2008年8月16日土曜日

OPEC:半年で1年分の収益を確保

 2008年上半期に原油輸出がOPEC(石油輸出国機構)加盟国にもたらした利益は、2007年通期の利益に匹敵することが明らかとなった。記録的な収益の要因として、原油価格の高騰及び過去最高の増産が挙げられる。フィナンシャル・タイムズ紙が報じたところによると、2008年全体としてのOPEC加盟国の収益は、およそ1兆2450億ドルに上る見込みである。
 
 先週末、原油価格は、14週ぶりに115/バレルまで下落した。この数ヶ月間、原油価格高騰の一因となっていたのは、イスラム諸国の核計画をめぐるイランと先進国との軋轢であった。しかし、新たに、ロシアとグルジアの軍事衝突という問題も浮上してきた。この軍事衝突によって、バクー・トビリシ・ジェイハンを結ぶBTCパイプラインを始めとするカスピ沿岸諸国における原油供給に支障が出ている。こうしたことを背景に、原油先物の10月渡し価格は、北海ブレント原油がおよそ115.4ドル/バレル、WTIがおよそ116.2ドル/バレルと若干の上昇を示した。多くのアナリストは、ドルが持ち直してきたことによって、原油価格の上昇幅は、限られたものになるだろうと予測している。現に、ロシアは通貨バスケット制を採用しているが、現在、6ヶ月間ぶりのドル高傾向となっている。しかし、現在の原油価格は、依然2008年上半期の平均価格(111ドル/バレル)を上回っている。
 
 また、原油の大幅な増産も、OPEC加盟国の利益に寄与した。7月におけるOPEC加盟国全体の原油採掘量は、過去最高の日量3260万バレルとなった。HSBC銀行は、2006-2010年に石油輸出国が得る収益は、2006年以前の20年間に得た収益を上回るとの試算を公表している。また、2008年に石油輸出国が得る収益は、1980年代全体の収益に匹敵すると見込まれている。
 
 しかし、イギリス王室国際問題研究所(Chatham House)の専門家は、石油危機の到来を予測している。現在、石油に対する需要は急激に増加している。しかし、新たな産地の開発に向けた投資額は不足している。石油危機に関する論文を執筆したP.Steven博士は、「国際的石油企業の株主は、利益を得ることばかりに執着していて、新たな産地開発のための投資には関心がない。」と指摘する。また、同氏は、自国に存在する資源を自国で管理・開発しようという資源ナショナリズムの動きが再び台頭してきたことに言及し、こうした流れによって、将来性のある産地開発に外国企業が参入することが難しくなり、世界市場に影響を及ぼす可能性もあると注意を喚起している。

 イギリス王室国際問題研究所は、今後、供給不足を背景に、原油価格は200ドル/バレルまでは容易に上昇するとの見解を示している。このような数字を予測している専門家は多い。アメリカの投資銀行ゴールドマン・サックスのアナリストも、長期的には、原油の供給不足によって、原油価格は、200ドル/バレルまで上昇するだろうとの予測を発表している。
 
 また、サウジ・アラビアの原油採掘量に関して、イギリス王室国際問題研究所は、2009年に日量125万バレルに達した後は、平行線を辿るだろうと考えている。サウジ・アラビアを除くOPEC加盟国にも、大幅な増産を図る方針はない。
 
 ロシアの原油採掘事情はどうかというと、現在、すでに、問題が発生している。ロシア統計局のデータによると、2008年上半期、原油採掘量は、前年同期比0.6%減となった。また、高い輸出関税が課されていることが影響し、ロシアの原油輸出量は6.2%減少した。
 
 原油価格がどこまで上がるかということに関して、俄かには信じられないような高値を予測する声も上がっている。2008年6月、ヨーロッパを歴訪中であったガスプロムのCEOミレル氏は、近い将来、原油価格は250ドル/バレルに達するだろうとの見解を示した。原油価格の高騰は、ロシア企業にとっては、財務基盤を強固にし、より効果的な成長政策を取る上で大きく寄与するだろう。しかし、その一方では、インフレを加速させ、世界経済の減速を招く要因ともなり得る。

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