2008年9月22日月曜日

「太陽熱発電の人工島」、5億円のプロトタイプを中東で建設

安価でクリーンなエネルギーを生産することは実に大きな難問だ。

ならば、大きな解決策としてこんなのはどうだろう。スイスの研究者、Thomas Hinderling氏は、直径数キロメートルに及び、全体がソーラー発電システムとして機能する人工島を建設したいと考えている。Hinderling氏によれば、こうした人工島では何百メガワットもの電力を比較的安価に発電できるという。

Hinderling氏は、研究開発を手がけるスイスの株式非公開企業、Centre Suisse d'Electronique et de Microtechnique社(CSEM)の最高経営責任者(CEO)だ。Hinderling氏はすでに、アラブ首長国連邦のラスルハイマ首長国から、同国でのプロトタイプ施設の建設を500万ドルで受注している。

島型ソーラー発電施設に関するウェブサイトには限られた情報しか公開されていないが、Hinderling氏はエネルギー関連の有名ブログ『The Oil Drum』で、自身の計画を説明している。

Hinderling氏の見積もりでは、直径わずか1.6キロほどの島型ソーラー発電システムでも、190メガワットの電力を、1キロワット時当たり15セント――米国の現在の電気料金の約2倍――という、収支が釣り合う価格で生産できるはずだという。


人工島は、プラスチック膜に集光ミラーを敷き詰めたものを水上に浮かべた構造となる。ミラーを利用して液体を温めて蒸気に変え、蒸気の力でタービンを動かして発電する仕組みだ。

陸上では、この種の発電方法はかなりよく知られている。いわゆる太陽熱発電所は、化石燃料発電所に代わる未来の主要なエネルギー生成技術として注目を集めている(日本語版記事)。米Google社は3つの代替エネルギー事業への投資を発表(日本語版記事)したが、3つのうち2つまでが太陽熱発電の企業に対するものだ。

だが、なぜ海上で太陽熱発電を行なうのか? Hinderling氏によると、複雑な追跡システムを使わなくても、太陽の動きに合わせてプラットフォーム全体を動かし、発電効率を最大化できるからだという。

CSEM社の計画では、2010年末に直径約500メートルのプラットフォームを海に浮かべる予定だ。

ローレンス・バークレー国立研究所でリニューアブル・エネルギー(持続的利用可能エネルギー)を研究しているMark Bollinger氏は、こうした島型施設の建設は可能だとは思うが、CSEM社が企業として生き残れるかは疑問だと述べている。

「建設は十分可能だと思うが、技術の発達度や陸上にも同様の施設がまだ少ないことを考えると、海上用の施設はいささか先走りすぎのように思える」とBollinger氏は言う。

また、技術そのものの実行可能性という観点から、Bollinger氏は、太陽熱発電を海上で行なうことの必要性に疑問を呈した。海上では、波などの陸上にはない可変要素によって、太陽光を正確に追跡できなくなる恐れがあるというのだ。

「使える陸地が非常に少ないというのなら海へ向かう理由もわかるが、少なくとも太陽熱発電に関しては、場所がないなどということはないと思う。太陽熱発電に最も向いているのは米国南西部の砂漠地帯で、そこになら使える土地がいくらでもある」とBollinger氏。

もう1つ、Hinderling氏が触れていない大きな疑問点がある。それは、島型施設で発電した電力を、いかにして陸地の人間のもとへ送るかという問題だ。幸い、海上の風力発電施設向けに、沖合からの送電方法(PDFファイル)の研究がすでに進められている。

そのほか、送電網に「大きな負荷をかけられない」米国北東部の諸地域に向けて、すでに発電船が電力を生産している、とBollinger氏は指摘した。

これらのことをすべて考慮すると、島型施設は、『海上住宅研究所』が建設を目指す海上都市国家(日本語版記事)にぴったりの電力供給方法だと思わずにはいられない。

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