問題はそれで終わり、と思ってはいけない。スペインの財政は悪化している。イタリアの純債務は国内総生産(GDP)の100%だ。

 ドイツ、スイスは大丈夫だ。しかし、ドイツとスイスの銀行が保有する欧州の不良債権は、一体どのくらいなのか。ロンドンの金融関係者は、ドイツの銀行が、スペイン関連などの多額の損失を書類の下の小さな活字に隠し、新たな“リーマン・ブラザーズ”となるのではないかと懸念している。

 他の地域では、国家財政が混迷している。日本の債務はチャートを突き抜け、経済規模の2倍を超えている。

 米国の公的債務総額はGDPのちょうど100%で、急速に拡大しつつある。米国は、自分の問題さえ対処できない。8日のどたばたはその予兆だった。あと1時間で、不名誉な政府機関の閉鎖に追い込まれるところだったのだ。このような危機は、おそらく、これが最後ではないだろう。

 それでも、ウォール街は、米国債は「リスクフリー」だと主張し続ける。

 このような状態で、誰を信用できるのか。メルトダウンを懸念するなら、どの国の財政が安全で健全なのか(もしあればの話だが)。

 そんな国は多くはない。

 国際通貨基金(IMF)によると、安全安泰なのは一握りの国だ。

 たとえば、オーストラリアとニュージーランド。デンマーク、フィンランド、スウェーデン、ノルウェーといったスカンジナビア諸国。

 大半の先進国が巨額の債務をため込む一方、こうした国は、債務を経済に比して低い水準に抑えてきた、とIMFは指摘する。彼らの公的年金制度には十分な資金がある。純債務がゼロという国も2、3ある。

 最強の国家財政を誇る国はどこか。ノルウェーだ。

 IMFの試算によると、ノルウェーの公的貯蓄は、公的債務をGDPの160%も上回っている。

 驚くことに、IMFの表のノルウェーの「純債務」には大きなマイナスの数字が並んでいる。

 どの国も、これには及ばない。

 この奇跡はなぜ起きたのか。ノルウェーは豊富な北海油田を持つ。普通の国と違い、ノルウェーは、この原油収入を減税や住宅バブルで浪費せず、万が一の備えにすることを決めたのだ。

 彼らは、石油収入を、政府の年金基金「Government Pension Fund Global(政府年金基金グローバル)」の財源とした。同基金では、財務省が国外の様々な投資対象、株式や債券に投資する。

 この基金の運用総額は現在、5120億ドル(約43兆円)。政府系ファンドとしては、世界第2位だ。

 ノルウェーは豊富な石油があるから幸運、という見方もある。

 しかし、貴重な天然資源を持つ国は多い。ほとんどの国がそれを浪費するだけだ。米国は、原油、石炭、天然ガス、その他多くの資源に不足していない。それなのに、われわれの国家債務は膨らんでいる。

 英国は、北海油田に恵まれているが、大きな債務も抱えている。その資金の大半は、1980年代の減税と、数百万人の失業保険に使われた。

 多くの国は、年金基金を自国の国債で運用する。ノルウェーの基金は、海外に投資される。

 法律によって、ノルウェーが利用を許されるのは、インフレとコストを差し引いた実質ベースの毎年の投資収益だ。昨年、政府予算の13%がこうした収益によってまかなわれた。

 ノルウェーの基金は、ほとんど財務省直轄で運営されている。しかし、この基金は、株と債券による本格的な分散投資が始まった1998年以降、年率で3.1%の投資収益(インフレとコストを引いた実質ベース)をあげている。

 総収益にして49%。悪くない。

 1998年は、株式市場バブルのピークに近く、株式投資をスタートする年としては不向きだったことを考慮せねばなるまい。また、こうした収益はクローネ建てだ。クローネは、当時ブームに沸いていたため、自国通貨に換算した投資収益を圧迫する。

 当時は大体、投資資産の構成は債券が60%、株式が40%だった。現在はちょうどそれが逆転している。欧州への投資にウエートが置かれている。

 つまりこうだ。金融情報サービスのFactSetによると、この間、バンガードのトータル(US)ストック・マーケット・ファンドに投資したノルウェーの投資家は、クローネ建てで23%のリターンしかあげられなかったことになる。バンガードのインターナショナル・ストック・インデックス・ファンドであれば46%、トータル(US)ボンド・マーケット・インデックス・ファンドであれば57%のリターンが期待できた。

 コストはわずか年0.1%だ。

 ここで一番の問題は、現在、ノルウェー国債の利率が米国債を上回っていることだ。(当然ながら、米投資家は為替リスクを考慮する必要がある。クローネが対ドルで下落すれば、実入りは少なく、上昇すれば多くなる)

 10年物のノルウェー国債(ブローカーを通じて購入可能)の利回りは3.9%。10年物米国債の利回りは3.5%。さあ、あなたならどちらを選ぶ?

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