2009年11月28日土曜日

タトゥーのように皮下移植可能:絹利用の電子回路

本当のタトゥーの写真:Spacemanbobby/Flickr

レイ・ブラッドベリのSFファンタジー短編集『刺青の男』(The Illustrated Man)には、全身が刺青で覆われている男が出てくる。[夜になり、男が眠ったときに]刺青を見ると、刺青が動き出して、奇妙な数々の物語を語り始めるのだ。

ペンシルベニア大学が中心になって開発し、マウスに移植している新しいLEDタトゥーは、この刺青の男を現実のものとする可能性がある(ぞっとするような物語は抜きにして)。

同大学のBrian Litt氏らは、シリコンと絹でできており、入れ墨(タトゥー)のように皮下に移植可能な電子回路を開発した。これらは、LEDを利用して皮膚を「スクリーン」へと変えることもできる。

このチップを所定の場所に固定する絹シートは、生理的食塩水に接すると必要な皮膚の形に変形させることができる。絹の基材は、最終的に分解されて体内へ吸収され、電子機器だけが残る。シリコンチップ自体の大きさは、長さが米粒程度の約1ミリ、厚みはわずか250ナノメートルだ。

ペットに注入される小さなRFIDタグなど、生物の体内で各種チップがすでに使用されているが、ペンシルベニア大学の「タトゥー」回路は、身体とともに柔軟に動き、硬い回路基板であれば移植できないような場所にも移植することができる。

[MIT Technology Reviewの記事によると、生体と回路を絶縁する必要がなく、ほとんど完全に組織内にとけ込み、脳などにも移植できるという。同記事では、1センチ四方の絹に6つの回路がある「絹フィルム」の画像も見ることができる。Applied Physics Lettersに掲載された論文はこちら]

この電子機器は、あらゆる種類の電子機器につなげたり、体内にも接続することが可能だ。さまざまな医療用途が検討されており、皮膚上にデータを表示する血糖値センサーのほか、身体の神経システムと接続される神経機器などが考えられている。例えば、チップを特定の神経とつなげて義手をコントロールするといったものだ。

最初のディスプレイは粗い作りになることは間違いないが、おそらくこうした機器を受け入れる患者たちにとっては非常に有益なものとなるだろう。

ディスプレイとしての機能は、フルカラーで高解像度の画像は実現できないだろうとはいえ、商業やアートで利用される可能性もある。オランダの家電大手Royal Philips Electronics社のDesign Probe部門では、こういった可能性のかなりセクシャルな利用法を追求している。その動画[以下に埋め込み。職場での閲覧は不適切]はやや気味悪いが、自分のパートナーの背中でアダルト動画を再生するという用途が、一部の人々の心を捉えるのは間違いないだろう。



われわれとしてはもちろん、この技術のよりギーク的な面について考えている。手の甲にマップ情報を表示するGPSは、確実に便利だろう。眼球の表面に搭載し、日光がまぶしすぎるときは視界を暗くするチップなどもいいだろう。

また、全身を利用したディスプレイは、最終的には広告に使用されるだろう。例えば、この技術と生物発光インクを組み合わせれば、自分自身がタイムズ・スクエアの小さな歩くバージョンへと変わることが可能だ。少なくとも本物のタトゥーとは異なり、電源を切って表示を消すことができる。

実際、この技術の可能性のある用途について想像し始めたら、ほとんど終わりがないように思える――刺青の男の身体で語られる物語のように。

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